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廻る世界と星界竜  作者: 中野 翼
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模擬戦

「さて、まず最初にこの模擬戦のルール説明をするよ」


「「「わかった」」」


「さてまずは、『メニュー』と言ってみてくるか」


「「「『メニュー』?おわっ!」」」


僕が『メニュー』と言うと、目の前にメニュー画面が表れた。三人の目の前にも、それぞれメニュー画面が表示されている。


「問題無くでたな。さて、そのメニュー画面のステータスの部分を意識してみてくれ」


僕の言う通り、三人は意識をメニュー画面のステータスに向けた。


すると、ステータスの箇所が点滅した後に、名前・レベル・HP・MPから順にいくつもの項目が並んでいる。


「兄貴、これでいいのか?」


「ああ、問題無い。さて、そのステータス画面の上から三つ目が今必要な箇所だな。さてルールだけど、そのステータス画面のHPの箇所が1になったらその人は強制的に、対戦フィールドの外にほうり出されるようになっている。つまり、アルト達の方は僕のHPを1に出来れば勝ち。逆に三人全員のHPが1になったら僕の勝ちというわけだ。何か質問は?」


「アスト様、いくつか聞いてもよろしいでしょうか?」


「何だ、ビット?」


「一つ目は、そんなにきっちりとなるんのですか?」


「ああ、威力がHPの残量を上回っても、1になった時点で余剰ダメージをカットするから問題無い。だからオーバーキル気味な攻撃も、一切気にせず全力で攻撃してくれ」


「わかりました。次に、HP残量1と言われていましたがそこまでたどり着く前に、ダメージが大き過ぎて動けなくなったり、身体部位が欠損した場合はいかがいたしますか?」


「うえ、そうだよな。兄貴、そこのところはどうなってるんだ?」


「それも安心しろ。対戦フィールドの中では、痛みは多少あるが部位欠損や行動不能にはなったりしないようにしてある」


「といいますと?」


「身体部位等にもHPを振ってあってな、手や足何かはHPが0になると、戦闘フィールド内では動かせなくなるけど、欠損はしないようにしてある。それと、目や耳なんかのHPが0になると、模擬戦中はその感覚器官から得られる情報をカットするようにしてある。だからそっち方面も気にしなくてもいいよ」


「わかりました。私からは、それくらいですね」


「二人の方もいいか?」


「おう!大丈夫だぜ兄貴」


「私の方もいいわよ」


「よし、では早速始めようか。オールエルは、戦闘フィールドからでた人の回復と審判を頼む」


「承りましたアスト様」


僕は、三人からある程度離れた場所に移動した。


「オールエル、開始宣言をしてくれ」


「はい、それでは始め!」


「いくぜ兄貴」


オールエルの開始の掛け声とともにアルトは、双剣を持って僕の方に突撃して来た。ビットは、フォークを構えながら様子をみている。


メガアルラウネは、身体のいたる所から茨を生やし出している。


さて、最初に突撃して来るアルトの相手をするかな。まず使う属性は星。星って、重力とかでいいよな。


「重力球×12」


僕がそう呟くと、僕の周囲に光を飲み込む30cm程度の大きさの闇色の球体が十二個出現した。


「来たな!」


アルトは、僕の魔法を見ても止まらずに突撃を続行した。


「<重力球1から4・指向性重力>対象・アルト」


僕が命じた瞬間、重力球が四つアルトに向かって飛んで行った。


アルトは、飛んで来た重力球に対して双剣を振り降ろして反撃した。


が、その攻撃は重力球をすり抜けた。

「なっ!?」


アルトが驚いて後ずさろうとしたが、移動速度と重力球の影響を受けて重量を増した双剣に引っ張られる形で前方に派手に転んだ。


ズザアー。かなりの勢いで地面の上を滑って行き、表示されているアルトのHPが減少していった。


派手に転んだけど大丈夫かなアルトのやつ?本当は、アルト自身に重力球を当てていくらぐらい重量を倍加すれば動けなくなるか調べようと思ったのにな。はあっ、アルトは知らなかったとはいえ、重力を剣で断ち切るなんて無理なのによくやるな。だけどちょうどHPも減ったことだし、アルトが立ち上がるまでの間メニュー画面の説明の続きをするかな。


