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廻る世界と星界竜  作者: 中野 翼
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住人勧誘

待つこと30分。彼女はようやく魔物達から解放されて、よろけながらもこちらに歩いて来た。


「はあ、はぁ、何なのよいったい」


開口一番にそう言われた。


「まあ仕方ないさ。死んだ君がこうして無事に転生したんだから」


「そうよ!私は死んだはずなのにいったいどうなっているのよ!」


「簡単に言えば、僕のスキルで転生させたんだよ」


「転生って何?というか、私の姿が変わっているのもあなたの言う転生のせいなの?」


「そうだよ。そして転生って言うのは、対象を新しい肉体で生き返らせることだと思ってくれればだいたいあっているかな?」


「何で最後が疑問系なのよ!」


「いや、その。自分でも普通なら使わないようなスキルだから、詳しく説明出来ないんだよ」


僕はそのことに苦笑した。


「私。そんな怪しいスキルを受けて大丈夫なの?」


彼女は新しい身体をあちこち不安そうに触って確認しながら聞いてきた。


「安全性の方は保障できるよ」


リディウスがくれたスキルのはずだし、今のところ効果がチート過ぎる以外はとくに問題も無いし。


「あなたがそう言うのなら信じるわ。だけどなんで私の新しい身体はこんなに小さいの?」


彼女は僕の言葉は信じてくれたが、新しい身体については少し不満らしい。


「お任せ作成したらそんな風になっちゃったんだよ」


「お任せ作成?何それ?」


「お任せ作成っていうのは、自分で容姿を決められないときに、前の身体のイメージからスキルが勝手に新しい身体を作成してくれるっていうサポート機能だよ」


「それでこれなの?」


彼女は今着ているレースやリボンがふんだんに使われているスカートの先を持ち上げながら僕に確認してきた。


「僕は可愛いと思うけど、君は嫌かい?」


「いえ、私も可愛いとは思うのだけど、今までと大きさが違い過ぎて馴れないのよ」


「ああ、けど大丈夫だよ。経験を積めばすぐに馴れるよ」


「そうかしら?」


彼女は僕の言葉に期待半分、不安半分っといった感じで返してきた。


「これから時間はいくらでもあるんだから大丈夫だよ」


「そうね。生きていれば時間はあるわよね」


「そうそう」


僕は彼女の言葉に何度も頷いた。


「そういえば生き返った衝撃で忘れてたけれど、あいつらはどうなったの?」


「黒い外套の男とローズクイーンのこと?」


「ええ、私が死んでからあの後はどうなったの?」


「それだったらあっちを見てもらったら早いかな?」


そう言って僕はエリダヌス座の魔法の通過した後を指さした。


「あっち?」


彼女は僕が指さした方に視線を向けた。


「な、何これ!」


彼女はその光景を見て絶句したようだ。確かに自分でやっておいてなんだけど、そりゃあ驚くよな。なんせ地面はえぐれているうえガラス化してるし、死ぬ前にあった枯れ木の森は消滅しているんだから。


「い、いったい、こ、これはどうなってるのよ!」


彼女は小さくなった身体からは信じられないほどの大声で叫んだ。


まあ自分が彼女の立場だったら僕でも叫ぶだろうな。


「僕の魔法の痕だよ」


「魔法って、あ、あなたはこんな災害級の魔法が使えたの?」


「ああ、普段は抑えているけど、やろうと思えばこれくらいの威力の魔法はいくつか使えるよ」


「そ、そうなの。い、意外と物騒なのね」


彼女はかなり引き気味だ。さすがに正直に言ったのはまずかったかな?


