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廻る世界と星界竜  作者: 中野 翼
24/45

メガアルラウネ

僕とグラットはバラの魔物だと思われるものの前に移動した。そしてそれを見上げて思った。


「近くで見ると、やっぱり大きな」


あっちの世界での三階建てのビルぐらいの高さがある。


「そうでやすね。にしても、罠も何も無いようですぜぇ」


グラットが周囲を見回しながら言った。


確かに、待ち伏せがあったぐらいだから罠とかもあるかと思ってたのに何もなかったな。


あるのは、枯れ果てた森に咲く巨大なバラらしきものだけ。


「これからどうしやす?」


そうなんだよな、てっきり近づいたら本性を現して襲い掛かってくると思ってたのに反応が無いしな。


「ほんと、どうしようか?」


ボス戦と思ってただけに肩透かしをくらった感じなんだよな。


「とりあえず、目の前のものを破壊しときやすか?」


「そうだなぁ~」


反応が無いとはいえ、これが怪しいのは確かなんだよなぁ。


「けど、下手に刺激するのもあれなんだよなぁ」


刺激した途端に本性を現す可能性も否定出来ないんだよなぁ。


「ならいっそのこと、アイテムボックスに収納しちまったらどうですかい?」


「収納って、生きているやつって収納出来るのか?」


倒した魔物とかしか収納したことがないから、出来るのかわからないので聞いてみた。


「あ~、収納というよりは、作成してあるフィールドに転移させるってのが正しいでさぁ」


それなら可能なのか?


「とりあえず試してみるかな」


僕がバラらしきものに触れようとした時、近くで何かのアラームのような音がなった。


「何の音だ」


周囲を見回したがアラームの音を出すようなものは見当たらなかった。


「気のせいか?なあグラット、今アラームの音がしなかったか?」


一応グラットにも確認してみた。


「鳴りやしたね」


グラットにも聞こえていたんだから気のせいではないな。


「けど、近くにあるものでそんな音を出すものは無いんだよな」


そういえば、グラットはどこから聞こえたかわかるのかな?


「なあグラット、どこら辺から聞こえたかわかるか?」


「アスト様自身から鳴っているように聞こえやした!」


「僕から?」


なんでヒューマンの自分からアラームの音が鳴るんだ?ユニークハイでもそれはおかしいだろう。残るはスキル関係か。そう思ってスキルを確認してみるとビンゴだった。


「ああ原因はこれか」


「どうしやした?」


「今のアラーム音はクエストが作成された時に鳴る音らしい」


「クエストでやすぅか?そういえば、自動とかついてやしたね」


とくに確認してなかったけど、後で詳しくクエスト自動作成の内容を確認しておこう。


「で、どんなクエストが作成されたんで?」


「ちょっと待ってくれ」


僕はクエスト自動作成のところでクエスト内容を確認した。


  クエスト1


森に巣くう、未知のバラ系の魔物を討伐せよ。


  報酬

お金 

 20000ゴルド

アイテム 

 星魂のオーブ



「とりあえずは、目の前のバラらしきものを討伐すればいいらしい」


「じゃあ、転移はさせずにとっとと倒しやすか?」


「そうだな」


「誰を倒すの?」


若い女の声がした。


「そりゃあ目の前のやつをだろ」


「ふうん。そうなんだ」


「アスト様?誰と話てるんですかい?」


「誰とって、ここには僕とお前しかいないだろ。あれ?」


だけど、さっき質問してきた声はグラットのものではなく、若い女の声だった。


僕はそれに気ずいた瞬間、ヒュドラを全速力で後退させた。


「うわっと!どうしたんでさぁアスト様?」


グラットが問い掛けてきたが、僕には返答する余裕がなかった。


「そんなに慌てて逃げなくてもいいのに」


バラらしきものからさっきと同じ声がした。


「やっぱりか」


バラらしきものを見ると、バラは少しずつ形を変えていった。まずは、周囲に張り巡らされていた茨が解け、根元に集まっていくつもの脚を形成した。次に、バラの花弁が茨に覆いかぶさるように下に下がり、ドレスのようになった。そして、バラの中心から若い女性の身体が出て来た。


「なんだこれわ!?」


突然の変化に僕は驚きの声を上げた。


「そんなに驚かなくてもいいじゃないの」


相手は僕の反応に不愉快そうな顔をしながら言った。


「お前は何ものなんだ?」


僕は気を取り直して質問した。


「私?私はメガアルラウネっていうらしいわよ」


「メガアルラウネ?」


やっぱり新種か。うん?今の台詞、何かおかしかったような?


「いうらしいって、ことは誰かにそう呼ばれたのか?」


「そうよ。私がここで発芽した時に目の前にいた黒い外套を纏った人物が私のことをそう呼んでいたわ」


その人物は偶然居合わせたのか、それともその人物がメガアルラウネをここに植えたのか、どっちだろう?


