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魔王の青年と側近の恋物語

作者: juggler

「魔王に取り次ぎ願う!」





魔族の中心地、魔都の正門で、四人の人族が武器を構えている。



「うおおぉぉぉ!!!」「キィンッ……ガッ、ザシュッ」





彼らの足元には、歯向かって来た魔族が全員、転がって屍と化している

先頭に居る、聖属性の武具で全身を固めた青年。その後ろに居る魔導師が、もう一度声を張り上げた。



「魔王に取り次ぎ願おう!叶えて貰えないのであれば、この勇者一行、強行突破させてもらう!!」






魔導師がそう言い放つと、横に居た修道服を着た女…聖女が、聖属性の魔法に乗せて矢を放した。

狙われた魔族は、矢を肩に受けて苦しみ悶える。



「早く道を開けてね!次はもっと強力なものを撃たせてもらう!」







そう言う聖女がすぐに2発目を用意しようとすると、四人組……勇者、聖女、魔導師、聖騎士達の前に魔法陣が現れ、次の瞬間、魔族の証である黒髪を持つ少女・・・16歳位だろうか・・・が出現した。


「転移魔法…これだけ高度な魔法を使うとは、やはり魔族は化け物だ。」



魔導師の男がそう呟いたが、その後すぐに、目の前の少女が口を開いた。


「君達が魔王を倒す為に来たという人間か。悪いが、魔王の所に行く前に引き取って欲しいんだ。」




「何を言うのである!きさま!「まあまあ。それで…まずお前は誰だ。」


魔導師が、1オクターブ低い声で少女に問いかける。




「私はミカ。魔王の…側近だ。ねえ、ここまで来た君達は、人は、何故魔王を倒す?倒す必要があるのか!?」


「・・・魔族は、人を殺した。人を攫って、こっちに戻って来たものは居ない。」




今まで一度も口を開かなかった、勇者の青年が答える。その途端に街に居た魔族達は警戒し、側近である…つまりそれ相応の実力を持つ"1人"を守るように立った。


「ミカ様!人族なのに…こいつらは危険です、せめて魔剣を持って来るまでは…グァッ」「邪魔するのなら排除するまで!」




聖騎士が、もう一度聖魔法の細剣(レイピア)を構え、魔族の少年に斬りかかる。白く細い剣が喉笛に一直線で向かって行く。





(魔族は、自分達から攻撃することは無い。それは人族に非があったんだろうなあ…どう説明するか。めんどくさい。)



場違いな事を考えながら、強力な防御結界を少年まえに築き上げる側近。

魔導師と聖騎士は、魔族特有の、聖属性が弱点である魔力からよくここまで強い結界が張れるものだと驚いたが、側近からそれ以上の魔力が感じられない為、側近といえどせいぜいその程度か、と考えていた。


魔族を人族の常識に当てはめてはいけない、という言葉を忘れて。






「みんな、ありがたいんだけど、いま話してるんだよ。それに私は、魔王の親友であり、側近でもある。それでも心配?」




側近は、他の魔族達がしぶっているところを1人、過保護だと言って笑っている。







「それでさ、勇者さん達。君らは人間側の話しか聞いてないだろうけど、そいつらが偏って話している可能性は?「ありえません!それに私たち教会は昔から、横暴な魔族に苦しめられてきたのです!魔族は悪の化身だという伝えもあるのですよ!人の敵である魔族は、悪魔と同じである。という!」・・・」




聖女がそう捲し立てた瞬間、勇者以外の2人が大きく振りかぶり、側近は明らかに顔をしかめた。



側近のそれを事実だという肯定とみなしたのか、聖女は勝ち誇った笑みを浮かべた。


もちろん勇者達が気づかない様な、一瞬の出来事であったが。







「………その教会とやらは、どのくらいの時代からあるんだ。」



「一昨年で300年目の記念祭が執り行われましたので、ちょうど300年程前からですが。」






ミカは心の中で笑いをこらえる。


(魔族が悪だって?ありえない。あいつがそんな事を許すと思ってるのか)





「それはそれは、古い歴史があるんだね。ただ、その教えは間違えじゃないのかなぁ?」




そんなやつだったら、今頃私は……………_________






=======================


=======================








大通りの奥から、1人の魔族の青年が走ってくる。









「おい、ミカ!?早く避けろ!今すぐに!」




「はは………大丈夫だって………矢を防ぐには、少しでも盾があった方がいいでしょう?」







そう言って笑うミカに、青年は必死で手を伸ばす。





「辞めろ!もうすぐ他の側近全員も来る!その魔力量で結界(バリア)張って、さらに聖具の魔法矢を受けたら…死ぬぞ、今すぐどけ!絶対……俺が!絶対助けるから!」



「・・・どうせそこ(・・)からじゃあ打つ手無しだろうが。」






弓を構えた聖女と、その周りに浮かぶ8本の矢に聖魔法を乗せている魔導師は、顔を見合わせ首をすくめる。



「側近殿、恋人かどなたかですか?……この魔法は、今の貴方程度の側近なら軽く相殺出来る威力です。魔王の七大側近ともいえど、全員深手を負うでしょうね。」

「側近の一人がこれなら、恐らく魔王に傷を付けることも可能でしょう。貴方のことを追って来た、あの魔族の青年とも、きっと一緒に逝けますよ・・・」









ミカの言葉に引っかかったのは、4人の中で勇者1人だけだった。



(そこ(・・)から………?他の側近はまだ姿も見えていない。青年だってまだ距離は1km弱離れてる。絶対助ける(・・・・・)?………ありえない。魔王でさえ、広範囲でない魔法の射程距離は700m。……魔王でさえ…………)