「無理はないと自分でも思うけど、そこまで退かなくてもいいじゃないか」


「そう言われても、これは普通に退くでしょ」


「自覚があるから言われたくないんだ」


「あら、自覚はあったのね」


心底意外という感じの表情で言われた。


「そりゃあここまで派手にやって何も感じないわけないだろう」


「ならなんでここまでしたのよ?」


君がそれを言うのかと思った。


「決まっているだろう!君が目の前で死んで冷静な判断が出来なかったんだ!」


僕の答えを聞いた彼女は一瞬キョトンっ、とした後に気まずそうに僕から顔を逸らした。


「その、あの、ごめんなさい。私の仇を討ってくれたのに、さっきはあんなこと言っちゃって」


「わかってくれればいいよ。さてと、一段落ついたしそろそろ帰ろうか」


もう連中は吹っ飛ばしたし、依頼の一角ウサギも規定数は確保しているからこの森でやることないしな。


「え、もうかえるの!?」


彼女は驚いたようで大きな声で問い掛けてきた。


「ああ、この森に来た目的は果たせたし、君を転生させたからこれ以上何かをする魔力も無いんだよ」


「そう、それなら仕方ないわね」


彼女は目に見えて、落胆した。


「君達はこれからどうするんだ?」


「どうするって何が?」


彼女のこの様子だと、僕の質問の意味がわかってないらしい。


「搾取ローズ、ローズクイーンのせいで森はめちゃくちゃになっているだろ。これからどうするんだ?」


「そうね。私達はこれからどうしましょう?」


彼女は魔物達に問い掛けた。


「グギャ、グギャ」


「キュ、キュ、キュイ!」


「ギィギィ!」


魔物達は彼女の問い掛けに答えるように鳴き声を上げた。


「あら?あら、そう。・・・確かに。やっぱりそうなるのね」


彼女と魔物達は僕にはいまいち内容がわからないが、いくつもやり取りを交わした後に何かを決めたようだ。


「何だって?」


「何でもさっきのどたばたで、この子達の住家の大半が駄目になったそうよ」


「ああ、ここに来る前から結構広範囲で森が枯れてたからなあ」


「ええ、それに搾取ローズがローズクイーンに変貌したときの全方位搾取攻撃で地面からもねこそぎ栄養を奪われてて、この森は完全に終わりみたいなのよ。だからみんな余所に新しい住家を探さなきゃいけないわ」


「ああ、そうなるのか。けどこの辺りに今いる森以外に森なんかあったっけ?」


「それが無いのよね。いくらあの連中の攻撃でこの子達の数が減っているとはいえ、みんなでまとめて住めるような場所は近場には無いのよ。はあっ、どうしようかしら」


彼女と魔物達は一様に暗い雰囲気を醸し出している。


まあ確かに近場にそんな都合のいい場所なんて無いからな。うんっ?いや待てよ。都合のいい場所?はて、何かひっかかるような?何だっけな?・・・ああ!都合のいい場所なんて自分で作成すればいいんじゃないか!たとえ作成しなくてもフィールド1なら彼女と魔物達を全員移住させても十分な空きはあるし、せっかく友人になったことだし提案してみるか。


「なあメガアルラウネ」


「何?」


「僕、君達の新しい住家に心当たりがあるんだけど、僕と一緒に来ないかい?」


「え?みんなで移住出来る場所を知っているの?」


「ああ、住居スペース的にも、生活環境的にも、食糧事情も問題無いはずだよ。行く当てが無いなら一緒に来ないか?」


「それが本当なら是非お願いしたいわ」


彼女も魔物達も乗り気なようだ。後は。


「グラット」


「何でさぁアスト様」


「彼女達をまとめて一度に転移させられる方法ってあるかな?」


「ありやすぜぇ!」


「どうすればいいんだ?」


「簡単でさぁ!アスト様の魔力でこの森を覆って収納するか、フィールドを部分展開して直接連れて行けばいいでさぁ!」


「ああ、なるほど確かにそれなら一度でいけるな」


さて、どちらの方法にするかな?魔力も残り少ないし、展開の方でいくか。僕はすぐに方法を決めて準備に入った。


「ええと、範囲はこの森全体にしてフィールド1を限定展開。それから展開した瞬間に収納を実行。ついでに自分達も転移するように設定してと、良し!準備完了。じゃあ行くよ」


「ええ、私達は大丈夫よ」


「了解。では展開と」


その瞬間辺りの地面は光に包まれた。そして、その上にいた全てのものが一緒で転移した。




この時一緒に転移せずにアイテムボックスの中身を確認しておけばよかったと、後から後悔することになろうとはこの時の僕は想像もしていなかった。

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