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廻る世界と星界竜  作者: 中野 翼
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従者モグラ

今僕とビットは、家から歩いておよそ一時間の地点に来ている。

「ここがそうなのか?」

「はい、ここがフォークの素材となった金属のでる場所です」

そこには家や大樹の周りとは違い、茶色い地面が露出した大きな穴が空いていた。大体直径二十メートルほどの大きさがあるだろうか。穴の中を覗いてみると、底がどこにあるのかわからないほどに深かった。

「おかしいですね?」

ビットが疑問を口にした。

「どうかしたのか?」

「いえ、私が金属を採掘した時点ではこの穴の大きさはせいぜい直径十メートルほどだったのですが、倍近くに広がっています」

「穴が勝手に大きくなったてこと?」

「いえ、穴が大きくなった原因には心あたりがあるのですが、あっちからこちらに戻って来るのに30分もかかっていないのに、どうしてこんなに広がっているのかが不思議でして」

「それは多分、こっちの世界では一ヶ月近く経ってるせいじゃないかな?」

「一ヶ月?」

「ほら、向こうに出たときに言ったけど、時間をいじり直してなかったからあっちの一分がこっちの一日になってるんだよ」

「ああ、そう言われてみればそんなことをおっしゃっていましたね。それならば確かに穴がここまで大きくなっていることにも納得がいきます」ビットはうんうんと頷いている。

「それで、広がった理由の方には心あたりがあるんだろ?そろそろその理由を教えてくれないか?」

僕は、この穴が広がっている理由についてさっきから頷いてばかりいるビットに聞いてみた。

「そうでしたね。今から呼び出しますので少しおまちください」

「呼び出す?」

「はい、従者モグラ出てきなさい。アスト様がおよびですよ!」ビットは、穴の奥に向かって声をかけた。

「従者モグラ?」

「はい、ですが紹介は彼が来てからいたしますので少々おまちください」そう言ってビットは、視線を穴の奥に固定した。僕もビットの隣で穴の中を見ていると、何かが穴の奥で動いた。それは、少しずつこっちに向かって移動して来る。近づいて来るにしたがって、その姿が見えてきた。大きさは、ビットと同じくらい。見た目は、落穴モグラに近いが落穴モグラと違って手は小さい。代わりなのかはわからないけど、その手にはつるはしを持っている。サングラスをかけていて目は見えないので、顔だちはわからない。それから、この従者モグラもビットと同じように服を着ていた。ただし、執事服のビットと違ってこちらは、土がついているせいもあるだろうが全体的に茶色い作業着を着ている。観察している内に穴の側にいた僕達の近くまで従者モグラは来た。

「おう従者ウサギ。アスト様がおよびだそうだな」従者モグラは最初にビットの方に声をかけた。

「ええ、それと従者モグラ、今の私はアスト様より名前をいただきビットと名乗っています。あなたもこれからは、ビットと呼んでください」

「ビットか。了解した。それじゃあビット、アスト様にオレのことを紹介してくれないか」

「わかっていますよ。アスト様、これが私と同じようにアスト様のサポートをする為に生み出された従者モグラです」そう言ってビットを指して紹介してきた。

従者モグラは、ビットから僕の方に視線を移して自己紹介をしてきた。

「アスト様、お初にお目にかかる。オレは、アスト様に鉱物系素材の供給を行う為にこの世界が生み出した従者モグラだ。以後よろしく頼みます」

「こちらこそよろしく」ビットとは、印象が違っているけれどもやはり根本的な部分は同じらしい。

「それでビット、彼がこの穴が広がっている原因なのか?」「そうです。アスト様とお会いする前に、彼に例の金属の採掘を頼んでおきましたので。従者モグラ、採掘の方はどうですか?」

