第6章
正直な話、困った、というのが本音だ。
ピンチ、なのかも知れないけれど、どうも緊迫感にかける。
門の外で必死になっている彼らには悪いが、空気こそ濃いものの、この空間が悪いものだとは感じられない。
何と言うか、悪意を感じない、寧ろ好意に満ちているような。
まあ、私が既に何者かによって洗脳されているという可能性もないわけではないだろうが、何故かここは“安全だ”という確信のようなものがある。
そして、なんとなくだけれど感じているこれは、アカシェがいつも私を呼ぶときのあれに似たもの。
誰かが、私を呼んでいる。
その誰か、は私の敵ではない。
そんな気がするのだ。
私を呼ぶ誰かがいるのであれば、きっとこの事態を引き起こしたのもそのヒトだろう。
なら、そのヒトに頼めば何とかなるんじゃないだろうか?
というか、そのヒトでなければ事態を代えることは出来ない気がする。
となれば、まあ、この先に行ってみるしかないよね!
とはいえ、心配してくれている彼らをそのまま置いていくわけにも行かず、下手をすれば洗脳されてると思われかねない。
どうやら声は聞こえていないようだし、と少し考える。
出した結論は……。
鞄から出したノートに見開きで大きく文字を書く。
“危険は感じないので、予定通り行ってみます。”
それを彼らに見せると、慌てて荷物を探り始めた彼らの反論が来る前に踵を返した。
今日のことがナイルやエメラさん達に知られたら、また無茶をして、危ないことをして、と叱られそうな気がするけれど、でも、こうすることに何の不安も覚えないのだ。
もしこの予感が外れていたら――その時には次があるかは分からないけれど――、次からは直感を信じるのはやめておこう。
今回は、この勘を信じることにする。
かつては磨かれていたであろう石畳、荒れ果てても尚残っているその道を進んでいくと、やがて錆びたアイアンワークが良い雰囲気を演出している、まさに廃園の呼び名に相応しい庭園が目の前に現れた。