冒険者ギルド混雑
「さて、じゃあ一度冒険者ギルドに行って来るよ」
「俺も行こうか兄貴?」
「いや、大丈夫だよ。みんなはオールエルと一緒に、オールエルに作成してもらったダンジョンにチャレンジしていてくれ」
「わかった」
「わかりました」
「わかったわ」
「御心のままに」
四人共了解してくれたみたいだし、さっさと終わらせよう。
「<転移>」
僕は、フィールドから宿屋の自分達の部屋に転移した。
僕は、問題なく宿屋の自分達の部屋に出た。
「さっさとチェックアウトしないとな」
初日以外は泊まっていなかったけど、この部屋ともお別れだな。
二日目からは、ずっと自分の作成したフィールドで寝起きしてたからな。本当だったら、二日目の時点でチェックアウトするつもりだったのに、二日も経過してしまったな。面倒ごとに巻き込まれたとはいえ、出費は抑えないとな。もっとも、クエスト達成報酬で大量のゴルドが入手出来たから、結構所持金には余裕があるんだけどな♪
僕は、そんなことを思いつつ受付前に移動した。
だけど受付には誰もいなかった。ので、
「すみません!」
僕は受付の人を呼んだ。
そうすると、奥から初日に会ったおじさんが出て来た。
「どうかしたか?」
「支払いをお願いします」
「わかった。三日で60ゴルドだ」
「わかりました」
そう言って、僕はアイテムボックスからお金を取り出しておじさんに渡した。
おじさんは、枚数の確認を始めた。
ちなみに、この世界でのお金の単位はゴルドだけで、お金の価格基準は結構アバウトだ。街ごと、村ごとでも多少上下する。
もっとも、そんなのは向こうの世界での店ごとの商品価格と同じことだが。
「確認した、問題ない。またのご来店を待ってるよ」
おじさんは、僕に笑顔でそう言った。
「ありがとうございます」
僕は一礼して宿屋を後にした。
そして、歩きで冒険者ギルドに向かった。
転移を使うと目立つからな。
歩いて20分、冒険者ギルド前にたどり着いた。
だけど、ギルドがなんか慌ただしいな?
入口からギルド内を覗いてみると、ギルドの職員や冒険者の人達が慌ただしく動きまわっていた。
「何かあったのかな?」
僕は、そんなことを考えながら入るチャンスをうかがった。
そして、ある程度落ち着いたのを見計らって、ギルドの受付目指してダッシュした。
「すみません」
受付の方でもバタバタしていたけど、メリアさんを見つけたので声をかけた。
「あらアスト君いらっしゃい。ごめんなさいね、今取り込んでいるの。だから、ちょっと待っててね」
そう言って、メリアさんは受付の奥の方に慌ただしく走って行った。
それから待つことおよそ一時間弱、ようやくメリアさんが受付に戻って来た。
「お待たせアスト君、それで今日のご用は何かしら?」
「あ、はい。依頼の達成報告に来ました」
「あらそうなの、ええとアスト君達が受けた依頼はたしか?」
「一角ウサギ五匹の討伐です」
「そうだったわね。・・・え!?」
「「「え!?」」」
僕が依頼内容を言った瞬間、メリアさんは声を上げた。それだけじゃあない、ギルド内を慌ただしく移動していたギルド職員や冒険者達からも、メリアさんと同じ様に声が上がった。
「あの~どうかしましたか?」
僕は、驚いた様子で僕を見ているメリアさんに声をかけた。
「・・・あ、ああごめんなさいね。少し驚いてしまって」
「そうですか」
今の会話の中に、驚くポイントなんてあったかな?
「あの~アスト君?」
「はい、何ですか?」
「アスト君は、いえ、アスト君とアルト君は、一角ウサギを討伐したのよね?」
「はい、それがどうかしましたか?」
メリアさんは、何でそんなことを聞いてくるんだろう?
「何処で?」
「何処でって、街の近くにある森ですけど」
僕が森と言った瞬間、周囲の全員の視線が僕に集中した。
「森!森に入ったのね!いつ?」
「?依頼を受けた日と次の日ですけど、それがどうかしましたか?」
「アスト君、奥で話を聞かせてもらってもいいかしら?」
「いえ、来てから結構待っていたので、報酬もらって帰りたいんですけど」
メリアさんのこの態度、何か面倒なフラグが立った気がしたので、何とか奥に行くのは回避したいな。
「待たせちゃったのはたしかだけど、少しぐらいだめかしら?」
「面倒ごとそうなのでそっちょくに聞きますけど、何かあったんですか?ギルド内は慌ただしいし、僕が森と言ったら皆さん反応してましたけど?」
「あ~やっぱり気づいたわよね。その、実はね」
「何ですか」
「ここ最近冒険者の人達が複数行方不明になっているのよ」
「それがどうかしたんですか?冒険者なら、魔物に食べられることもあれば、数日くらい街にいないことくらいあるでしょう?」
「まあ、普通ならそうなんだけど、今回行方不明になっている冒険者の人達のメンバーが問題なのよ」
「どういうことですか?」
「行方不明になった人達はみんな、個人ランクB以上の上位者ばかりなのよ。それに、その人達は昨日ギルドで開かれた定例会議に参加するはずだったの。だけど、いつまで経っても現れないから調べたら、共通点があったの」
「共通点?」
「ええ。その人達は、この街に来る為に森を通るのと、依頼で森に行った人達なの」
「じゃあ森を捜せばいいのでわ?」
「そうね、当然ギルドから依頼して冒険者の人達に彼らを捜してもらうつもりだったわ」
「つもりだった?」
何で過去系?
「ええ、私達の依頼した冒険者達が森に入ろうとしたちょうどその時、森の大部分を無数の茨が覆ったそうよ。そして、一瞬にして森の緑と茨が消え去って跡には枯れた木々だけが残っていたそうよ」
「アハハ、そうですか」
それってやっぱり搾取ローズがクイーンローズに進化する時にやったアレだよな。つまり、搾取ローズのアレの発動がもう少し後だったら、さらに犠牲者が増えてたってことか。
「その反応。やっぱり何か知っているようねアスト君」
「さあ、何のことですか?」
「隠しても無駄よアスト君。私と君は昨日今日知り合ったとかじゃないんだから、隠し事をすればたいていの場合わかるのよ」
メリアさんはそう言って、僕の目を真っ直ぐ見た。
僕はメリアさんの真剣な眼差しから視線を逸らそうとした。
「逃がさないわよアスト君」
メリアさんは、僕の頭をがっちりと掴んで視線を逸らさせてはくれなかった。
しかたないな。知ってる事実を適当に混ぜ込んで話を作るとするかな。そのまま話ても信じてもらえないだろうし、予防線も張らないとな。
「わかりましたメリアさん。僕の知っている限りの情報をお話します」
「あら、アスト君本当ね」
「ただし、僕が提供出来る情報は断片的な物の上、容易には信じてもらえない類いの内容であることをご了承下さい」
「それでも構わないわ。判断を下すのは、ギルドの上だけど今は全く情報が無いと言っていい状況なの。だから、手懸かりになりそうな情報は、どんな些細なものでも欲しいのよ」
「わかりました。それでは、ご拝聴願います。僕とアルトの初めての冒険を」
そうして僕は、編集した物語をメリアさんに話始めた。




