第7章
「忙しいのに、ありがとうございます。」
「いいえ、お気になさらず。
私の伝え方が悪かったのだと、散々言われました。」
日本人的気質から思わず頭を下げてしまったのだが、自分の方が悪いのだとナイルは言う。
散々、とかなり強調していたが、一体誰に何を言われたのだろう。
どうやら、一緒に来た二人だけではなさそうだ。
「早速ですが夜も遅いので、光舞祭の件についてもう一度説明させていただきますね。」
と、ナイルは以前にもしてくれた説明を繰り返してくれた。
光舞祭は夏至の祭りで1年の半ばを迎えたことを祝うものであり、かつ、神に感謝や祈りを捧げたり、願掛けしたりするという、日本で言うなら七夕と正月とお祭りを足したような行事であること。
そして、その中の一環として神殿に所属する者とその外の一部の者が、神事として神殿から離宮までを精霊の光や魔法の光を手に歩いていくのだという。
それは以前聞いたものと全く同じで……。
「どこか分からないところはありましたか?」
真顔でそういうナイルに、二人は頭を抱えるように唸った。
「ナイル上級神官殿、それでは説明が不十分です。」
「何処がです?」
「祭りの概要はともかくとして、その後です。」
「ですから、何が足りないというんですか?」
多分、ナイルは真面目に本気で言っているのだと思う。
この人は、冗談は嫌いだ。
「あんなもの、ただ大路を歩くだけじゃないですか。」
私たちは、認識の違いというものを漸く理解したのだった。