第8章
とは言うものの、そう簡単に名付けが出来るならこんな事態にはなっていないわけで。
「ぽち。たま。しろ。みずち。くちなわ。」
試しに思いつくままに口に出してみるも、違うと私自身が思う言葉では意味がない。
少なくとも、蛇もどきという呼称は見た目には合っている。
だから、私はその名前をこの精霊を示す言葉として呼ぶことが出来る。
でも、それを“名前”だと私が思うことが出来ていないから、問題になってきている。
この精霊を示す言葉ではあっても、蛇もどき、というのはよくて渾名であって名前ではない。
「どんな、名前が良いんだろうね。」
「ルディア、授業中はあのように言いましたが、出来るのならば早いほうが良いですよ。
この精霊は理性を持ち合わせている高位の精霊だからこそ、この程度の状態ですんでいるのです。
それにもかかわらず、彼は貴方に姿を隠した上で我々に威嚇的な態度をとっていた。
つまり、貴方の制御下を離れつつあると言うことです。」
気をつけなさい、を授業が終わってすぐ私を呼び止めた先生は話してくれた。
時間はもう、残り少ないと言う事だ。
以前のように先送りにすることはもう出来ない。
今が最後のチャンスだと言うのなら、しっかりと向き合わねばならないのだ。
名付けに躊躇しているその原因とも。