第6章
まずは座るといい、そう言われて昨日と同じ席に座らせてもらった。
まだ他のみんなは来ていないらしい。
「よいしょっと」
掛け声と共にレーグラさんが高めの椅子によじ登る。
丁度、テーブル越しに同じくらいの目線だ。
レーグラさんがしっかりと椅子に座りなおすのを見計らって、先ほどのことを謝った。
「先ほどはすみません、ネコなんて言ってしまって。」
「ん、気にしない、気にしない。
間違う人は多いから。
僕らは狩猫族、でも通称ネコマタ族って言う方が知られてるかな。」
「猫又?」
「うん、そう。
ほら、尻尾が二本あるでしょ?」
と、ローブの裾を持ち上げて二本の尻尾が現れる。
確かに猫又の名にふさわしい。
その耳と耳の間に生えている短い角を除けば、だが。
「昔話に出てくるネコマタって言うのに似てるって言うから、そう名乗るようになったらしいよ。
他の国だと、ケットシー族って名乗るとこもあるみたい。」
「……そうなんですか。」
渡り人がマレビトと呼ばれるのと同じことか。
地球人ってかなり文化的な影響力強いのか?
そんなことを考えていたらレーグラさんがいきなり謝ってきた。
「こっちこそ、昨日はごめんね。」
「何のことですか?」
謝罪される理由も分からず尋ね返せば。
「見苦しいものを見せちゃって……。」
と、部屋の隅を指す。
そこは機能はゴミも本も一緒くたにごちゃ混ぜに積み重なり、腐海と化していたように記憶しているのだが、今ではきれいに片付いている。
あれだけ乱雑だった空間をたった一晩でよくここまできれいにしたものだ。
背の低い本棚に大量の整然と本が詰め込められ、その前には巨大な……巨大な猫つぐらが……。
あれはもしかしなくとも……。
「……あの、もしかして、レーグラさんてここに住んでらっしゃるんですか?」
「レグで良いよ、るーちゃん。
うん、ここに泊まることも多いかな。」
一昨日まで試験とレポートの提出が続いてて、片付ける時間なかったんだよね、と申し訳なさそうに耳を掻いた。
「ここって、そんなことまで出来るんですね……。」
なんでも、飲食店(屋台含む)は多いし、近くに銭湯もある。
終日営業だし、学校に匹敵する(ジャンルによってはそれ以上の)蔵書を誇る大きな図書室も完備。
勉強するには困らない場所なのだとか。
まるで、大学のサークル棟のようではないか、と思ったのはあながち間違いでもないのかもしれない。
2011/08/07 一部改稿