幼馴染イベント
まだ、始まりの街にもいっていません
「A、こんなとこで、何しているの!?」
≪幼馴染が現れた≫
「え?何って・・・、これから始まりの街へ・・・」
「これから?!だって、もう昼だよ?旅たちの朝だよね?てか、まだ旅立ってなかったっけ?
なんか、魔法使い(予定)、剣士(予定)、勇者(予定)の幼馴染イベント終わっちゃったから、気分的にもう店じまいなんだけど。あんた、別にいらいないよね?」
ハシバミ色の巻き毛に、鼻の上にちょこんとちりばめられたそばかす。
将来確実に有望。村では、1番人気の女の子が、旅たちの朝、幼馴染として激励してくれる、甘酸っぱいメモリーを与え勇気づけてくれる、それが幼馴染イベントである。
けれど、幼馴染に甘酸っぱさはまるでなく、ただただ、やる気のない感じだけが伝わってきた。Aはなんだか、心が酸っぱくなったと思った。
甘味はない。ただ、ただ酸味だけを感じる。
≪これでは、だめだ。ここで、幼馴染イベントはこなしておかなければ、今後のラブイベントのフラグが全部折れてしまう気がする。≫
A(村人予定)は心を奮い立たせると、無理やりイベントを開始した。
「な、なんばーわんになれなくてもさ・・・おんりーわんになって帰ってくるから」
A(村人予定)の攻撃。幼馴染は冷めた目でかわす。
「only oneていうか・・・あんた、村人予定でしょ?onlyですらないでしょ?everyもといall oneでしょ?」
幼馴染の攻撃にA(村人予定)の心が砕けた。
ひざを折り、打ちひしがれるA(村人予定)。
その見事な場での打ちひしがれぶりに、幼馴染は少しだけ感動を覚えた。
幼馴染はA(村人予定)の肩をたたく。顔を上げるAに、男前に幼馴染は笑うといった。
「でもさ、みんなにはallでも、あたしにはあんたがきちんと見えてるから。それで、いいだろ?」
きらり、と幼馴染の白い歯が光る。男前な笑顔がまぶしい。
A(村人予定)の胸がきゅんとした。
きゅんきゅんとした。
「・・・いってきます。」
A(村人予定)の言葉に、幼馴染はうなずくと、親指で自分の胸をさし・・・
「帰ってこいよ、ここに。」
A(村人予定)は駆け出した。脱兎も脱帽する速さで駆け出した。
何か、危険で間違った香りがした。
別な方向に物事が進みだしそうな気がした。
今走らないで、いつ走ると思った・・・
A(村人予定)は危機察知能力+1を手に入れた。
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