第8章
はたして、私は世界に囚われたのか、それとも飲み込まれたのか、溶け込んだのか。
マイア。
私の精霊、私の半身。
ふつふつと湧きあがる感情に、一瞬浮かびかけた困惑も流される。
こんな、強い感情を私は知らない。
契約を結んだ精霊とのその絆は双方の命が続く限り絶えることはない。
精霊術士の多くが正式な契約を結びたがる理由も、それと同数の精霊術士が仮初の契約しか望まないのも両方分る気がした。
そして、精霊が術士にそれを望むわけも。
こんなにも深く繋がり、全てを曝け出すようなそんな繋がりは、きっと人同士では得られない。
確かな証を望む者にとっては、これは垂涎ものだろう。
それと同時に、このつながりの強さに恐れを抱くものがいるのも分かるのだ。
もしこの半身を失ってしまったならば、けっして有り得ぬ訳ではないその可能性を考えることすら厭わしく思う。
仮の名前で呼んでいた時には、ここまで強い感情は抱かなかった。
家族同然のペット、くらいの認識だったと思う。
てっきり精霊との契約というのは、使い魔のようなものかと思っていた。
でも、これはそんなのじゃない。
もしも魂というものが実在するのだとして、その根源から作り変えられる、二つでありながら一つでもあるような、根っこの部分で私達は繋がって、いや、溶け合っている。
そして、精霊を通して、私はこの世界とも繋がっていることを、今、私は感じていた。