第3章 (10)
魔法が使えるかもしれないと知り、喜んで。
年齢制限で使えないかもしれないと知り、落ち込み。
でも潜在魔力が多いから使えるかもと言われ、再度喜び。
実際使えて、なおさら喜び。
だが、結局私には派手な大規模魔法が使えないことを理解するのに、そう長い時間は必要なかった。
加護の有無がもたらす魔法への影響についてはいまだ解明されていないとのことだが、それでも基本的には加護がある属性の魔法は使いやすいと言われている。
ナイルのように土の精霊の加護を持ちながら風魔法が得意で更に火も使えると言う人もいるけれど。
強力な水霊、水竜とも呼ばれるアトルディアの加護を持つ私は水との相性が良いだろうとのことで、水の魔法の練習ばかりやっていた。
室内では魔法で発生した大量の水の処理に困るからと言う理由で、大規模なものは行わず、週一度の休みの日を待って、広い中庭で挑戦してみたものの、見事に不発。
ならば、と少量ずつ出していった水を一つにまとめようとしたら、まとめて行く先から形を崩し始め、最終的には局所的大雨となって降り注いだ。
結果、どうせ水をまいてくれるなら、もう少し時間を考えていただきたい、と庭師の一人には怒られてしまった。
面目次第もない。
ユニットバスになれた日本人にはとても広く感じる共同浴場の湯船でさえも出来たのはお湯をすべて浮かせることだけ。
しかもある程度の高さを超えたら一気に崩落、あたり一面水浸しとなってしまった。
そんな幾回の失敗を繰り返し、どうやらこれはどうにもならないことらしい、と理解するに至った。
これで私もチートの仲間、素敵な異世界ライフが待っている、と思っていた私の細やかな野望はこうして打ち砕かれた。
私程度はいくらでもいた、とまでは行かないが、やはり上限があるのが痛い。
身体が成長しきれば、存分に潜在魔力を使いこなせるようになるはずだ、とナイルに宥められはしたが……。
私の成長スピードを考えると暗澹たる気持ちになる。
私が大人になれるのって一体いつのことだろう……。
自由に扱えるのはコップ1杯の水。
まあ、実際にはカップ10杯くらいまでの水でも扱いきれるとは思うけれど、それだけの水、あっても使い道に困るのでカップ1杯の水でいつも練習している。
私が他の人より得意と言えるのは少量の水を使った魔法の制御力のみ。
この町に暮らす限り、町の外の依頼を受けたりしない限りは、必要になることもないだろうけれど、、何かあったときのために何か攻撃手段でもあれば良いように思う。
せめてウォーターカッターくらいは使えるようになりたいな、と言うのが今の私の目標だ。




