第7章
行列はなおも続く。
精霊たちの数は目に見えて増えている。
目に見えない精霊たちもまだまだ沢山いることは、見ようとしなくても気配を感じられるほどになっていた。
いくら精霊の力が増す夜だとは言っても、どうしてこんなにこの街に集ってきているのだろうと、不思議に思っていたのだが、それも離宮の姿が目に映るようになってくると謎は解けた。
微かではあるが、神殿で聞いたのと同じ歌が聞こえてきたのだ。
神殿で聞いたときは、祈祷か声明のようだったけれど、ただ一人が奏でるこれはまさしく歌だった。
風に乗って呼びかけるその声に、精霊たちは惹かれてやってくる。
聴覚ではなく、別の感覚に直接触れてくるようなその声は、肉体という鎧を持つ私たちにさえ影響を与えるのだから、それが精神体である精霊であれば、その受ける影響は言うまでも無い。
それを誰が歌っているのか、すぐに分かった。
この世界の"生き物"にそんな影響を与える声が出せるのはこの街にはそもそも一人しかいないのだから。
まるで伝説のセイレーンの歌声だ。
ふらふらと、酔ったかのように、或いは本当に酔っているのか、精霊たちは不規則な軌道を描きながらその声に引き寄せられる。
精霊には基本性別はないし、歌っているのも信じられないくらいの美形とはいえ男だけれど。
神殿ではただ聞いているだけだったけれど、その心地よい歌声に釣られる様に、私の口からも同じ旋律がこぼれ出た。
自分でも、何故そんなことをしたのか分からない。
何だか地に足の着かないふわふわした気分で、私は鼻歌でも歌うかのように歌詞のよく分からないそれを口ずさんでいた。
時折、来たれと、来よと、呼びかけるその歌を、誰にとはなしに歌っていた。