第6章
そんなこんなでレグと話をすること十数分、そろそろそのもふもふの誘惑に我慢できなくなりそうな頃、アルシュさんがやってきた。
呼び捨てでいいって言われても、見た目年上には思わず"さん"付けしたくなっちゃうよなぁ。
「早いな、ルディア。
もう来てたのか。」
「おはようございます。」
「はよー、あーちゃん。」
「ん、珍しいな。
レーグラがこの時間に起きているとは。」
「流石の僕も一日以上寝てれば目も覚めるよ。」
「そうか。」
……なんか、今変なの見なかったか、私。
"あーちゃん"?
アルシュがあーちゃん?
それを何でもないことのように平然と会話している……。
ファベルの方がより厳しい顔つきだが、アルシュだって相当無骨な顔立ちだ。
二人とも美形ではあるが。
それなのに、その彼をして“あーちゃん”?
「……あーちゃん?」
「何だ?」
思わず声に出してしまっていたらしい。
っていうか、それで返事しちゃうんですか、アルシュさん!?
「っっすみませんっ、ごめんなさい、なんでもないです、アルシュさん!」
「そうか?」
慌てて謝るも、それだけ……。
ここ、予想以上に変な人の集まりだったのかもしれない。
今更ながらこう――
「――ああ、そうだ、ルディア。
昨日も言ったが、アルシュで構わん。
もし言い難いようだったら、こいつと同じようにあーちゃんでも構わないからな。」
「は、はい。
アルシュ。」
そんなこと、ニッコリ言ってくださらなくても良いですから。
腹黒系ではない、優しげな微笑みに余計居た堪れなくなる。
て言うか、この人も私の年齢勘違いしてるだろ……。
誰でも良いから早く来てくれ。
そう願わずにはいられなかった。
果たして願いが聞き届けられたのかどうかは別として、ドアが再び開くのにそう長い時間はかからなかった。