「さて、ビット、メガアルラウネ。そっちでも確認出来ていると思うけど、こんな風に身体が傷つくとHPが減少するんだ」


「確かに減少していますね」


「確かにね。というか、アスト!今の攻撃は何なのよ!」


「いや、今のはダメージ狙いの攻撃じゃなくて、足止めが目的だったんだけどね」


「足止めって、それがどうしたら今みたいなことになるのよ!?」


メガアルラウネは、地面に俯せになっているアルトを指さしながら聞いてきた。


「簡単に言うとだな。今僕が使った<重力球>の魔法は、触れた対象の重さを操れるんだよ。だからアルトが剣で触れてしまった瞬間に、剣の重さが増加してバランスを崩した上に、突撃の途中で勢いがついていたせいでまあ、ご覧のとおりの結果になっちゃたんだよ」


「つまり、アルトは自滅したってこと?」


「まあ、はっきり言っちゃうとそうだね」


「ですがおかげで、アスト様の魔法の特性がわかりました」


「まあ確かにそうね」


「アスト様の魔法の特性がわかった以上、あの球体には触れないように行きますよ」


「ええ、わかったわ」


そう言って、今度はビットが走って来た。


「いきます、アスト様!」


そう言ってビットは、僕に向かってフォーク5本を投げつけた。そして、アルトとは逆に攻撃した後は後退していった。


ふむ。ビットの戦術は、ヒット&ウェイか。


「<重力球・指向性引力>対象・フォーク」


僕の命令に従い、僕の周囲に配置してあった重力球からフォークに向かって、力場が形成された。


僕に向かって来ていたフォークの全てが重力球の中に引き寄せられていった。


「さすがですねアスト様。ですが、なぜ私のフォークはアスト様に届かなかったのでしょう?アスト様の先程の説明では、アスト様の周囲の球体の特性は対象の重さを操ることだったはず。ですが、フォークは球体に引き寄せられるように途中で進路を変えました。それはなぜですか?」


「あっ!確かに私もそれは気になるわね。アスト、どういうことなの!」


「どういうことかって、言われてもな」


重力について詳しく話をした方がいいかな?


視線をあっちこっちさ迷わせて見る。


アルトはまだ俯せのまま変化なし。気絶でもしているのか?

ビットは、新たにフォークを取り出して戦闘をいつでも再開出来るようにしているな。

メガアルラウネの方は、茨を出した後はとくに動きは無しと。うん?


メガアルラウネを見ていて何か違和感を覚えた。


彼女をよく観察して見ると、MPのゲージが少しずつ減少していっていた。


ふむ。魔法かスキルの準備中か?なら、発動するまでの間説明するのもいいかな。


「まあいいか、教えてあげるよ。そもそも重さっていうのはね、自身にかかる重力のことなんだよ」


「「重力?」」


「そう。重力っていうのは、星が常時発生させている力で地上のものを星の核に引っ張る力だ。空を舞うものが最後には下に落ちるように。跳んでもすぐに地面に着地することになるのはこの力が関係しているんだ。だからたいていの場合は、重力を受ける面積が広いもの程重くなる傾向になる」


