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マレビト来たりて  作者: 安積
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第6章 (5)

通称、『秘密の花園』――おそらく、この命名は地球人の誰かだろう――、廃園とも呼ばれるそこは、離宮にも程近い、かつては大きな屋敷があったというその敷地内にある、打ち捨て去れた庭園だ。

ヒトの手が入らなくなってからも数多の花々が咲き乱れるその場所は、少なくとも100年以上の長きに渡り放置されてきたらしい。

離宮近くにそんな廃墟を残し続けることには問題も多く、何度も潰すことが計画されたものの、精霊が大量出現すると言う珍しさから、様々な研究機関や神殿からの嘆願、そして最終的には神族の命により、今尚存続している。

防犯上の観点から庭園から離れていた母屋や他の建物こそ取り壊されたものの、塀に囲まれた広大の敷地そのものが手付かずのまま残されている。

建物を壊すことで、精霊達に何らかの影響を与えて染むのではないかと危惧されたものの、それは杞憂に終わり、今では敷地全体に蔓延るように広がった植物達に付いて行ったかのように、敷地内のどこにでも現れるようになったと言う。

それでも、もともと始まりの庭園であった場所が最も出現率が高く、ついで季節の花々が咲く場所に現れることが多いといわれている。

因みに、ヒトの手こそ入ることはなく放置されているが、敷地内への出入りは自由であり、子供の遊び場になっていたり、まるで肝試しのように精霊を見に来る若者達がいたり、精霊研究に従事するものたちが訪れたりと、それなりにヒトの出入りは多いそうだ。

全て、同行の皆からの受け売りである。

私の認識は、そういえば、こちらの世界に来たばかりの頃にハルディアさんから何かそんな場所があるようなことを聞いたような気がするな、程度のものだったのでとても助かった。


場所は神宮大路に突き当たりで交差している離宮前小路、文字通り離宮に面した通りの東の端の区画だった。

日本的に言うならば、エグザーダナにとっての鬼門に当たる位置である。

離宮にも幾つかの区画が間に入るものの、隣り合っている区画――歴史を辿れば、それらの区画もかつては離宮の一部であった時代もあったようだ――である為、確かに防犯上はここを放置するのは危険だという意見が出ていたというのにも納得である。


私の足でなら、1時間以上はかかったであろうここに辿りつくのに、果たしてどのようの手段がとられたか。

――抱っこされて来ましたよ、アルシュさんに。

まあ、確かに一番体格良いし、わたしなんか抱えたところでまったく何の疲れも感じてないようでしたけどね。

私と似たような背格好のタウィーザはどうしてるのかと思えば、普通にアルシュさんたちの走ってるんだか歩いてるんだか分からないようなペースについてきていた……。

本当、もう色々と泣きたい気分だ……。


確かに体格差は相当ありますからね、一緒に歩いてたんじゃ遅いでしょうし、馬車を利用するのも面倒だ、と言う気持ちも分からないではないですよ。

でも、皆さん本当にそろそろヒトの年齢とか色々無視しすぎなんじゃありません!?

この世界に来てから、いろんなヒトに抱き上げられてばかりいる気がするのは、気のせいなんかではない筈だ……。


「それでは予定通りということで。

 ルディア、宜しくお願いします。」


「……はい。」


だから、この時幾分悄然とした気持ちで朽ちかけた門を潜った私に、非は無かったと断言したい。

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