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旅たちの朝

pi pi pi pi pi....


「バシッ」


pi,pi,pi,pi,pppppp


「バシンッ」


ダン、ダン、ダン

ガチャッ

バコッ


「くぉら~!いつまで、寝てんの!

今日は旅たちの朝だろ!!」


A(村人予定)は、”かぁちゃん”にたたき起こされた。

HPがみぃ~んと音を立てて減り、一気にレッドゾーンに持ってかれる。


《休養が必要のようだ》


布団をかぶりなおして、三度寝を決め込もうとするA(村人予定)に、ラスボスであると同時に牧師でもあるオールマイティな”かぁちゃん”は容赦なく復活の呪文を唱えると、布団から引きずり出した。


「朝ごはん食べてる暇はないからね。」

「そんなぁ~。朝飯抜くなって、かぁちゃんの口癖じゃないか。」


顔を洗う暇も与えず、玄関口で旅たちイベントを開始するかぁちゃんに、村人A(予定)は文句を言ってみる。


「・・・てか、もう昼だから。」

かぁちゃんはあきれた顔でA(村人予定)をみると、ぎゅうぎゅうにモノが詰められて不格好に膨れた麻の袋を手渡した。

袋からほのかに香るのは、焼きたてのパンの香り。

A(村人予定)の”ただのパン”だ。かぁちゃんのツンデレな優しさに、A(村人予定)の鼻の奥がきゅんと熱くなる。


《最強のツンデレは、ツインテールのぺちゃぱいではなく、立派な体躯の鬼かぁちゃんだ》


A(村人予定)の賢さが+1あがった。


「っずっ。じゃ、いってくる。」

未知の世界に不安げに歩き出す村人Aの背中を、”かぁちゃん”の声が応援歌になってぐぃぐぃと押す。


「立派な村人になるんだよ!

うざがられても、勇者さまに話しかけるんだよ。

割れた心をつないではじめて、心に模様ができるんだよ。」


《かぁちゃん・・・なんか、すごくセリフがかっこいいっす》


「毎晩、歯をみがくんだよ!

三日に一回はお風呂に入ること!

にんじんは飾りじゃなくて、食べ物だから!」


プライベートを暴露し始めるかぁちゃんの声に勇気づけられて、A(村人予定)は耳をふさいで駆け出した。空がきらきらと青い。草がふわふわと緑だ。猫がひだまりでとぐろをまき、犬がいつものようにAに吠え掛かる。

いつもと変わらない朝(ほぼ昼)だ。

けれど、Aの旅たちの朝(ほぼ昼)だ。

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