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廻る世界と星界竜  作者: 中野 翼
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転生

黒い外套の男とローズクイーンを消し去った後、僕はヒュドラを解除してしばらくメガアルラウネの遺体を抱いて泣き続けた。そうして、涙が出なくなった頃グラットの声が聞こえてきた。


「ア、アスト様!な、なんかきやしたぜぇ!」


僕は何が来たのかと思いグラットを見た。そしてグラットが何を見て慌てているのかを確認する為、グラットの視線の先に目を向けた。


「うわっ!」


そこには大量の魔物達がいた。悲しみにくれていて魔物達の接近に気づかなかったようだ。僕は慌てて戦闘準備をしようとした。が、おかしなことに気づいた。魔物達からは敵意が全くと言っていいほど感じられなかったのだ。


「この魔物達いったい何なんだ?」


「さあ?さっぱりでさぁ」


グラットの方もいまいちこの状況がわからないようだ。


そんな僕達を余所に、魔物達は僕達の傍に移動して来た。


一角ウサギ、落穴モグラ、斬岩カマキリ、などのここ最近戦った魔物達に、今までは見かけなかった啄実スズメ、月夜フクロウ、日朝カラスなどの鳥の魔力変質型の魔物達もいた。


だけど、ここまで近くにいてもやっぱり敵意は感じない。それどころか、みんな悲しんでいるように感じた。そう、今の自分と同じ感情が魔物達からも感じられたのだ。それによって、僕は魔物達の正体と何故ここに集まって来たのかおおよその見当がついた。


「君達は彼女の友達かい?」


僕の問い掛けに魔物達はそれぞれ肯定の意を示した。


やっぱりだ。彼女のスキルを受けていた魔物達が彼女の死を悼んでやって来たようだ。


僕はグラットを手招きし、そっとメガアルラウネの遺体から離れた。


魔物達は彼女の遺体を中心にして集まり悲しみの声をあげた。


僕とグラットはその光景を少し離れた場所から見ていることにした。そんな時、またアラームの音がした。


クエスト1達成


報酬 20000ゴルド

星魂のオーブ


を入手しました。



クエスト自動作成のところを確認したらそんなことが記されていた。どうやら搾取ローズことローズクイーンはちゃんと消滅させられたようだ。彼女の仇がちゃんと討てたことがわかって、心の底から嬉しかった。感慨にふけっているとまたアラームが鳴った。


クエスト自動作成にクエスト2が作成されました。という表示が出ていたので内容を確認してみた。


   クエスト2



星魂のオーブを使用し、ソウルクリスタルを作成せよ。



報酬

お金 50ゴルド

アイテム 転生の手引書封印中スキル

星?竜の祝福解放



何だこの内容?星魂のオーブってのは今入手したアイテムだよな?ソウルクリスタルって何だ?直訳だと魂水晶とかになるのか?分けがわからないな。ええと、とりあえず星魂のオーブの詳細をステータス確認で調べてみるかな。


星魂のオーブ

星空を閉じ込めたような夜色の宝玉。星?竜の力が宿っており、星?竜と縁が繋がっているものの魂・精神・知識・記憶・身体情報等を水晶化させ、ソウルクリスタルとして保存することが可能。ソウルクリスタルを使用することにより、転生機能で前世の己を保ったまま対象を転生させることが可能。ただし、繋がりが薄い場合や保存する対象の状態が悪い場合は劣化する可能性あり。


注意! 星?竜以外の者が使用した場所消滅の危険性あり。


「うわあ~」


ステータス確認を終えてタイムリーだと思ったが、これで彼女を救える可能性が出てきた。幸い彼女は死んだばかりで遺体もすぐそこにある。これならたいした劣化もなく、彼女を彼女として転生させられるだろう。そう思った僕は魔物達に囲まれているメガアルラウネの遺体の傍に歩きだした。


「ゴメン、少し通してもらっていいかな?」


僕が頼むと魔物達は道を開けてくれた。僕は彼女の傍でアイテムボックスから星魂のオーブを取り出して彼女の遺体に向かって掲げた。すると、彼女の遺体からいくつもの光が星魂のオーブに向かって舞い上がってきた。それは次々星魂のオーブに吸い込まれていき、その度に星魂のオーブの中に小さな光が灯っていった。そしてその光が星魂のオーブに満ちた瞬間、長さ十センチほどの中に薔薇色の光が灯った夜色の水晶を吐き出した。僕は吐き出された水晶を手のひらに転がした。


「成功したかな?」


そう思ったらまたアラームが鳴った。僕はクエスト自動作成を確認した。


クエスト2達成


報酬 50ゴルド

転生の手引書

を入手しました。


封印中スキル 星?竜の祝福が解放されました。


僕は内容を確認して、ソウルクリスタルの作成が上手くいったことを知った。さてと、ソウルクリスタルが出来たのだから次はいよいよメガアルラウネを転生させよう。僕はまず手に入れたばかりの転生の手引書をアイテムボックスから取り出した。手引書はいかにもな見た目の装丁に、表紙には尾をくわえた蛇。ウロボロスの絵が描かれた文庫本サイズの厚さの本だった。僕は手引書をざっと流し読みしていった。手引書には次のようなことがかかれていた。


