第6章
「じゃあ、そういうわけで。
まずはルディアが一人で廃園に入る。
それで見えるようになれば良し、ならなければ今回の依頼は諦めということで。」
それで良いかと、最終確認をするセムに皆が頷く。
「そして、ルディア。
恐らく、ここでなら精霊を認識することが出来るようになる筈です。
それで、もし精霊を認識できたなら、あなたに気付いてもらえた精霊達が一気に押し寄せると思います。
その時、できる限り冷静に、彼らに接してください。
彼らは絶対にあなたに危害を加えることはありませんから。」
「うん、分かった。」
「それから、俺達が近付きますから、逃げないように彼らを説得してください。
それが出来れば、この依頼は半分くらいこなしたようなものです。
その先は、まあ運次第ですね。
では、行きましょう。」
笑うセムに先導され、手を振るレグに見送られながらギルドを後にした。
結果を出せるかどうかは運次第。
そうセムが言うにはわけがある。
この依頼、出されてからもう20年近く解決したものがいないのだ。
何でも、大量に現れるくせに、その精霊達は人が一定以上近寄ると一瞬にして姿を消してしまうのだと言う。
今まで、目撃例こそ数え切れぬほどだが、接触例は一例もない。
精霊との直接の接触がなくとも調査は出来るだろう、と思われたのだが、実際には精霊の身ではないヒトビトにとっては何ら他と違う要素を見つけ出すことは叶わなかった。
かくなる上は、精霊に聞く事だが、近寄れば消える精霊に何も聞くことも出来ず、他の精霊達に聞いても何も答えないとなっては手の打ちようもなかった。
そこに登場したのが私、と言うことらしい。
未だかつて類を見ないほどの精霊からの好かれ具合。
精霊達は基本的に自分達を感じ取れるヒトを好む。
それが、全く認識していない段階でありえないほど好かれている私が、もし見えるようになったなら――?
計画ともいえないような計画だが、うまく行けば儲けモノ、位の感覚でいるようだ。
成功すれば私は単位がもらえるし、彼らも実績を手に入れられる。
失敗したところで、私が単位を諦めれば済むだけで、彼らには何のデメリットもない――依頼の受付から数年経っても解決が見られなかった場合、その依頼は失敗してもペナルティを受けないと規則に明記されている。そしてこの依頼はそれに該当しているからだ――。
だから、皆ある意味でお遊び気分であり、私に付き合ってくれているだけとも言えた。
単位の為にも、手伝ってくれる皆の為にも、良い結果を出せるといいんだけど。
さあ、頑張りますか!
……ま、ただそこに行くだけなんだけどね。