「なるほど、それでですか。納得がいきました」


「どういうこと?」


「簡単なことですよ。アルト様が転んだことと、私のフォークが外れたのは、下か横かは別として、その重力を操った結果ということです」


「けれど、ただそれだけしか出来ないわけではないけどね。メガアルラウネ」


「何?」


「君の方は、準備完了まで後どれくらいだい?」「何のことかしら?」


メガアルラウネの身体から、冷や汗が流れ出した。


「惚けなくてもいいよ、わかっているから」


「・・・何でわかったの?私がスキル発動の準備をしているって?」


「簡単だよ。君のMPがさっきから減少していたからね」


「あ~、確かにそうね。それにこのMPについては、アストが利点の説明の時に言ってたものね。はあっ。スキル発動までにはもう少しかかるわ」


「そうか。じゃあ先にビットのHPを1にしてしまうかな」


「そう簡単にはやられませんよアスト様」


「ならば防いでみせろビット、僕の攻撃をな!<重力球・指向性斥力>対象・フォーク。射出!」


僕の掛け声とともに、重力球の中に取り込まれていた全てのフォークがビット目掛けてすさまじい速度で発射された。


発射した自分自身がやり過ぎたかと、発射した時点で思ったのはご愛嬌。


ビットは、発射時の速度を見て慌てて回避行動とったが間に合うはずもなく。全てのフォークがビットにヒットした。


「ぐわっ!!!!」


フォークの銃弾、またはミサイルに直撃したビットは、一瞬にしてHPが1になり絶叫しながら戦闘フィールドの外にほうり出された。


「お~いビット、生きてるか?」


自分自身で条件設定や攻撃をしておいてなんだけど、今ので生きているのかかなり不安になる光景だった。


「だ、大、丈夫です」


弱々しいながらも返事が返ってきた。


「ア、アスト様。威力出し過ぎです」


ビットは、そうとう痛かったらしく涙目でこちらを見ている。


「ええとゴメン。オールエル、ビットの回復を頼む」


「了解しましたアスト様」


オールエルがビットの傍まで移動し、ビットを抱き抱えると元の位置に戻っていった。その後、オールエルの何体かがビットに回復魔法をかけ始めた。


「これでビットの方は良しと。メガアルラウネ、そっちはまだかかりそうかい?」


そう言って、視線をビットからメガアルラウネに移した。が、メガアルラウネはこっちを見て奮えていた。


「し、正直に言うと、私もう降参したいんだけど」


メガアルラウネも涙目になっていた。


「うーん、なら降参するかい?これはあくまでも模擬戦だから、無理してやる必要性はないしね」


「そうしようかしら。何かアストには勝てる気がしないしね。だってアスト、あなたまだ森を消し飛ばした魔法も使ってないんだもの。勝てる未来が想像出来ないわ」


「ああ、それは気にしなくてもいいよ。あれはアイテムがないと詠唱が必要だからさ」


「そうなの?けれどやっぱり怖いから私」


「もらったー!!」


メガアルラウネが降参しようとした瞬間、近くからアルトの叫ぶ声が聞こえてきた。


「「えっ!?」」


僕とメガアルラウネは驚いて声がした方を見ると、ちょうどアルトが剣で僕に切りかかって来るところだった。


アルトのやつ、いつのまに復活したんだ!?とりあえず防御しないと。


「<重力球5から12・指向性斥力障壁>対象」


げっ、間に合わない。僕は慌てて魔法防御から回避に切り換えた。


「どわっ!!」


が、結局回避は間に合わず、アルトの剣が僕を斬り付けた。


アルトに斬られた僕は、斬られた痛みを感じながら、斬られた時の勢いで後方に吹っ飛ばされた。


「良っしゃあ!兄貴に一撃おみまいしてやったぜぇ!」


吹っ飛ばされながらも、アルトの喜びの声が聞こえた。


「痛てて」


アルトのやつめ。なかなか起きないと思ったら、僕の注意がよそに向く時を待ってたのか。


そう思った後、僕はすぐに身体の状態を確認した。


左手と右足のHPが0になっているな。回避が間に合わなかったとはいえ、急所に当たるのは回避出来たか。だけど、右足をやられてるから移動もままならないな。


「アルト、僕に一撃加えたことは褒めてやる。だが、魔法使いを倒す場合は手足ではなく、急所を狙って戦闘を早く終わらせるか、喉を潰して魔法の詠唱を出来なくしないと駄目だぞ。何故ならば、<重力球1から3・重力領域>負荷重量・5倍」


