第7章
「ハルさん、本気の本気ですか?」
「当然でしょう。
ここまで来て逃げるのはなしよ。」
ああ、私はどうやらとんでもない思い違いをしていたようだ。
まさか、これほどとは。
午前中、ハルさんと買い物を楽しみ、一通りの店を見終わったあとで、残すは神殿近くの店だけになった頃、「まずは腹ごしらえね」と随分食事に気合を入れていたハルさんに、もうお腹いっぱいで食べきれないと言うほど色々と食べさせられた。
食べ過ぎでふらふら、食事直後で眠くもなってきたところを、ハルさんに引きずられるようにやって来たのは、彼らの店の前だった。
前といっても、彼らの姿は綴れ折の行列の彼方、フィズさんに抱っこしてもらって漸く人垣の向こうにそれらしき影が見えるだけだ。
私たちがのんびり食事をしている間に、イドゥンさんとフィズさんは交互に荷物をハルディアさんの家まで持っていったので、今は二人とも手ぶらだ。
とりあえず、彼らまでの距離を視認したところで、フィズさんに下ろしてもらう……筈が、このままでは人ごみに埋もれてしまう、と言われ抱っこ継続中だ。
「ハルさん、本当にまだ並ぶんですか?」
「何言ってるの、残り半分も無いじゃない。
ここまで来て諦めたら、それこそ時間の無駄じゃないの。
さあ、次の問題よ。」
ため息交じりに尋ねてみても、当然との返事。
この遣り取りを繰り返すのも既に何度目かだ。
既に並び始めて数十分が経過している。
待ち時間の暇つぶしにと、この数日間で学んだことや、学校で学んだ精霊に関する問題を出題され続けている。
人ごみも辛いが、そろそろ脳もオーバーヒートしそうである。
何故こんなことになっているかと言えば、変人の巣窟の住人達の店が余りに繁盛しすぎている為だ。
これだけの人――圧倒的に女性が多い――が一体どこに居たのかと思うほど、長い行列を作っており、その行列の先頭付近で慌しく動き回る彼らの姿が目に入る。