1 転生させる為には死後49日以内の遺体、または星魂のオーブにより生成されたソウルクリスタルが必要である。


2 転生対象が転生を望んでいなくても転生は可能だが、その場合は転生の失敗、または知識・記憶・精神・スキル等の引き継ぎが不完全になる場合がある。


3 転生先の肉体は転生機能発動者の知識・記憶・共有ライブラリーにある情報から選択するか、自身で一から新しい肉体を作成する必要がある。


4 転生の際には転生体を構築する為の素材及び魔力を消費し、転生体は消費された素材、魔力に応じた力を得る。その為素材の変更・魔力の増減により同じ種族でも差が出る。


と、大体こんな内容だった。意外と細かかった。ソウルクリスタルはもう生成してあるから1は良し。2は彼女が生き返りたいと思っていると考えているからこれも良し。3はどうするかな?メガアルラウネとして転生させた方がいいかな?けど、彼女を外の世界に連れ出して街なんかを歩かせてもみたいんだよな。どうするかな。うう~んと、そうだ!二つの姿を持たせられないかな?僕はモンスター作成のところを調べてみた。


モンスター作成


自分の好きな姿・種族・能力を持った存在の作成が可能。有機物・無機物・エネルギー・元素・概念いかなるものでもモンスターとして作成可能。ただし、全体的なスペックは素材と使用された魔力量に依存する。



何というか性能がおかしい。何処からどう見ても明らかにおかしい!チート能力をいくつ実装しているんだこのゲームクリエーターというスキルわ!基本自分が欲しいゲーム要素が反映されているのはわかる。ステータス確認も、アイテムボックスも、装備作成も、オブジェクト作成も、フィールド作成も、モンスター作成も、今だに使用していない転生機能や育成機能も、ゲームのRPGなんかを作成したり遊ぶ為だと普通に必要な機能だけど、これを現実に持ち込むとチート過ぎる。リディウスは僕に何をさせたいんだいったい。何かすごく疲れたけど、ここまでスキル内容がアレなら姿が二つどころか幾らでも増やせそうだな。さてと、じゃあ転生体の作成に入るかな。


まずは姿を決めるか。ええと片方はメガアルラウネをベースに改良すればいいとして、人型はどうするかな?何か都合のいい機能はないかなっと。モンスター作成の内容をさらに詳しく調べると、お任せ作成というのがあった。内容を確認するといけると思った。これで彼女の容姿は決まった。次は種族っと。種族は新しく作る方がこれから作成する可能性のあるモンスター達とも統一性が出来ていいだろう。やっぱり星に関する名前がいいな。スター、エトワール、ステッラ、シュテルン、エストレリャ、ズウ゛ェズダー、アステル、大体外国だと星はこうなるんだけどどうするかな?やっぱりギリシャ語のアステルが一番好きな感じかな。けど一語だとやっぱり寂しいな。何か足すかな?そうだな、英語のスピリット。精霊を足してアステルスピリット《星霊》なんかがいいかな。後は能力は引き継ぎで良し!最後に素材は星?竜のウロコで魔力は適当に割り振れば良しと。早速僕は転生の準備に入った。



転生内容確認


転生対象

ソウルクリスタル

モンスター形態

メガアルラウネ《星座》

人型形態

お任せ

種族

アステルスピリット《星霊》

能力

引き継ぎ

消費素材

星?竜のウロコ×1

消費魔力

適当



内容を確認したけど不備無し。これなら大丈夫だろう。僕はそのまま転生を実行した。その瞬間僕は思わず膝を着いた。原因は僕の体内の魔力が一気に減少したせいだ。僕から抜け出した魔力は僕が持っていたソウルクリスタルに吸い込まれていった。次の瞬間ソウルクリスタルは僕の手を離れ、空中に浮かび上がった。そして突然強い光を放った。それからソウルクリスタルの中に吸い込まれた魔力がソウルクリスタルの表面に浮き出した。ソウルクリスタルはだんだん人型を象り始めた。それからはあっという間に人型を構築した。光が収まりソウルクリスタルが浮かんでいた場所を見ると、そこには一人の女の子が佇んでいた。見た目は十才くらいでかなり可愛い。薔薇のような赤い髪を腰の辺りまで伸ばしていて、薔薇の意匠の髪留めを着けている。瞳の色は碧で、今の状況に戸惑っているようで周囲をいったりきたりしている。その視線が僕の方に向いて固定された。


「あ、あの、その、これってどういった状況なの?」


彼女はかなり動揺した様子で僕に尋ねてきた。


「あ、ああそれはね」


「「「ウォーー」」」


僕が説明しようとした瞬間、周囲で今まで成り行きを見守っていた魔物達が雄叫びを上げ、転生した彼女に群がって行った。


「キャア~!ちょ、ちょっとみんな落ち着いてよ」


彼女は悲鳴を上げつつも嬉しそうに魔物達に揉みくちゃにされていった。僕は彼女達から距離をとり、彼女達の再会をグラットと一緒にしばらく眺めつづけた。

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