表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マレビト来たりて  作者: 安積
148/197

第7章

戦利品を手に話している内容を何とはなしに聞く。

どうやらソレムの腕はギルド以外にも人気らしい。


「ハルさんは、そんなにいっぱい何を買ったんですか?」


実は緊張のあまりちゃんと店を見ていなかったりする。


「そうねえ、ここで説明するのもなんだから、一旦うちに戻りましょうか。

 もう今日はお店はあらかた見てしまったものね。」


折角、神殿の傍なんだから、あなたたちは一旦自分の荷物を置いてきなさい、と言うハルディアさんの言葉にわずかな躊躇を見せたものの、すぐに戻ります、といって二人は神殿へと走っていった。

今、私はハルディアさんと一緒に市の中に設けられた休憩スペースで二人が戻ってくるのを待っているところだ。


「さてと、お邪魔な保護者も居なくなった事だし。」


早速、買ったばかりのポーションを清涼飲料水代わりに飲んでいると、そうハルディアさんが切り出した。


「なんですか、これ?」


渡されたのは小さな巾着袋だ。

中には何か硬そうなものが入っているようだ。


「さっき、黒髪の子から貰ったわ。

 沢山買ったからおまけだ、って言われたけれど、どうやら貴女宛みたいよ。」


黒髪というとゲルドだろうか、セムだろうか。


「とりあえず、開けてみなさい。」


ハルディアさんに促されて袋を開ける。

おまけで貰ったという小袋には、飴が幾つかと小さく折りたたまれた紙が入っていた。



折りたたまれた紙を広げてみると、それは手紙だった。

そこのは、この間の説明が足りてなかったことを詫びる言葉と、祭りが終わったらまたギルドのあの部屋に来てもいいということ、そして、どうやって知ったのか精霊術の勉強を終えたことを祝う内容が簡潔に書いてあった。

自然と頬が緩むのが分かった。

私は、彼らから愛想をつかされたわけでも、避けられたわけでも、ましてや忘れられていたわけでもなかったらしい。

なんだか、私一人が、勝手に気まずくなって、近付きがたく思っていただけのようだ。

手紙から顔を上げると、微笑ましそうに見つめてくるハルディアさんと目が合った。

どうやら、彼女は実情を知っていたみたいだ。


「知っていたんですね、ハルさん?」


「さあ、何のことかしら。」


はぐらかして答えてくれそうに無い、彼女を追及するのは諦めて、飲みかけの瓶に口をつけた。

相変わらず、どうしたらあの不味いものがこんなに美味しくなるのか不可思議な改良ポーションが、買い物と勉強と心労で疲れた体と脳を癒してくれる、そんな感じがした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