第8章 (6)
「アカシェ……どうなってるの?」
掠れて声にならぬ声で問いかければ、それでも人ならぬ彼には聞き取れたらしい。
「しゃべるなと言うに。」
言うことを聞かぬやつだと、返る声は呆れを含んだものだったけれど、優しいく触れる手は私から離れることはなかった。
喋るなと言う声に目で問いかければ、頭の中に声が響いた。
『聞こえるだろう?』
驚きに目を見開けばいたずらに成功したみたいなにやりとした表情でアカシェが私を見下ろした。
『喋らなくても聞こえるから声を出そうとするな。』
魔法を知って以来のファンタジーな出来事に出すなといわれた声が思わず漏れそうになる。
こういうことがあると、本当にここが異世界なんだと強く感じる。
「お前は精霊契約の名付けのあと、まあ、久々に倒れたわけだ。
自分では分からないかもしれないが、まだ熱は下がっていない。
あと数日は無理はするなよ。」
『なんで、あかしぇは声に出すの』
本当に聞こえているのかを確かめるためにも、ふと浮かんだ疑問を尋ねてみた。
「耳は聞こえるんだから別に問題ないだろう?
これは負担が大きいからな、双方向にしないで住むならその方が良い。」
うん、ちゃんと聞こえているようだ。
負担、というのはアカシェと言うことはないだろうから私のためなんだろう。
会話がちゃんと出来ることを確かめた上で、一番気になっていたことを聞いた。
『あのこは、どこ?』