第7章 (7)
彼らとの久々の再会は、なんということはなしに終わった。
というよりも、何も、無かった。
一瞬、驚いたような表情を見せただけで、後は通常と思われる営業用スマイルで、事務的な会話だけで買い物を済ませて、それだけだ。
まあ、向こうは沢山のお客さんに囲まれて忙しそうにしていたから、立ち話なんてする余裕も無かったのだろうけれど。
買い物そのものもあっけなく終わり、後ろから押し寄せる女性陣に押しだされるように、店の前をあとにした。
ハルディアさんは置いてある商品をとりあえず全種類一つずつ買い、イドゥンさんとフィズさんは2、3種類を数本ずつ買っていた。
私はといえば、飲みきりサイズのものを1本購入しただけで、会話らしい会話すら出来ず仕舞だった。
あれだけ緊張していったのに、あっけなく、ただ通り過ぎただけに近い感じだった。
相変わらず、どうしたらあの不味いものがこんなに美味しいジュースになるのか不可思議な改良ポーションを飲んだら、買い物と勉強と心労で疲れた体と脳を癒してくれる、そんな感じがした。
「相変わらず凄いところだったわね。
でも、お陰で色々と手に入ったわ。」
と、一息つくのはハルディアさん。
確かに、30分近く並んでいたわけだから、その混み具合は相当だ。
そして、買った荷物を入れたバッグを両手に下げているが、かなり重たそうだ。
と思ったら、自分も片手に荷物を持ったイドゥンさんが片方を持つようだ。
「本当に沢山買いましたね。」
と、ずっしりとした重さに呆れ顔。
フィズさんは自分が買ったものを片手に、もう片手には私を抱いたままだ。
いい加減、降りたほうが良いような気がするのだけれど、人込みが凄いからこの方が安全だ、と言われては確かに人に埋もれてしまう自覚があるだけに何も言い返せない。
「ソレム君が入ってからは、品質も上がったでしょう。
実は毎年楽しみにしてたのよ。」
「ああ、確かに。
彼が神殿入りしてくれれば我々としても助かるのですけどね。
残念ながら、工房入りを希望してるらしいですよね。」