別れと始まり
「さて、落ち着いたかい?」
「うん、何とかね」
「じゃあそろそろ状況を説明しようか」 「お願い」
「といっても、状況を簡単に言うと君はいつもの様にみんなと遊ぶ約束をして、待ち合わせ場所に来る途中で交通事故に遭ったんだよ」
「交通事故?」
「そう、それで僕は君の魂をここに連れて来たんだ」
「魂を連れて来たって、僕の容態ってそんなに悪いの?」
「この世界では即死した人間は生き返れないだろ」
「即死って、それにそれ以外なら何とかなったってこと」
「ああ、僕の力なら多少の融通はしてあげられたよ。けれど、即死の人間を生き返らせることは可能でも、君の世界的におかしいからしてあげることはできなかったんだよ。けれど、この世界では駄目でも他の世界で人生を送れる様にしてあげることは可能だから魂を連れて来たんだ。」
「それって、本とかによくある異世界トリップ?」
「いいや、君を送る世界はまだ若いから赤ん坊に転生して貰おうと思っている」「世界が若いと何かあるの?」
「ああ、世界が若いってことは不確定要素を受け入れるだけの器が無いってことなんだ。けれど、赤ん坊になってしまうけど変わりに前に君が欲しがっていたものをあげられるよ」「欲しがっていたもの?」僕は首を傾げた。「前に言ってたじゃないか両親は仕事ばかりだし、一人っ子で寂しいって」
「覚えていてくれたんだ」
「当たり前だろ、友人なんだから」そう言われて僕は嬉しくなった。
「それで向こうの世界ってどんな所?」
「僕の友人が創造した所なんだけど、魔物や精霊、エルフなんかもいるファンタジー系の世界だよ」
「君の友人?そういえば結局リディウスは神様なの?」
「違うよ。僕はこの世界でいえば、本の作者とかゲームの開発者とかが近いかな」
「作者に開発者?」
「そう、僕は自分の嗜好に従って世界を創造するからね。存在する為に必要なんでもなく住んだりすることも無い。ただ創造するだけだからね」
「そういうものなの?」
「在り方は色々だよ。さてと、そろそろ君を送るとしようか」
「もう少し色々聞いてみたいんだけど?」「また今度会ったときに答えてあげるよ」
「今度?」
「僕は君の行く世界に行くことが可能だからね」
「じゃあ向こうでも会えるんだ!」
「ああ、だから今はここまでにしよう」
「わかったよ」やっぱりもっと色々聞いてみたいんだけど次に会えた時の楽しみにしておこう。
「それじゃあ行ってらっしゃい。それと、向こうで十五歳になるまではこちらのことは、忘れさせておくね」
「なんで?」
「いや、今の記憶を持っていると赤ん坊の時に大変だろうし、何も知らない方が早く向こうの常識とかに慣れると思って」
「確かにそうだよね。じゃあそれでお願い」
「わかった。じゃあまたね」そう言って彼は手を挙げた。そして、その手から放たれる光を受けて僕はこの世界に別れを告げた。