第6章 (4)
いつもより早めに家を出たお陰か三の鐘がなる前にギルドへ到着した。
隣にいるナイルは……あまり良い顔をしていない。
どうも、私が『若き賢人の間』の面々と付き合うことを良くは思っていないようだ。
彼らが別名『変人の巣窟』と呼ばれていることもその原因の一つらしい。
イシャーラみたいに神官見習いの人もいるのに不思議な事だ。
「兎に角、何かあれば近くに護衛の誰かが必ずいるから助けを求めるように」と、最後まで念を押して、後ろ髪を惹かれるように何度も振り返り振り返り、神殿へと戻っていった。
目立つ集団だろうとは思ったけれど、一体どんな悪名を持っているのやら……。
昨日のうちに手続きは済ませてあるので、顔見知りの人々に挨拶だけして3階へと向かった。
「……お邪魔しまーす。」
誰か来ているか分からなかったが、静かに扉を開ける。
まだ慣れないので、恐る恐る部屋に入ると奥の方から声がした。
「おはよーう。」
どことなく眠そうな、間延びした声はまだ聞いたことのないものだ。
もしかしてレーグラさんか、とまだ薄暗い部屋に目を凝らす。
だがよく見えない。
「おはようございます。
……もしかして、レーグラさんですか?」
「うん。
おはよう、るーちゃん。」
るー…?
「えっと……。」
「あぁ、ちょっと待ってねえ。
今窓開けるから。」
そんな声と共に、明るい日差しが部屋の中に飛び込んできた。
ローブ姿の誰かが、窓の木戸を開けている。
逆光で輝く真っ白な毛が、外から入ってきた風にふわふわと揺れている。
その頭の天辺には……二対の角と、一対の獣耳。
振り返ったその顔は……。
「あれ?
ビックリしちゃった?
魔法士の勉強してるレーグラだよ。
昨日は寝ちゃっててごめんね。」
……。
「……ネコ?」
レーグラさんは、エメラルドの瞳の目をぎゅっと細め、ヒゲをさわさわさせて……多分、微笑んだ。