勧誘
ギルドを出た僕と二人組は、街の外の野原に移動した。
そして、僕と二人組は正面から向かい合った。
「それで、僕に話というのは何ですか?」
僕は、早速用件を聞くことにした。
「そうだな、ここは単刀直入に言おう。少年、メガアルラウネ共々私達の仲間になってほしい」
「はあっ!?」
この人、今何て言った。メガアルラウネ共々仲間になってほしい?やっぱり、この二人組はあの黒い外套の人物の仲間なのか?
「それはどういうことですか?」
「言ったとおりの意味だ。少年とメガアルラウネを私達の仲間に加えたいということだ。いや、メガアルラウネについては、帰ってきてほしいというのが正しいか?」
「帰ってきてほしい?メガアルラウネに?」
どういう意味なんだ?この二人組が黒い外套の人物の仲間なら、メガアルラウネに帰ってきて欲しいというのは、おかしくないか?
「どういう意味ですか?」
「言葉どおりの意味だ。おっと、済まない。最初に誤解を解いておくのを忘れていた」
「誤解ですか?」
僕は、首を捻りながらそう聞いた。
誤解って、僕が何を誤解しているっていうんだ、この人は?
「そうだ少年。君はおそらくだが、私達のことを君が森で戦った人物の仲間だと考えているのではないか?」
「!」
僕は、内心ドキリとした。
たしかに僕は、この二人組があの黒い外套の人物の仲間である可能性を疑っている。
だけど、この人はさっき誤解を解くと言った。それはつまり、この二人はあの黒い外套の人物の仲間ではないってことなのか?
いや、この人の言葉を簡単に信じる分けにはいかない。
「その反応、どうやら図星のようだな。だが、少年がそう考えるのは、しかたのないことだ。なぜなら、私はがそう考えるように仕向けたのだからな」
「仕向けた?」
「そうだ。ギルドで会った時、私は少年が必ず私達と接触を持とうと考えてもらう為に、わざとメガアルラウネの名前を口にしたのだから」
「つまり、僕はあなたの思惑どおりに行動したと?」
「そうだ」
もう少し考えて行動するべきだったかな?
「それで、僕の考えが誘導された結果の間違いだとして、だったら貴方達は、いったい何者なんですか?」
そう、黒い外套の人物の仲間ではないのなら、この二人はいったい何者なんだ?
「そういえばまだ自己紹介をしていなかったな。私は、イヤヌアリオス。アウ゛ギ エポヒ のメンバーの一人だ」
「同じく、アウ゛ギ エポヒのエユエよ。よろしくね坊や」
そう言って彼女、エユエは僕に微笑んだ。
「アウ゛ギ エポヒ?」
アウ゛ギ(暁)にエポヒ(時代)?ギリシャ語?
「そうだ少年。それが私達が所属している組織の名だ」
このアースターに、そんな言葉はなかったはずだけど?ひょっとして、名付けたのは転生者?リディウスの話だと、この世界には異世界転移は無理だと言っていたいじょう、可能性があるのは、僕と同じ転生者しか思いつかない。確認してみるか。
「アウ゛ギ エポヒ。聞いたことのない名前ですけど、名前の由来なんかはあるんですか?」
「名前の由来は、遠い国で暁の時代と言うそうだ」
「遠い国?」
やっぱり、ギリシャ語が由来なのか?
「ああ、国の名前は知らないが、仲間が組織結成時にその名前を言い出してな。私達も、意味が気に入ったのでこの名前が採用された」
「その人はどんな人何ですか?そんな、一般的じゃないことを知っているなんて」
「それは、少年が私達の組織に入ればわかることだな」
「イヤイヤ、そんなこと言わずに教えてくださいよ!というか、何で僕を組織に入れたいんですか?」
よく考えたら、組織の名前の由来よりも、そっちの方が重要だよ。
「それは、少年の戦闘を見させてもらった結果、私達の組織に必要だと判断したからだ」
「え?僕の戦闘?」
この人、いつ僕の戦闘を見たんだ?ここ最近戦ったのは、森の魔物達と野原の斬岩カマキリ、そして昨日の黒い外套の人物達との戦闘。どれを見たんだこの人?
「それって、いつの戦闘のことですか?」
「一昨日と昨日の森での戦闘だ」
「なんで、僕の戦闘を見たんですか?」
昨日はともかく、一昨日の戦闘の中にこの人の興味をひくようなことはなかったと思うんだけど?