「おう、採掘は順調だ。頼まれていた金属以外の鉱物資源も一緒に採掘しておいたぞ。一ヶ月も来なかったから、かなりの量が採掘出来てるから確認してくれ」

「どこにありますか?」

ビットに聞かれた従者モグラは、今出て来た穴を指さした。「穴の中に置いてあるのですか?」

ビットは、疑問に思ったことを従者モグラに聞いてみた。

「おう、外に置いておくわけにもいかんので、保管庫を作成して入れてある」

「まあたしかにこの世界が安全だとはいえ、貴重品をその辺に置いておくわけにもいかないですからね」

「おうよ、アスト様にお渡しするものをぞんざいに扱うわけねえだろ。それじゃあアスト様、ご案内しますぜ」

「ああ、よろしく頼む」そうして僕達は、穴の中に潜って行った。穴の中は、外から見たときには気づかなかったが洞窟になっていた。いや、採掘をしているのだから坑道と言った方がいいのかもしれない。幅と高さは自分が余裕を持って歩けるぐらいある。壁には照明のたぐいはついていなかったが、壁の中から突き出している鉱物が淡く光ることで坑道内を照らしだしていた。従者モグラについて坑道内を移動していると、途中にいくつもの分かれ道があった。分かれ道は、僕達が行こうとしている道からみると上下左右に縦横無尽に広がっていて、どこまであるのかを想像出来なかった。

「従者モグラ、随分と採掘範囲を広げましたね」ビットは、少し呆れているようだ。

「おうよ!より良いものを採掘する為に、あっちこっち掘っていたらこんなになっちまってな。いらない分は今度埋めとくぜ」

「なんでここまで広げたんだ?」僕には、ここまで広げる必要があったのか疑問に思って聞いてみた。

「アスト様は、ゲームが好きだよな?」

「好きだけど?」従者モグラからあまり関係のなさそうなことを聞かれて戸惑ったが、とりあえず素直に答えておいた。

「それならわかってもらえると思うが、この世界はアスト様の好きな要素で構築されている。表面はアスト様が思い浮かべたとうりの要素でできてはいるが、見えない部分についてはアスト様の無意識が反映されているんだ」

「僕の無意識?」何が言いたいのかわからない。

「そう、無意識。アスト様は無意識に向こう側の世界の法則ではなく、自分の好きなゲームの法則を適応してこの世界を作成された。だから、この世界での採掘というのはどこかにある素材出現ポイントを見つけることが重要なんだ。そこさえ見つけちまえば、後はそこを定期的に見に行けば素材が手に入るというわけでさぁ」

「なんか本当にゲームみたいなんだけど」だけど、それだと少し気になることが出来た。

「なぁ、従者モグラ。ゲームならデータだから出来るんだろうけど、一応現実であるこの世界でそんなことが可能なのか?」

「可能だぜ!この世界の全てはアスト様の魔力で形作られているから、魔力が素材出現ポイントに流れ込んでランダムに素材の形になるんだぜ!」

「ランダムなんだ」自分のことながらなんでランダムなんかにしたんだろう。別に同じものを出現させてもいいだろうに。

「それで縦横無尽に坑道を広げた結果、どれくらいの素材出現ポイントが見つかったんだ?」

「全部で五十箇所見つけたぜ」

「たくさんあったな。それじゃあ、どのくらいで再出現するんだ?」

「大体一日といったところだ」

「それだと、結構な量を溜め込んでるんだろうな。どんな種類があるんだ?」

「色々あるが、アスト様の無意識が反映されているものばかりで特殊過ぎてなんともいえないな。自分の目で確認してくだせぇ」

「わかった」僕は、どんなものを無意識に作りだしたのか気になって、ドキドキし初めた。そんなことを考えてる間も僕達は坑道を進み続けた。そうして、今までにはなかった大きさ扉の前にたどり着いた。

「ここが保管庫だぞ」

そう言いながら従者モグラは、扉を開けた。そこには、色とりどりの金属や鉱物が山積みにされていた。光沢のあるもの、自ら光っているもの、逆に光沢がないものや光を吸収しているものもある。それから火や水を出しているものに、時々形を変えているものもある。

「本当に特殊なのがいっぱいあるな!」

「アスト様、忠誠のフォークの素材以外にもたくさんの素材があるようですし、アイテムボックスに収納して上でいろいろと試してみてはいかがでしょうか?」

「そうだな」僕は保管庫の中にあったものを全てアイテムボックスの中に収納した。

「僕とビットは上に戻るけど、従者モグラはどうする?」

「オレは、今日の分を取り終わってから合流するぞ」

「わかった。それと従者モグラ」

「なんです?」

「お前にもビットみたいに名前つけてもいいか?」

「かまわないぜ」

「ありがとう。じゃあ、グラットなんてどうだ?」

「了解だ。今日からオレの名はグラットだ」

「じゃあグラット、僕とビットは先に上に行ってるな」

「おう!オレもすぐに行く」

グラットに見送られて、僕達は、坑道を後にした。

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