「恋人か…………長年の片想いなのでね。生憎親友としか思われて居ないんですよ。」


「あらら………それはそれは。想いを伝える気があったにしろ無かったにしろ、残念でしたね。魔族は聖界へ行く事は出来ないのでしょうが、死後出逢えることを祈りましょう」







そう言って聖女が弓を絞ると、ミカは周りを守るように結界を張っていく。




「………辞めろ!ミカ、避けろ!…………辞めろぉぉ!!」





放たれた矢が、ミカの胸を貫通する。











フラリ…………ドサッ



道の真ん中に、力なく倒れた。








「4方位、遠距離、短距離………エスター・スタート」



空へ上がった矢を、8つの矢をそれぞれ魔族の集まっている一角に撃ち込む。


いや、撃ち込もうとした(・・・・・・・・)










「なっ………魔法矢が抹消された…だと?」



魔導師、聖女、聖騎士の3人が、魔族への大きな対抗手段の1つであった聖具の威力を一瞬で無にされ、呆気に取られている間。動いた2人は何を思って居たのだろうか。





青年は小さく、「強制転移(コンパーション・テレポート)」と呟き、ミカの側へ転移して駆け寄る。


勇者は聖剣を抜き、辺りを警戒しながら、低い声で「……誰だ」と、大きな魔力を探る。








「ミカ…ミカ?おい、何寝ている。敵の目の前で寝るなんて………況してや俺以外の前で寝るなんて言語道断、そう言ってるだろ……?」



必死で魔力を送り込む青年を見ながら、勇者は考えを巡らせる。


やがて1つの結論にたどり着いた彼は、青年に剣を向けた。もともと白い顔を、さらに蒼白にさせ問おうとする。




しかし、それを口にする前に、気を取り直した聖騎士と聖女が、殊勝に青年に問いかけた。






「なるほど。この辺りの魔族全員が協力すれば、全力でない攻撃くらいは防げたのね。」



「じゃあ尚更、魔王の居る城へ行くべきだな!そこで全力で聖具を使えば、一気に殲滅できるだろ。魔王と一対一かあ…いいなあ。」



「ねえ、そこのお兄さん?恋人を殺した所で悪いのだけど、その|仇(私達)を魔王の前に案内してもらえないかしら?一番被害を少なくするのには、素直に案内するのが一番いいのだけど?」













青年は、勇者達に目もくれず必死にミカに呼びかけていた。


しかし、ミカの口が動いたかと思うと、その言動をぴたりと止める。





「…………_________。」







青年は小さく呟き、ミカをそっと抱きしめた。



そして、そのままの体制で言った。





「必要ない。」













恐ろしく冷たく、美しい声。



それを聞いた魔導師は、青年を警戒しながらも広範囲魔法を発動させようとしていた。


それを聞いた聖女は、残念そうに再び天に向かって弓を絞った。


それを聞いた聖騎士は、仕方ない。と考え、剣を地面に突き刺し魔力を込めた。


それを聞いた勇者は、青年に、聖剣の斬撃を浴びせようと剣を振おうとした。










その刹那、4人。いや、周辺全域の生物全ては、動けなくなった。



:魔王の怒りに触れた:・・・一瞬でそれを理解するのは、いともたやすかったであろう。


目の前の青年から、目視できそうな程の濃い魔力と怒りが放出されている。







青年は、ミカを抱いたままスッと立ち上がり、「ついてこい」と1人城に向かって歩き始めた。


「私の名はアシェット・コルガー。第245代目魔王と言えばよいか?・・・・勇者達よ、私に挑戦しに来たのであろう。」






声だけ聞くと、実に抑揚の無い声である。












そんな声でも、人とは恐怖に震える。そういう生き物だ。







アシェットはふと立ち止まり、未だ地面にへたっている勇者一行の方を向く。


その方向にいる魔族が、魔力に当てられないよう少し抑える事は忘れない。







「安心しろ。魔王には基本、決闘を申し込まれても殺すな。という教えがある。」



目を細めてふわり、と笑う魔王。



「ただし、こちらから正規の理由で決闘を申し込む場合は、別だがな。」











勇者には、その笑みが神々しいとさえ思えた。






勇者一行の下に魔法陣が浮かび上がり、一瞬にして周りの景色が変わる。



城の戦闘広間。下の魔法陣が消えると、10人程の魔族が一礼し、出て行く。






まだミカを抱き締めている魔王は、最後の1人が出て扉が閉まった瞬間、再び街での笑みを浮かべた。


美しく整った顔に、極上の笑みを浮かべて。






































________「俺の一番大切で、愛していたミカに。お前達の寿命と命を持って、詫びろ」________










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ちょっと書いてみたかったんです。


長編バージョンも、需要があれば書きますよ!


感想欲しい……かも………。意味分からないとかありまくりですが、暖かく見て頂けるとありがたいです。



読んでいただき、ありがとうございました。

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