「最初は、ただ何となく気になっただけだった。だが、昨日の戦闘を見て、少年を必ず組織に欲しいと思った。あれだけの火力の魔法を操り、死んだメガアルラウネを異なる姿で蘇生させたアイテム。この二点から、私はそう考えた。そうそう、まだ言っていないことがあった」
「何ですか?」
「メガアルラウネを。彼女を生き返らせてくれてありがとう」
「何であなたがそんなことを言うんですか?そういえば、さっきもメガアルラウネに帰ってきてもらいたいと言ってましたけど、どういうことですか?」
この二人とメガアルラウネにどんな関係があるんだ?
「簡単に言ってしまうと、メガアルラウネをあの森に蒔いたのは、私達だ」
「え!?」
この人、今何て言った?メガアルラウネを蒔いた?つまり、メガアルラウネを生み出したのは、この人の所属する組織ってことか?
「驚いているな少年」
「それは、驚きますよ。突然そんなことを言われたら」
驚かないとでも思っていたのか、この人?
「それもそうか。それでだ少年。メガアルラウネは、私達の組織に属する存在だ、ゆえに君が私達の組織に入らなかったとしても、彼女は引き渡してもらいたい」
「断ると言ったら?」
「その場合は、彼女が自分から帰って来るように采配しよう」
「僕から力づくで取り戻そうとはしないんですか?」
こういう場合は、力づくで来るものだと思ってたのに?
「それは出来ないのだ」
「何故ですか?」
力づくの方が簡単そうなのに?昨日の戦闘を見ていたと言っていたから、僕の魔法を恐れているのか?
そう思って、彼の様子を見た。
が、見た限りこの人は、僕に恐れを感じていないようだ。
なら、どんな理由があるんだ?
「それはね、私達の仲間であるメガアルラウネの母親からの頼みだからよ坊や」
今まで黙っていたエユエさんがそう言ってきた。
「メガアルラウネ、彼女の母親?」
メガアルラウネに、母親に該当する存在がいたのか!
「そうだ。メガアルラウネの母親は、名をアブリルという。その彼女に昨日のことを話たら、娘の好きにさせてほしいと言われてな。それゆえ、私達はメガアルラウネの意思を無視するつもりはない」
「そうですか。それで、今そのアブリルという人は何処に居るんですか?」
「彼女は、現在この国の王都に居る」
「王都にですか?」
「そうだ」
「それは・・・」
ちょうど良いタイミングなのか?
「どうかしたのか?」
「いえ、ちょうど王都に行く用事があって、この後この街を出ようと考えていたところだったので、奇遇だなぁと」
「ほう。それはこちらとしても都合が良いな。少年、私達とともに王都に行かないか?」
「それは」
どうしたらいいんだ、この場合?断るべきか?でも、メガアルラウネを母親と逢わせてやりたいと思うんだよな。それなら、この二人と一緒に行く方が確実なんだろうな。本当、どうするかな?
「何か問題でもあるのか少年?」
「問題というか、まだ貴方達のことがよくわからないんですよね」
「大丈夫よ坊や。イヤヌアリオスは、見た目は悪人顔だけど、中身は悪い人じゃないから」
エユエさんは、明るい顔でそう言った。
「いえ、見た目はともかく、僕が感じた印象としては、お二人をそんなに警戒する必要はないと思うんですけど。むしろ逆で、何故か初対面で強い親しみを感じましたし」
本当、なんであんな風に感じたんだろう?
こうして実際話をしてみても、内容は怪しくても、この二人に対して負の感情は抱かないんだよな?
「ほうっ、少年もか。実は私も少年を見た時から、理由はわからないが親しみを感じていた」
「あら、イヤヌアリオスもなの?実は私もなのよ。ギルドで初めて見た時から、坊やに親しみを覚えたわ」
二人も、僕に対して親しみを覚えた?
これは、偶然なのか?それとも、僕達が知らないだけで、何かしらの繋がりでもあるのかな?
だけど、それを考えるのは後にしよう。今は、話の続きをしないと。
「とりあえず、今はそのことは置いておいて、組織の加入とメガアルラウネの件については、保留でお願いします。弟やメガアルラウネとも話合わないといけませんから」
「そうか、それもそうだな。ならば少年、メガアルラウネの意思を確認しておいてほしい」
「わかりました。お二人は、何処に滞在していますか?」
「いや、昼過ぎにまたここに居るので、その時返事を聞かせてくれ」
「わかりました。それでは、昼過ぎにまた」
「ああ、また後でな少年」
「またね、坊や」
そうして僕達は別れた。
そして、ある程度離れた所で、僕はフィールド1に転移した。




