第7章
戦利品を手に話している内容を何とはなしに聞く。
どうやらソレムの腕はギルド以外にも人気らしい。
「ハルさんは、そんなにいっぱい何を買ったんですか?」
実は緊張のあまりちゃんと店を見ていなかったりする。
「そうねえ、ここで説明するのもなんだから、一旦うちに戻りましょうか。
もう今日はお店はあらかた見てしまったものね。」
折角、神殿の傍なんだから、あなたたちは一旦自分の荷物を置いてきなさい、と言うハルディアさんの言葉にわずかな躊躇を見せたものの、すぐに戻ります、といって二人は神殿へと走っていった。
今、私はハルディアさんと一緒に市の中に設けられた休憩スペースで二人が戻ってくるのを待っているところだ。
「さてと、お邪魔な保護者も居なくなった事だし。」
早速、買ったばかりのポーションを清涼飲料水代わりに飲んでいると、そうハルディアさんが切り出した。
「なんですか、これ?」
渡されたのは小さな巾着袋だ。
中には何か硬そうなものが入っているようだ。
「さっき、黒髪の子から貰ったわ。
沢山買ったからおまけだ、って言われたけれど、どうやら貴女宛みたいよ。」
黒髪というとゲルドだろうか、セムだろうか。
「とりあえず、開けてみなさい。」
ハルディアさんに促されて袋を開ける。
おまけで貰ったという小袋には、飴が幾つかと小さく折りたたまれた紙が入っていた。
折りたたまれた紙を広げてみると、それは手紙だった。
そこのは、この間の説明が足りてなかったことを詫びる言葉と、祭りが終わったらまたギルドのあの部屋に来てもいいということ、そして、どうやって知ったのか精霊術の勉強を終えたことを祝う内容が簡潔に書いてあった。
自然と頬が緩むのが分かった。
私は、彼らから愛想をつかされたわけでも、避けられたわけでも、ましてや忘れられていたわけでもなかったらしい。
なんだか、私一人が、勝手に気まずくなって、近付きがたく思っていただけのようだ。
手紙から顔を上げると、微笑ましそうに見つめてくるハルディアさんと目が合った。
どうやら、彼女は実情を知っていたみたいだ。
「知っていたんですね、ハルさん?」
「さあ、何のことかしら。」
はぐらかして答えてくれそうに無い、彼女を追及するのは諦めて、飲みかけの瓶に口をつけた。
相変わらず、どうしたらあの不味いものがこんなに美味しくなるのか不可思議な改良ポーションが、買い物と勉強と心労で疲れた体と脳を癒してくれる、そんな感じがした。