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マレビト来たりて  作者: 安積
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第4章

未だ鳴り止まない応酬を聞きながら、お茶を飲む。

始めてみる光景に思わず固まってしまったが、何とか人心地ついた。


「びっくりしたでしょう?」


隣に座る、お茶を持ってきてくれた女性がそう微笑みかける。

なんとなくそのまま着いて来ちゃったし、お茶ももらっちゃったんだけど、そういえばこの人は誰なんだろう?

……あれ?


・知らない人についていってはいけません。

・知らない人から何かもらってはいけません。


ふとそんな言葉が浮かんだが、とりあえず、気にしないで置こう。

これって、小さい子に言うことだし。

うん、私は大人だ。

だから(?)大丈夫だ。

それに、この人は私を知ってるようだし……。


知人の振りをする知らない人は特に危ないと、小学生の頃の担任の言葉が頭の中をよぎったが、気にしてはいけない。


そう、知らない人なら知ってる人にしてしまえば良いのだ。

まあ、さっきカウンターの向こうから飲み物持ってきたから、たぶん職員の一人なのだろうけど。


「びっくりしました。

 ところで、貴方は誰ですか?」



「ああ!

 ごめんなさい。

 そういえばこうして顔をあわせるのは初めてだったわね。

 いつも窓口の裏から見てたから、つい初めて話すって事を忘れていたわ。」


やっぱり、職員の一人という予想は外れていなかったみたいだ。


「私はタクス・オルド。

 いつもはここの事務をしているわ。

 この間は私の休暇中に書類を減らしてくれてありがとう。

 急に実家へ戻らなくちゃいけなくなったんだけど、帰ってからのことを思うと憂鬱だったのよ。

 きっと、書類が山のようになっているんだろうな…って。

 帰ってきてびっくりよ、予想の半分以下、それどころかほとんどがちゃんと私が手をかける必要が無いくらい整理されていたんだもの。

 だから、ずっと貴方にお礼を言いたかったの。

 なかなか時間が合わなくて言えずにいたのだけれど、今日来てくれて良かったわ。

 本当にありがとう。

 今後もぜひ手伝ってくれるとうれしいわ。

 いえ、もうこの際ここに就職しちゃわない!?」


オルドさんはほわほわとした外見にそぐわず、一息にそこまで言い切った。

肺活量すごい。

というか、この人が脳筋だらけのギルドを陰で支えている、いわば縁の下の力持ちだったとは。

でも、ここで働いているんだから、こんななりをしていてもやっぱり相応の実力者なんだろう。

人は、見かけによらないものだ。

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