僕の命令に従い、今までアルトが倒れていた辺りで待機していた四つの重力球の内三つが戦闘フィールドの端に移動した。そして、見えない圧力がアルトとメガアルラウネに襲い掛かった。


「ぐわっ!?」


「きゃっ!?」


二人は小さな悲鳴を上げながら地面へと崩れ落ちた。


「と、いう感じに手足が無くても魔法は使えるんだ。だから、相手に魔法を使うだけの時間を与えると、思わぬ攻撃を受けることになる。だけど、手足に与えるダメージが意味が無いかというとそうでもないんだけどな。痛みや恐怖を与えられれば、正しい詠唱やイメージが出来なくなって、相手が勝手に自爆することもあるからな」


「「じ、自爆?」」

「ああ、魔法は魔力という対価を払って、自分のイメージを現実にする技術だからな。当然、負のイメージでも魔法は発動する。自分がやられるシーンを想像した状態で魔法を使えば、当然それが現実になる。なぜなら、魔法に区別をつけるような意志は無いんだからな」


「あ、兄貴、そんな危ないの使ってたのかよ。というか、そんな危ないものを俺に修得させようとしてたのかよ!」


「そうだよ。だけどなアルト、どんなものにでも利点とリスクは有るものなんだから、それをいちいち気にしてもしょうがないだろう?」


「それはそうかもしれないけどよ、魔法のリスクぐらい教えてから薦めてくれよ!」


「あー、アルト。お前に修得させようとしたのは、アースター式のとは別の魔法大系だから、今言ったようなリスクは無いぞ」


「え?」


「僕がそんな危ないものをお前に修得させるとでも思ってたのか?」


「いや、今言われるまでは考えてもいなかったけどさ。ん?それなら何で兄貴はそんな危ない魔法使ってるんだ?」


「なに、こっちの方が自由度が高いってだけのことさ」


ゲームの魔法と違って、威力・形状・属性・効果・範囲、全部思いのままだからな。リスクが大きい分、利点も大きいんだよな。それに対して、アルトに教えようと思ってたゲームの魔法は、魔力条件さえ満たせばリスクはほとんど無いからな。何せ誰がやっても発動する内容は同じなんだから。


「さて、アルト。こちらもダメージが割と大きいから、もう終わりにさせてもらうぞ。アルトもメガアルラウネも、僕の重力領域で動けないからすぐに終わる」


「ちょっ、ま、待ってくれよ兄貴!!」


アルトは、僕の言葉を聞いて慌てて立ち上がろうとしている。


「くっ、ぐはっ」


が、やっぱり圧力が強くて無理そうだ。


「ちょっ、ちょっと、待ってよアスト!私は降参したいんだけど!」


「ゴメン、恨むならアルトを恨んでくれ。<重力球・指向性引力>対象・光」


僕の命令に従い、重力領域を発生させているものを除いた全ての重力球が周囲の光をその内に取り込み始めた。

「さあ、終わりだ!<重力球3から12・指向性圧縮放射>対象・光、発射!」


僕の掛け声と同時に九つの重力球から、凄まじい光量の光がアルトとメガアルラウネに向かって発射された。


「うわっー、来るな~!」


「来ないでぇ~!」


ドォカァ~ン。


アルトとメガアルラウネは、閃光の中に消えていった。


後には、えぐれた地面だけが残った。


「ふむ。やっぱりチャージしないと威力はたいして出ないか」


まあ、ただ光を吸収・圧縮して、擬似レーザーにしただけだからな。今度は魔力を混ぜるか、光属性の魔法でやってみるかな?


まあ今はいいか、戦闘フィールドの外にほうり出されたはずのアルト達と合流するとしよう。僕もオールエルに回復魔法をかけてもらわないと手足が痛くてかなわないからな。

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