第7章
私たちが聖堂から向かったのは、神殿から離宮へと続く神宮北大路に出る神殿の北門だった。
他にも、神宮南大路を南に進み、その後東西に分かれエグザーダナの街を半周するグループや、東西の神殿大路へと行き、そこから離宮へと向かうグループも居る。
だから、私たちは最も距離が短いグループと言えるが、実は一番初めに出発して、先頭は当然最初に着くが、最後尾は全体の一番最後にならねばならない、つまり非常にのんびりと衆目環視の下、進まねばならないというグループだ。
そのトリを勤めさせられるというのは、ある意味で嫌がらせかと思わないでもない。
私が北門に着いた時には、先頭を行く神官長は既に経った後で、小さく、その陰が見えるだけだった。
周りの皆が歩いていく中、ただ一人、否、ナイルと二人ユニコーンのような麒麟のような、四足の獣に牽かれる輿に乗るのは気が引けて、思わずため息がこぼれた。
それに気付いてか気付かずか、ナイルがぽつりと話し出した。
「懐かしいです。
まさか、自分がこの席に並ぶ日が来るとはあの時は思いもしませんでしたが。」
毎年ある筈の祭りに対する言葉にしては幾分不可解なその台詞に、続きを促すように首を傾げればナイルはどこか遠くを見つめるように優しく微笑んだ。
「以前、ファーもここに座ったんですよ。
私はただ沿道からその姿を垣間見ただけでしたが。」
ファー、ナイルが傾倒している日本生まれだというマレビトだ。
私は、その本名を知らない。
彼女が居たからこそ、私はナイルという守護者を手に入れられた。
彼女が、私を守ることを彼に望んだから。
ナイルは、その願いをかなえ、今ここにある。
彼が、どれほど彼女を慕っていたか、彼女を思い出しているその眼差しだけでよく分かる。
そういえば、彼から彼女のことを聞くのはまだ二度目なのだった。
彼のその後の人生を決定付けてしまうような人、一体どんな人だったのだろう。