第5章
「ユーリグ、後ろにいるのはフェクトです。
知人の息子と言うか……友人の弟、と言うか、友人、と言うか。
まあ、そういう関係です。」
何故かフェクトを友人と断言するのは憚られてつい遠回りな紹介になったが、どうもむくれているようだったので少しずつ修正してみると満足したようだった。
私としてはまだフェクトとは友人、と言う気はしないのだが。
あまりに年が違いすぎると言うか。
まあ、そんなことはさておき。
「フェクト、こちらはユーリグです。
同じく今日入学だそうです。」
ユーリグのことは紹介しようにもあまりに情報が少ない。
そんな感じで終わらせてみれば。
「ルディアの友達のユーリグだ。
宜しく、フェクト。」
何故かそうユーリグがフェクトに言った。
私は君も友人と思っているわけではないんだけどなぁ。
「フェクトだ、こっちこそ宜しく。」
何だかお互い相手を見定めようとしているみたいだ。
うん、男のこって良く分からない。
だからといって女の子のことなら分かるってわけじゃないけど。
大学時代の友人には女失格の烙印押されたくらいだしね……。
ああ、何かむなしくなってきた。
「さて、それじゃあ私は帰りますね。
そうだ、食事の相手が欲しいなら、二人で行ってはどうですか?
もう、知らない者同士って訳でもないでしょう?」
では、また。
そう帰ろうとしたらフェクトに再び呼び止められた。
「ちょっと待った、結局明日は!?」
「あぁ、すみません、忘れてました。」
すっかり忘れていたことを言われて思い出す。
さてどうしようか。
食事の時間に子供のお守りというのもな、と思うと悩んでしまう。
だが、私一人で屋台を見て回るのは効率が悪そうでもある。
迷っていると追加の情報が耳に入る。
「兄ちゃんも一緒なんだけど!」
「セムがここに来るんですか?」
「うん、兄ちゃんも明日は学校あるって。
本当は今日も来たかったらしいけど、今日は講義無いからってギルドに行ったよ。」
確かに一昨日ギルドで会った時は今日も仕事だと言っていた気がする。
でも、そうか。
明日はセムが来るのか。
なら私が子守をしなくてもフェクトはおとなしくなるはずだ。
でもって、彼なら美味しい店は知っていることだろう。
「分かりました。
なら、明日は一緒に食べましょう。」
「ん、兄ちゃんにも言っとく。」
「……なあ、そのとき俺も一緒にいれてくんない?」
フェクトとの話がまとまると、ユーリグが言ってきた。
「私は良いですよ。」
といって、フェクトを見れば。
「おれも良いよ。
じゃ、折角だし、一緒に今から屋台行こうぜ。」
「ありがと。」
ほっとした様に笑顔がこぼれたユーリグはかなり可愛かった。
っていうか、知り合いいないって言ってたから実はかなり心細かったのかもしれない。
あまりそういう風に見えないから気にしなかったけど、もっと気にかけてあげれば良かった。
本当、私の対人スキルって低いなぁ。
若干の後悔を胸に仕舞い、今度こそ別れの挨拶をすると学校をでた。
話をしていた分、短くなってしまった昼休みを取り戻すかのように子供二人は校舎を飛び出していった。
因みに、セムからの手紙は予想には掠りもしない、お勧めの美味しい屋台リストだった。




