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私の一番嫌いな季節  作者: 鈴木
4/5

私・白石さん同盟宣言

 第一次千葉さん対面合戦が無残な結果に終わってしまった私は、新たな行動に移ることにした。

白石さんに恋愛相談をするというものである。


 白石さんと懇ろな関係になり、私はもう白石さんの友人という地位を不動の物にしていることは傍から見ても明らかであろう。その白石さんに恋愛相談をすることによって、最大のバックアップを身につける。これこそが今回の目的である。



 そう決意した次の日、私は早速行動に出た。速きこと風の如くとはまさにこのことである。

普段は何かと冷静に分析する私であるが、一度決めたことは早期に取り掛かるのである。


 この日も、講義の課題について色々教えてもらうという大義名分の下、大学の食堂でランチを食べた。他愛もない世間話から始まり、名目である講義の課題について聞き、そして、今回の本題に移ることにした。


 しかし、いきなり「ねぇねぇ、俺千葉さんのこと好きなんだ」とは言わない。事を焦るのは馬鹿か阿保を見る結果になる。万が一、そんなことを言って自分がもやしの様にチャラチャラしている軽い男に思われてしまったら白石さんとの関係どころか、巡り巡って千葉さんとの明るい未来すら途絶えてしまうであろう。


 そう冷静な判断を下した私は、さりげなく、「先日突如として現れた千葉さんについて」という話題を振った。いわば撒き餌である。話の本題を、千葉嬢に移ったことを確認した私は、「千葉という人物がどのような人なのか」という質問を投げかけた。話題を移らせず、千葉嬢についての情報を得つつ、そして、白石さんに私が千葉嬢に興味・関心が向いているということをそこはかとなく匂わせる。


 このような戦略的な質問を投げかける我が頭脳の明晰ぶりには、我ながら脱帽である。あっぱれ!という称賛を自分に送りつつ、白石さんとの会話を進めていく。


 そして、いい頃合いを見計らい私は勝負に出た。つまり、白石さんへ恋愛相談を持ちかけた。

 

 自分は千葉嬢を見た瞬間に動悸が止まらなかった。あの日の夜は寝ようとすると千葉嬢が頭から離れなかった。やっと寝たと思ったら、今度は夢にまで出てくる始末である。それからというもの、四六時中千葉嬢のことについて考えている。これはなんなのであろうか。私は病気なのであろうか。白石さん教えてくれ。


 事実と多少の脚色を織り交ぜ、子犬のような目をして私は白石さんに語りかけた。恋をしたと明言しないところがミソである。自分では恋ということに気づいていない少女漫画の主人公のような純情さをアピールするためである。


白石さんは予想通り「それって恋だよ」と言った。


「おぉ、これが恋なのか!」


 私は、まるで舞台役者のようなオーバーリアクションをとり、では、どうしたらこの症状が治まるのか聞いた。


 白石さんは大笑いした後、

「じゃあ、今度三人でまたご飯食べようよ。その様子じゃいきなり二人は厳しそうだしね。」

と言った。



 この子はキリスト、はたまたブッダの生まれ変わりか。再燃する白石さん鞍替え論が私の中の私が唱え始めたが、無理矢理黙らせた。


 私はお馴染の引きつった笑顔で感謝の言葉を白石さんに捧げた。

「協力してあげるんだから、今度ランチを奢ってね。」

 しっかりと報酬をつける抜け目のない白石さんに脱帽しつつ、私たちはそれぞれ帰途についた。



 とにもかくにも、私は今回白石さんという強大な味方を手に入れたのである。最も千葉嬢に近しい人物が味方という頼もしさはこの上ない。


 しかし、慢心は危うい。驕れる者は久しからず。今まで、何百、何千、何万と言う人々がこの驕りによってその生命を絶たれたであろうか。

 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶのである。



 


  そう、私は賢者なのだ。

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