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マレビト来たりて  作者: 安積
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第8章

全員に語りかけるようなそれが、私へ向けた言葉だというのは、明白だった。




精霊が使う力は、人のそれと違い基本的には限界がない、と言われている。

まあ、人の中にもマレビトや神族のような例外もいるけれど、それはあくまで特殊な“例外”だ。


だからこそ、限界のある人という種がより強大な苦難に立ち向かう術として精霊術は確立してきた。

この世界には、ゲームや小説にあるような魔王や魔族といった人への敵性存在はない。

でも、世界そのものが人にとっては敵だとも言えた。

今でこそ一定の安定を得られてはいるが、それも実際には世界の僅かな区域でしかないのだ。

世界の多くは未だ人跡未踏の地、特に好んで人に敵対するわけではないけれど、ただ在るだけで人にとっては脅威でしかないために魔物と呼ばれる存在が今も辺境と呼ばれる地の外には溢れている。

その昔は、何処もかしこも気候が荒れ、魔物が徘徊していたという。

それでも人がこの世界に残れたのは、魔法というものが見出される以前から、精霊達が自分が好いたものにだけとはいえ力を貸してきてくれたからだ。


私はこの世界で目覚めてから後、この城郭内の街に保護されていたから、向かいの話どころか今の状況でさえ外のことを直接知っているわけではない。

知識や人の言葉でしか知らないそれが、どれだけ過酷なのか、それを想像することしか出来ない。

それでも、そこが地球の、それも日本のようなやさしい世界ではないことくらいはよく分かっている。


そんな世界でも人か生きていけるよう手助けしている存在が、どんな力を持っているかなんて、それが暴走を引き起こしたらどうなるかなんて、考えるまでもないことだというくらいは、私にも分っているのだ。




「そう、精霊の力は人を圧倒する。

 つまり、暴走してしまったなら、人にそれを止める術はない。

 だからこそ、私達は精霊との関わりを大切にするし、慎重にならねばならない。」


クラスの誰かが答えた模範解答に、先生は頷き、話を続けた。


「制御しきれない巨大な力は脅威でしかないからだ。


 さて、精霊術に於いて制御し損ねると言うのはどういう場合だろうか。

 そうだね、それじゃあ最前列の子たちに右端から聞いていこうか。」


指名された子供達は慌てたように、あるいは堂々と自信を持って答えていく。


「召喚が失敗した場合。」「契約の失敗か契約の不備。」「契約者の浮気。」「相性の問題。」


次々に上げられるのは、以前授業でも習った過去の実例の中でも特に多いものだ。

一つ一つを肯定しながら、時折補足を交えつつ、先生は話を進めていった。


「では、今回の暴走の原因は何処にあると思う、ルディア?」

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