第7章
「これだけの人を見るの、この世界に来てから初めてですよ。」
ハルディアさんから出題される合間を縫ってそう呟けば、そうでしょうね、と同意の声が返る。
この祭りの市全体も普段の市とは比べるまでも無い規模だが、この一角は特に人が多い。
例えるならば、市全体が渋谷のスクランブル交差点くらいの人込みで、この一角は、夏と冬の某祭典の入場待ちの行列の一部を切り取ってきたかのような感じと言えば分かるだろうか。
まあ、性別は圧倒的の女性が多いのであのむさ苦しさは無いが。
いくら祭りで街の外からも人が着てるにしても、一体どれだけ居ると言うのだろう。
「彼女達は、いつもはあそこに居るのですよ。」
と、イドゥンさんがにこやかに教えてくれた。
その指の指す先は――。
「離宮、ですか?」
「ええ、彼女達の半分くらいは離宮の侍女や神官、もしくはその見習い達ですよ。
彼女達にとって、今日は彼らに直接出会える数少ない機会ですからね。
普段、会いたくてもあえない分、こうして押し寄せているわけです。」
「そうなんですか。
詳しいですね、イドゥンさん……。」
「妹が離宮に居るものですから。」
こんなところで意外な事実が判明。
イドゥンさんは妹がいたらしい。
いや、意外でもないか、この面倒見のよさは下に兄弟が居てもおかしくは無い。
そういう意味ではフィズさんも兄弟は良そうだ。
次回更新前に加筆予定。