第5章
明けて翌朝。
さあ今日も学校へ行くぞ、と思いながら神殿の正門に向かうと、ナイルだけでなくその後ろには昨夜の話にあった二人がそこにはいた。
遠目にも分かるあの姿は間違いない。
只でさえ身長が高く目立つナイルの後ろにさらに大きな二人組み。
赤毛のツンツン頭ことイドゥンさんと、灰髪のフィズさんの二人だ。
記憶の中の通り、やっぱりツンツンしている。
二人ともどこかのRPGにでも出てきそうな雰囲気だ。
まあ、そもそもこの世界そのものがファンタジーな世界ではあるけれど。
二人も雰囲気は、典型的な昔ながらのRPGの職業的に言うのならイドゥンさんが盗賊、フィズさんが暗殺者のような感じだ。
もっとも服装は特に黒だったり暗色系というわけではない、あくまでイメージの話だ。
まあ、夜ならばともかく日中の護衛でそんな格好をしていれば返って目立ってしまうのだから当然と言えば当然である。
だが、普通にしているととても目立ちそうな二人だけれど、陰ながらの護衛なんてものをやり遂げてしまうのだから、あながち間違ったイメージ得もないのかもしれない。
そんなことを考えながら彼らの方へと近づいていく。
それにしても、直に護衛して貰うのは帰りだけと聞いていたけれど、どういうことだろう?
ナイルは朝食の時には何も言っていなかったのだが。
まさか朝からあの二人を引き連れて登校しろとかいうのではないだろうな、と一瞬暗澹たる思いに駆られる。
表だって連れて歩けば、ナイル並、あるいはそれ以上に目立つ二人である。
そんな登校をしたら一発で一般人ではありませんと公言しているようなものではないか。
だが、そんな感情はおくびにも出さずに挨拶を交わす。
「イドゥンさん、フィズさん、おはようございます。
それと、いつもありがとうございます。」
「おはようございます、マレビト様。
どうかお気になさらず。」
「おはようございます。
ここだけの話ですが、貴方の護衛は人気職なのですよ。
ですから、気遣いは無用です。」
風体こそどこぞの冒険者、と言った感じだが二人はれきとした神官である。
神殿がそもそも国の行政機関であるのだから、たとえ国同士の戦争が無いこの世界と言えど、その代わりにある魔獣などの被害に対抗する為の武力は当然のことながら保有している。
彼らはそういった荒事を専門とする部署に所属する人間――便宜上人と呼ぶが、種族は聞いてないので正確なところは不明――だ。
とりあえず、どうして今ここに二人がいるのかとナイルを見上げる。
「ナイル?」
「昨日確認はしましたし、このように目立つ二人です。
必要ないかと思いましたが、もう一度会っていた方が良いかと思いまして。」
確かに顔に覚えがあるとはいえ、実際に会ってから日が経っている。
似たような背格好の人間を連れてこられたら間違う可能性が無かったともいえない。
でも、今こうして会っていれば、確実に分かる。
「そういうことですか。
お手数をおかけしますが、今日も宜しくお願いします。」
「承りました。
では、帰りは我々のうちのどちらかが行くまでお待ちください。」
「なるべく、先にいくつもりではありますが、何があるかは分かりませんので。」
「分かりました。」
「それでは、行きましょうか。
行きはいつもどおり、我々は陰に控えさせていただきますので、お気になさらず。」
「はい、それでは宜しくお願いします。
ナイル、行ってきます。」
私が神殿を出る時には既に二人の姿は見えない。
一体どうやっているのか、もしかしたらこれも魔法を使ってのことかもしれない。
さて、今日の講義は楽しいものだと良いな。
昼休みには約束が会ったりもするし。
なんだかんだで、意外と再びの学生生活満喫している気がする。
これで周りの平均年齢がもう少し高ければ文句なしなんだが。
まあ、それは高望みと言うものだろう。
さあ、今日も頑張ろう!




