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廻る世界と星界竜  作者: 中野 翼
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水のドーム

「ではアスト様初めましょうぜぇ」

「ああ」僕はさっき教えてもらった一撃必殺技の準備に取り掛かった。フィールドを使った一撃必殺技というのはどんなものかと思ったら、ただたんに致死率の高いフィールドを作成してそれを展開。展開地点にいるもの全てをその環境の餌食にするというただそれだけのことだった。だがその方法を聞いたときに僕はこれはとても恐ろしい方法だと思った。向こうでビットと話た時には戦闘を有利に出来る程度にしか思っていなかったが、この方法を聞いて僕はゲームクリエイターにたいする認識を改めた。魔法にも天災規模の破壊をもたらすものはあるが、これはそんな生易しいものじゃない。魔法は自身の魔力を世界に捧げることにより世界に存在するものや理を一時的に顕現させる技術だ。それゆえに、この世界にないものや理にないものは顕現させられないし、持続させる為には規模に応じた魔力を消費する。その為広範囲に効果を及ぼすものや高度な魔法ほど持続時間が短くなる傾向がある。その為、一部の例外を除いて魔法では世界に長期間影響を与えることは出来ない。だが、ゲームクリエイターでは初めに魔力と素材が必要だが作成した後にはそれらを必要としない。ゆえに、作成した致死率の高いフィールドはこちらが解除しない限り、内に秘めた災厄を振り撒き続けることになる。魔法なら一撃耐え切れば勝機が生まれることもあるだろうが、ゲームクリエイターの方はそうじゃない。世界そのものとして構築された災厄は、その世界が消滅しない限りいつまでも続く。太陽が昇り、沈み、また昇るように、世界の摂理として設定どうりに世界そのものを武器にする極悪なスキルだ。どんなものも世界の中にいるいじょう、世界そのものに牙を剥かれては生き残ることは不可能だ。このスキルがここまでチートだと、さすがにリディウスに何か言った方がいい気がしてきた。だが、ゲームだとチート過ぎて無双にしかならないだろうこのスキルも、現実だとあって困ることはない。ゲームならいくらでもやり直せるが、この世界では死んだら終わりだ。リディウスに聞いた限りでは死者の蘇生は可能らしいが、魔法にしろアイテムにしろ実際に使おうとすると難易度が高い。たいていが入手困難だったり、使用条件が厳しいからだ。魔法作成で作成出来る可能性はあるが、蘇生のイメージが微妙で効果を発揮するのかかなり怪しい。せめてこの世界での蘇生を見てからじゃないととてもじゃないが無理だろう。そんなことを考えながらもフィールドの作成に取り掛かった。まずはあいつらをどういう方法で倒すのがいいだろう?倒し方を選べるならば、一角ウサギは依頼達成の為に原型を残しておきたい。他の魔物達も別の依頼で使えるだろうからこちらも原型を残しておきたい。だがそうすると、どんな環境を作り出せば外傷を抑えられるだろうか?火は燃えるし、雷は焦げる。風だとどれくらいで倒せるのか不明。土だと潰すことになるからこれも駄目。水で溺れさせるのがいいだろうか?けど、魔物って溺れるのか?魔物達の様子を伺ってみる。ウサギにモグラ、カマキリ、イモムシ、イノシシ、クモ。魔物達を改めて確認して、今いる魔物達は獣と虫系だからいけるだろうと思った。だから、フィールド作成を選んで魔物達が全部入るくらいの大きさの水のフィールドを作成した。とくに問題も無くアイテムボックスにフィールド3が追加された。後はこれを魔物達のいる場所に展開すれば完了だ。そう思って魔物達の中心を目測でだいたい測って展開しようとしたが、ふと疑問に思った。展開したフィールドの中はあらかじめ設定した条件設定のままなのは聞いたが、隣接している場所に関してはどうなるんだ?フィールド2の時はただの実験場だったからとくにおかしなことにはならなかったが、このフィールドを展開した場合その周囲の森にはどんな影響が出るんだろう?展開範囲だけが水槽みたいになるのならいいけど、そうはならずに森の中に流れ込んだらどうしよう。最悪なのは、展開した時にあった水だけではすまずに、いつまでもフィールドから水が出続けた場合だ。その場合は、ここにいる僕達も押し流されているだろうからすぐには水の流出を止められないだろう。そうして、流された僕達が戻ってきてその状況をなんとかし始めた頃にはこの森は泉か湖になってしまっているだろうと思った。その事態は避けたかった。冒険に出てたった二日でそんな問題を起こしたくはなかった。アルトのフォローをしたくてついて来たのに、こっちが問題を起こしてたら示しがつかない。この結果を回避すべく隣にいる従者モグラにどうなるのか聞いてみることにした。

