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第8章
ぶるりと、手の中にいた蛇もどき、否、マイアがその身を震わせた。
頭の方からかすかな光が毛先を走るように全身をなぞり、尻尾の先を越え、消えた。
そして、感じるのはずしりとした存在の確かな重さ。
「……マイア?」
見た目は変わらない。
けれど、確かな存在感がそこには在る。
その感触に、名付けという契約が確かに完了したことが分った。
「マイア。」
するりと擦り寄ってくるその感触は、毛先はひんやりと冷たいのにその下には確かな熱があるのが感じられる。
相変わらず、言葉はないけれど、それでも以前より確かな繋がりを感じている。
なんとも言葉にしづらいのだが、精神のどこかで繋がっているような、そんな感じだ。
自分の精神が、自分だけのものではなく、その中に別の誰かのかけらがあるような。
それでいて、その他者は異物ではなく溶け込んでいる。
今までとは別次元で、この世界に囚われたと、そう感じた。