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マレビト来たりて  作者: 安積
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第7章 (4)

ハルディアさんのもとへ通い始めて数日、何というか、精霊たちにお願いするコツが分かってきたような気がする。

まあ、人に対するのとそう変わらないと言うことだ。

ただし、人に多するときはオブラートにくるむようなことも歯に衣着せずに率直に願う必要があるわけだ。

大切なのは素直であること、そして飴と鞭だ。

やって欲しいことを明確にお願いし、精霊が暴走してしまったときは怒るのではなく、悲しむ。

とにかく悲しむ、これが一番精霊には効く。

怒ったところで、彼らはそれを新種の遊びと勘違いしかねないからだ。

感情を激高させるのではなく、冷静に、悲哀する。

目に涙を浮かべたりすれば効果抜群だ。

それはもう精霊にたいする嫌がらせなのではないかと思ってしまうほどに。

しかし、コツを分かってきたとは言え、それはある意味で私にとって苦行にも等しかった。

何せ、地球にいた頃は、自分の感情を抑えて抑えて胸の内に沈めて、自分ですらその思いが合ったことを忘れてしまうように感情を抑えて過ごしてきた私だ。

ストレートに感情を表現すると言うことがこんなにも大変であったとは想像だにしていなかった。


()が悲しみであるならば、(報酬)は喜びである。

願ったとおりに叶えてくれたならば、心から喜び感謝する。


精霊には上辺だけの言葉は通じない。

強い感情を伴わない言葉は、彼らにとってただの音の羅列でしかないあのだ。

それが、精神のみの、肉体を持たない生物としての彼らの特性であった。


そんなこんなで、感情を露わにしなければならない日々を過ごし、精神的に困憊、彼の変人たちのことを考える余裕もないままに、ようやくハルディアさんから辛うじて合格点をもらえるようになった時には、気が付けばの光月の祭りは既に始まって二日が過ぎていた。




「さあ、そろそろコツもつかめてきたようね。

 今、私に教えられることはもうないわ。

 後はタキ次第よ、頑張りなさい。」


「ありがとうございました。

 ハルさん。」


何とか精霊の暴発が起きないくらいにまで制御が出来るようになった、というか、ただ単に暴発する心配がなくなるくらい、つまりは精霊がある程度満足するくらいに頼り捲くっただけのような気がしないでもない。

うん、まあ、精神衛生上そういう考えはあまり良くなさそうだから、深く考えるつもりはないのだが。


「そういえば、もう1週間以上も経つけれど、その子の名前は決まったの?」


日向で丸くなっている毛むくじゃらを指してハルディアさんが言う。

その毛むくじゃらはいわずと知れた、例の蛇もどきの実体ある精霊だ。

実はまだ名前が決まっていない。

名前を呼ばずとも意識を向ければ理解してくれるし、実体があるとは言ってもその本質は精霊と同じであるから意思も通じる。

普段はそれで済んでしまっているがために、ぴったりな名前が浮かばないということを言い訳に名付けを済ませていないままである。

数日共に過ごすうちに、毛だと思っていたものが実際には羽毛であることなども判明するということもあり、一瞬それにちなんだ名前が浮かばないでもなかったが、あまりその名が相応しいようにも思えなかっために、やはり名無しのままなのだ。

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