「なあ従者モグラ。フィールドを展開した時って、中のものは外に出て来たりするのか?」

「中のものが外にですかい?」

従者モグラは意味を計りかねているらしく首を捻っている。だから、もう少し詳しく説明することにした。

「そう、具体的にいうと今から魔物達を水責めにするけど、その水は遮蔽物のない周りに流れ出したりするのか?」

「すぐには出来やしませんがやろうと思えば出来ますぜぇ」

「やろうと思えば?それってなんらかの条件をクリアすればどうにかなるってことか?」

「そうですぜぇ!展開した時点ではこっちの世界とは繋がりが無くて干渉できやせんが、一定の時間隣接していると繋がりができて干渉出来るようになるんでさぁ。そうすると、あっちとこっちのものがお互いに行き来が出来るんでさぁ!今のアスト様の質問だと、水が外に流れるんでさぁ。ただし、これはあくまでもアスト様が許可すればの話でさぁ。だから今は気にせずやっちまってくだせぇ!」

従者モグラから問題が無いことを聞いて安心した。僕は改めて魔物達の中心に狙いを定めて、点滅している範囲に魔物達が全て入っていることを確認してから「展開」と唱えた。すると、待ち伏せしていた魔物達のいた場所が光につつまれて一瞬で水のドームが出現した。目測で大体の大きさを設定したが、ここまで大きいのには驚いた。目測だから大きめに作成はしたが、サイズが尋常じゃあない。学校の体育館二個分以上の広さは軽くあろうかというサイズだ。待ち伏せがあったいじょう、この近くに黒幕が居る可能性が高いのに予想外に派手なことになって少し不安になった。だが、すぐに何かが森の奥から来る様子もなかったので、そのまま予定通りにすることにした。水のドームの中を覗いてみると、ドームの中には範囲内にいた全ての魔物達が囚われていた。これは成功したとみていいだろう。魔物達は突然の環境の変化についていけずに錯乱状態に陥っている。あるものは水の中から抜け出そうともがき、またあるものはあっという間に酸素不足に陥って苦しみ出している。ひょっとしたらドームの外に脱出するやつがいるかもしれないと観察していたが、その心配はなさそうだ。普段水の中になど入ったりしないやつらばかりのせいかもしれないが、外に出ようともがいているやつらの中には近場の境界に行くといった考えを持って行動しているやつは一匹もいなかった。それから30分近い間、動く魔物がいなくなるまで様子見を続けた。刻一刻と魔物が力尽きていくのを見るのはさすがに後味が悪かったが、当初の予定通りさしたる損傷も無い状態で魔物達を全滅させることに成功したので良しとしよう。

「成功のようでさぁアスト様」

「そうだな。後はフィールドを戻して魔物達の遺体を回収してから奥に向かおう。さすがにこれだけ時間が経っているのに何も起こらないのは気味が悪いしな」

「確かにこれだけ派手にやっちまっているのになんの反応もねぇのはおかしいですぜぇ」

「だからさっさとやるぞ従者モグラ」

「了解でさぁアスト様!」

僕は多少急ぎつつ水のドームを元の森に戻した。元に戻ったそこにはいくつもの魔物の遺体が転がっていた。僕はその転がっていた遺体を一つ一つアイテムボックスに収納していった。だがそこでおかしなことがあった。魔物の数が最初に数えた時よりも減っていたのだ。正確にいうと、毒巣グモの遺体が無かった。周囲を見回してみたが毒巣グモの姿は影も形もなかった。だが、毒巣グモを見つけられなかった代わりに妙なものを見つけた。毒々しい紫色をした丸い何かが鎮座していた。それが何かはすぐに判明することとなった。

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