第4章
文具店を出る頃には既に日は中天を過ぎていた。
買い物をしていて気が付かなかったが、どうやら昼時の終りを告げる七の鐘はもう鳴った様だった。
昼時の始まりである六の鐘から七の鐘までの間は町の人通りが幾分か減るのだが、今は既に活気が戻りつつあった。
静かに文具店を見て回れたのも、店の雰囲気というだけでなく街の喧騒が薄れていたお陰だったのかもしれない。
何事かに集中している間は忘れていても、思い出した途端に主張し出すのが食欲というもの。
まだ昼食をとっていなかったなと気付いた瞬間にお腹がすいたように感じるのだから不思議だ。
今日は一人で屋台街を巡ろうと思っていたのだが、彼等は食事はどうするのだろう?
「そろそろお昼にしようと思うんだけど、三人はどうする?」
「私たちのことは気にしないで下さい。」
優等生な発言はセム。
「俺、ガレット食いたい。」
自分の希望を即述べたのは言わずとしれたフェクト。
そして、何も言わず、近くに出ていた人形焼きっぽい屋台、というか出店?を指差したのがゼナゥだ。
これくらいの年のとき、私は食事は家か学校でするものだったからその裁量が子供に任されている、というのは不思議な感じだ。
「えーと、神宮大路の屋台街に行ってみようと思うんだけど、どう?」
賛成が得られたので、とりあえずゼナゥが欲しがった人形焼きだけ買うと、神宮大路ヘと向かった。
因みにそのお金はセムが払った。
自分より一回り以上も下の子供に奢ることさえ出来ないなんて……。
やっぱり、経済力って大事だと思う。




