第5章 (8)
グレイズ先生の第一回目の授業は各種族特徴を細かく説明することに終始した。
来週種族間のは対立の歴史について軽くおさらいをして、再来週から特に近年よく見られるタイプの事例を元に授業をするそうだ。
ちなみに、渡り人は学術的には全ての種族と異なるものとして扱われるらしい。
生まれが異界であるという点だけでなく、その身に宿す膨大な魔力、また強靱な身体、驚異的な身体能力、しかしこの世界に生まれた者が持ち得ぬそれらの能力は多くの場合只一代のみで失われる。
次代にその能力が継承されることがほぼないが故に、交配こそ可能なものの、一代限りの特別種として認識されているようだ。
講義を終えて教室を出る。
少し早めに終わったが、フェクトたちはもう集まっているだろうか。
とりあえず昇降口まで降りてはみたものの、探し人の姿はない。
そういえば――
「待ち合わせ場所って何処だっけ?」
さて、約束をしたことは覚えているのだが、何処で待ち合わせるかを決めていただろうか?
「――記憶に、ないな。」
どうするべきか、此処でこのまま二人を待つか、それとも外に出てセムを待つべきか。
「さて、どうするかね。」
徐々に子供たちで賑やかになりつつある昇降口の端っこで、私は一人、途方に暮れた。




