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廻る世界と星界竜  作者: 中野 翼
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待ち伏せ

こちらに戻ってから、野原から森に移動を開始した。最初は街によって行こうかとも思ったが、宿とギルドは後でまとめて行った方がいいと思い直し後回しにすることにした。森に向かう道すがらここ最近のことを振り返ってみた。森での一角ウサギと落穴モグラとの同時戦闘。野原での斬岩カマキリの襲撃。どちらも普通なら起こらないことだった。まず初めに、一角ウサギと落穴モグラが共闘していたこと。この2種は同じように森で暮らしてはいるが共闘するなんてことは聞いたことがない。ただたんに森を歩いていた僕達を見つけて両方とも同じタイミングで飛び出して来たんだとしても、両方とも終始敵意は僕達に集中していた。すぐ隣にいる相手には注意を一切向けていなかった。普通だったらありえない。生物変化型の魔物は自身の生存を優先する。その為、縄張りにいる違う種類の生物は敵として扱うのが基本のはずだ。なのにあいつらは隣を警戒すらせず、あまつさえ共闘までした。いったいどうなっているんだ。それに斬岩カマキリの方もおかしかった。あいつは、本来なら森の奥で体色を使って森に擬態し、不用意に近づいて来たやつに襲い掛かる魔物のはず。だが実際には、姿を隠せない野原で襲撃してきた。しかも、斬岩カマキリの保有スキルの内もっとも珍しい斬空波を所持していた。ただの偶然か。それとも何かが裏で糸を引いているのか?この可能性は以外に高いように思えた。一角ウサギと落穴モグラの共闘で操られている可能性が出てきたうえ、アルトが一人の時を狙って遠距離攻撃スキル持ちの斬岩カマキリが現れたのが気にかかる。普通なら、双剣士に遠距離攻撃なんてないから一方的にぼこられる。アルトがそうならなかったのは、斬岩カマキリと近接戦闘が出来るだけの身体能力があったことと、僕がすぐに合流したからだ。一人のままだとやばかっただろう。アルトが一人の時を狙ったのなら確実に何かある。ビットにはさっきああ言ったのは本心だが、僕が一人でいても襲撃されるかどうか様子を見たいのもある。これで襲撃があれば、もう偶然じゃないことが確定する。そうなったら、アルトを殺そうとしたやつがいることになる。そんなやつがいるならそいつを見つけて始末してやる!可愛い弟に害なすやつは徹底的に排除してやる。そのときの僕は自分が冷めた笑いを浮かべていることに気づいていなかった。黒幕がいた場合どんな報復をしてやろうか考えながら歩いている内に目的地にたどり着いた。森は相変わらず木や草が生い茂っていて、鬱蒼としていた。こういう森の中に斬岩カマキリがいることが普通なのを考えると、今日は一体だけじゃなくて複数体の斬岩カマキリを相手にする可能性も考慮しておいた方がいいかもしれないと思った。その場合は、どれくらいの破壊はありかな?斬岩カマキリは威力を抑えた電撃で黒焦げになったしなあ。下手な威力で魔法を放つと森を丸ごと消し炭にしちゃいそうだ。火や雷の属性を避けても、水や風でも押し流したり吹き飛ばしたりしそうだしな。もういっそのこと一定ダメージの魔法でも作成した方が便利かな?といっても、現実だとどれくらいまでがちょうどいいんだろう?魔物のランクや個体差も考えると体力とかも違いがあるだろうし、違う威力の魔法を何種類か作成した方が安心かな?それとも今から戦う魔物で実戦データをとりながら、戦闘中にでも作成しようかな。まあこれは余裕があったらでいいか。そこまで急いでいるわけではないからな。こちらが駄目なら自分のフィールドに相手を引きずり込んで戦えば周囲に被害も出ないし、相手の援軍が来ることもないからな。けれど、そのままでいいわけでもない。依頼が護衛とかだと、このては使えないから対策は結局は必要になるな。けれど今はこのぐらいにして、そろそろ森に入るか。僕は考えに区切りをつけて森に足を踏み入れた。今日は森の入口辺りじゃなくて奥まで行ってみようかな。そうした方が、相手がいた場合手を出しやすいだろうしな。そう決めた僕は森を奥へ奥へと進んで行った。森を奥へ進んで行くと、生えている植物もさらに増えていき、外から見たときよりもさらに鬱蒼と生い茂っていた。どれくらい歩いただろうか?初めは、道の上を歩いていたはずなのに今では生えている植物が多過ぎて地面自体が見え無くなっている。もう、どこかから魔物が襲い掛かってきてもわからないぐらい視界が遮れている。にもかかわらず、森に入ってから今だに魔物が姿を見せない。ここまで奥に来ればいくらでも魔物のテリトリーを通過しているはずなのに、影も形も見ないのはかなりおかしいと疑問に思った。だけど逆に考えれば、こんなおかしな状況を作りだしている何かがこの森にはあるという証明をしているともいえる。しばらく立ち止まってどうするか考えたが、やはり原因を知りたいと思い奥に進むことにした。そうしてしばらく歩いていると、森の開けた場所に出た。そこには、大量の魔物が待ち伏せしていた。一角ウサギが十匹、落穴モグラが十匹、斬岩カマキリが三匹、それと今まで戦ったことのない種類の魔物が三種類いた。一種類目は、緑色の体長三十センチメートルのいもむし、木喰イモムシ。数は五十匹。二種類目は、体長一メートルほどで鼻の横に鋭い牙を持っている猪。刺牙イノシシ。数は十匹。最後に体長三メートルほどの巨大蜘蛛。毒巣グモがいた。こいつは一匹だけだった。

