思い出した世界
「兄貴朝だぞ!起きろよ」そう言って彼は僕の体を揺すった。僕はのろのろとベッドから起き上がって、声のする方に目を向けた。そこに居たのはこちらの世界での僕の双子の弟のアルトだった。アルトは、珍しそうにこちらを見ている。
「えっと、どうかした?」
「いや、いつも俺よりも先に起きているのに珍しいなっと思って」
「ああ、とても懐かしい夢を見ていたんだよ」そう、こちらに来る前の向こうでの夢を。
「夢ねぇ。そうだ、そんなことより母さんが朝食出来たってさ」
「わかったよ。すぐに行くから先に行っててくれよ」
「わかった。じゃあまた後で」そう言ってアルトは部屋を出て行った。僕はベッドから出て箪笥から服を取り出して着替えた。
「それにしても、もうこの世界に来て十五年か。リディウスが最後に言っていたとおり、十五歳の誕生日である今日記憶を戻してくれたんだ。それにしても、こうして記憶が戻ってみると確かにリディウスの言っていたとおり、記憶を忘れさせてもらっていたのは正解だったな」僕は今日までの記憶を振り返ってみて友人に感謝した。赤ん坊の頃は覚えてないけど、子供の頃はあちらと違って両親や弟と一緒に思い出をいっぱい作れたし、こちらの常識も一から生活の中で覚えてきたから問題は無いしね。でも、記憶が戻る前の予定だと今日は、朝誕生日を祝ってもらって、その後に冒険者ギルドに行って冒険者登録を行ってから冒険に出かけるはずだったけど、こうして向こうでの記憶が戻ると予定通りに冒険に出かけてもいいものかな?最初に一度リディウスに会ってから予定を決め直した方がいい気がするけど、登録して冒険に出かけるのはアルトも一緒だし、アルトは冒険に出かけるのを楽しみにしていたからな。けれど、記憶が戻ったいじょうリディウスの方から会いに来てくれるだろうから予定通りに進めても多分問題は無いし、予定通りに今日はするとしようかな。「兄貴!まだか?」その時部屋の外からアルトの催促がきた。とりあえず、今日のことは朝食の後に考えることにして、僕は部屋を後にした。