「その人物は、君の名前以外に何か君のことを言っていたかい?」


「う~んと確か、予定通り順調に育ったなって言ってたかな?」


「そうか」


その人物が新種のメガアルラウネとやらを植えた犯人で確定かな。それとも誰かに言われて様子を見に来ただけなのかな?


「他には何か言ってなかったか?」


「他に?後はこの森に誰か入って来たら、その相手と遊んであげなさいって言われたわ」


「遊ぶってまさか?」


嫌な予感がした。


「うん、この森に入って来るのは冒険者って人達で、魔物と遊ぶことがお仕事だから森のみんなと一緒に遊んであげなさいって」


嫌な予感が的中した。


「じゃあ、この森の中で戦った魔物達はみんな君が操っていたのか?」


「そうだよ。みんなに人が来たら遊んであげるように言っておいたの」


「あれで遊びなんだ」


はた迷惑なことだ。僕達は規格外だから大丈夫だったけれど、普通だったら壊滅させられてるぞ。


「僕達の他にはどれくらいの人達と遊んだんだい?」


「う~んとね、十人くらいかな?」


多いんだか、少ないんだかわからない数だな。


「君が発芽したのはどれくらい前なんだい?」


「二日前だよ」


二日で十人なら少ない方かな。それと、僕達が来た日に発芽したのか。これは偶然なのかな?


「僕達以外の遊んであげた人達はどうしたんだい?」


「遊んであげてる途中で動かなくなっちゃったから、遊び疲れたんだと思って休ませてあげようと思てったのに、黒い外套の人が来て連れて行っちゃったわよ」


黒い外套の人物。やっぱりそいつが黒幕なのか?それに動かなくなったって、死んだのかな?


「そいつは何か言ってなかったか?」


「何かってどんな?」


「なんでもいいんだ、何か言ってなかったか?」


「ううんと確か、餌とサンプルどちらにしようかって、言ってたかな?」


「餌にサンプルって」


かなり不穏だな。おそらく餌にしろサンプルにしろ、連れて行かれた人達はろくなめにあってなさそうだな。


そんなことを考えながらふと疑問が浮かんだ。


「なあ君は、森に来た人達と遊んでいただけなんだよな?」


「うん!そうだよ。それがどうかしたの?」


可愛い仕草で元気よく返答された。とても嘘を言っているようには見えない。


「じゃあ、街にいた僕達のもとに斬岩カマキリを向かわせたり、この森を枯らしたりはしていないのか?」


「うん、してないよ。て、いうか、私がなんでそんなことをすると思ったの?」


じとめで見ながら聞かれた。


「いや、その、ここ最近、予想外のことが立て続けに起きたから、誰かが一人で騒動を起こしているんだろうと思ってたんだよ」


僕は多少つっかえながらも弁明した。だけど、彼女が犯人じゃないなら斬岩カマキリと森が枯れている原因はなんなんだ?


「あっと、君は斬岩カマキリと森が枯れていることについて何か知らないかな?」


「斬岩カマキリは知らないけど、森が枯れている原因は知っているかも?」


「え、知ってるの!」


「確実じゃあないわよ」


「それでも構わないから知ってることを教えてくれないか?」


今は情報が不足しているから少しでも情報が欲しかった。


「わかったわ。私が発芽した少し後に、地下の方でも何かが発芽したらしいの。そいつは手当たり次第に栄養を取り込んでいるから、多分それが森の木が枯れている原因よ」


「なるほど」


多分そいつが犯人で確定だな。


「アスト様、アスト様」


小声で横のグラットに呼びかけられた。


「どうしたんだ?」


「あいつの言ってることを信じるんで?」


グラットは彼女を疑っているようだ。


「僕は信じていいと思ってるけど」


「なんででさぁ?」


グラットには僕が彼女を信じる理由がわからないようだ。


「簡単なことだよ。彼女が敵ならこんな風に悠長に話なんかしてないよ。それに、彼女の茨を見てご覧」


「茨がどうしたんでさぁ?」


グラットは茨を見ても僕が言いたいことがわからないようだ。


「茨の太さだよ。明らかに僕の腕よりも太いだろ」


「あ、ああ!そういえば枯れ木の下のトンネルにはあの茨の太さだと入りやせんね」


「これでわかっただろ。彼女は信じても大丈夫だよ」


「納得できやした」


僕は視線をグラットから彼女に戻して話を再開した。


「そいつのいる地下はどの辺なんだい?」


「ここからもう少し奥に行ったところよ」


「案内を頼めないかな?」


「いいわよ。ちょうど私もそいつに用があるから」


「用?君の用ってなんだい?」


「そいつに私の友達が何体か食べられたのよ。文句を言わないと気がすまないわ」


それならこちらとも利害が一致するな。


「なるほど、じゃあ道案内よろしく」


「ええ、行きましょう」


そう言って彼女は、茨の脚で移動し始めた。


「僕達も行こうか」


「へい!」


僕はヒュドラを動かして彼女の後を追った。

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