「うげ!こんなに一カ所に集まってればそりゃ遭遇しないわけだ」集まっている魔物達を見て、僕の口から自然とうめき声が漏れた。木喰イモムシと刺牙イノシシは数はともかく、ランクは一角ウサギや落穴モグラと同じだから多分大丈夫だが、毒巣グモは斬岩カマキリと同ランクのうえ、毒の糸で獲物を捕獲して毒が回りきったのを確認してから補食するという面倒なやつだ。糸に捕まって、他の魔物に追い打ちをかけられるとさすがにまずい。封印が解かれて身体能力や魔力は上がったが、肉体強度まで上がっているわけじゃないことはこないだ斬岩カマキリと戦ったときに理解している。数で押されるとかなり不利だ。ビットを外したのは失敗だったかな。もういっそのこと森が全焼することを覚悟して、あいつらがこちらに気づく前に遠距離から焼き払うか。かなり物騒な考えが頭を過ぎった。

「アスト様」

ちょうどそんなことを考えている時に後ろから声をかけられた。

「うわっ!!もご」思わず驚きの声を上げてしまったがすぐに口をふさがれた。視線を口元にやると、茶色い毛に覆われた腕があった。視線をゆっくりずらしていくと、そこには従者モグラがいた。

「静かにして下せいアスト様!」

「もがっ、もがっ」僕は従者モグラが何故ここにいるのか聞こうとしたが、口をふさがれていてまともに喋れなかった。

「何が言いてぇんですかアスト様?」

やっぱり従者モグラには伝わっていなかった。その内段々苦しくなってきて、先に従者モグラの腕を退かしにかかった。かなりがっちりホールドされていたが、自分の方が腕力が強いらしく多少の抵抗感はあったが無事に腕を引きはがせた。僕は息をおもいっきり吸い込んだ。

「なにすんだよ!」僕は感情に任せて従者モグラに詰め寄った。

「しっ、声が大きいですぜぇアスト様」従者モグラは口に指を当てながらそう言ってきた。僕は待ち伏せされていることを思い出して慌て口を覆った。そうして、ゆっくりと後ろを振り返って確認した。幸いにも魔物達は気づかなかったようだ。僕は視線を従者モグラに戻して、改めて従者モグラがここにいる理由を聞くことにした。

「で、なんでお前がここにいるんだよ従者モグラ」僕は小声でそう問い掛けた。

「何言ってるんですか、後で合流すると言ったでしょうが」従者モグラも小声で答てきた。

「確かに言ってたけど、それは向こうでの話だろ。というかどうやって森の中の僕のいる場所がわかったんだ?」従者モグラもクリエイターサポートを持っているだろうから単独でこっちにこれたことはわかるが、野原にでてから森にこれても森の中にいる僕の場所なんて分かるはずがないのに、どうやってここにたどり着いたんだ?

「それは簡単ですぜぇ。転移の出現ポイントをアスト様の後ろに設定しただけですぜぇ」

「出現ポイント?」

「アスト様はご存知なかったんで?こちらのどこにいても向こうに行けるように、あちらからもアスト様が知っている場所になら自由に転移出来るんですぜぇ」

ガ~ン知らなかった。知ってたらわざわざ野原から森まで歩いて来なくてもよかったのに。だけど今はそんなことを考えている場合じゃない。今までの分はしょうがないと割り切ることにして気持ちを切り替えた。

「それはそうとアスト様。あの連中はなんですかい?」

「ここ最近の魔物のお仲間だよ。多分だけど」後半は状況証拠だけの為さらに声を抑えて言った。

「ここ最近ってぇっと、一角ウサギや落穴モグラ、斬岩カマキリも含めてですかい?」

「そうだよ!」僕は従者モグラに野原から森に来る間に考えたことを説明した。

「なるほど。確かに今の状況を考えるとアスト様のいうとうりあいつらは今までの同類の可能性が高そうでさぁ。それでアスト様あいつらをどうするんで?」

「ああ、従者モグラに呼ばれる前はちょうどそのことを考えていたんだ」

「で、どうするんで?」

「森を全焼させるのを覚悟で遠距離から魔法で焼き尽くすかどうかで悩んでるんだ。低ランクのやつらはともかく、斬岩カマキリや毒巣グモを一緒に相手にするのはかなりリスクが高いから森の被害にはめをつむって、高火力で一気に終わらせた方がいいかと思ったんだ」

「いやさすがにそれはまずいですぜぇ」

従者モグラははっきりとわかるほど顔をしかめていた。だが確かに従者モグラがそんな顔をする気持ちを僕も理解している。

「じゃあどうするんだ?」

「別に魔法にこだわらなくてもいいんですぜぇ」

「念動領域と身体能力でどうにかしろと?」

「違いますぜぇ。使うのは、ゲームクリエイターの方ですぜぇ」

「ゲームクリエイター?やっぱりあいつらをまとめてフィールドに引きずり込んで戦えばいいのか?」

「いえ、まとめて引きずり込むのは一回じゃ無理ですぜぇ」

「無理?なんでだ?」

「通常はアスト様と触れているものしか一緒に転移出来ませんぜぇ。フィールドを展開していれば話は違いますが、数が多いから何匹が逃げられる可能性があるんで今は除外しますぜぇ」

「じゃあどうするんだ?」

「任せてくだせぇ、アスト様にフィールドを使った一撃必殺技をお教えいたしますぜぇ。お耳を拝借ごにょごにょ」

「ふむふむ。よし!それでいこう」

そうして僕達は、魔物達を全滅させる準備を始めた。

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