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マレビト来たりて  作者: 安積
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第7章

聖堂には既に多くの神官が集まっていた。

大勢の人がその場にいるにも拘らず、無音というわけではないが静かな時間がそこには流れていた。

私は案内されるままに、祭壇近くに立つナイルの元へと向かう。

正直、人が多すぎて私の身長ではナイルが何処にいるかなんて見えもしなかったのだけれど、彼の元へ行くのだと聞かされていたので、間違いないだろう。

無事、彼の元までたどり着くとエメラさんたちは静かに末席の方へと去っていった。

代わるようにやって来たのは、武官としての正装をしたイドゥンさんとフィズさんだ。

最も私の警護期間が長い二人が、今回の私の警護役として選ばれていた。

武官の正装は、他の神官たちに比べて何と言うか、派手である。

装飾性の高いベルトで帯剣しているだけでなく、あちこちに飾り紐があったり、そもそも着ている長衣の生地の色自体が白と金と赤を主体にしているって時点で派手だ。

普段とは違う、真面目な表情で私の前に跪き、挨拶の口上を述べる。

私は、それに鷹揚に首肯して返した。

やがて堂内に満ちていた微かなざわめきさえも消え去ると、神官長を始めとした高位の神官たちによる祈りが始まった。

それは、まるで歌のようでもあり、例えるならば声明が一番近いかもしれない。

あれも宗教音楽の一つであるから、あながち間違った例えでもあるまい。

同じように音程が上下する幾つかの旋律が重なり合い不思議な和音を生み出している。

それは昼に行われた祈祷とは違い、歌でありながらまるで誰かに語りかけるような、そんな温かみを持った祈りだった。

そう、これは神への祈りとは違う、と理由は分からないながらも理解した。


ふ、と肩に僅かな存在の重みを感じた。

そこには確認するまでも無く、先ほどまでは姿を消していた蛇もどきが居ることが分かった。


ああ、そうか、と気が付いた。


これは、神ではなく、精霊への語り掛けであるのだと。

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