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マレビト来たりて  作者: 安積
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間章

流石に離宮の人は私の顔を知っていたようで、特に何の問題もなくすんなりと離宮内へと通された。

そんな防衛体制で良いのか、と思わず聞いてしまいたくなるくらいに。

衛士から連絡を受けた宮の人がやって来ると、下にも置かぬ扱いで離宮の奥の方へと案内された。

……正直言って、凄く居心地が悪い。

慇懃無礼、というわけではない。

慇懃だけれど。

彼らからすれば私は神が遣わした存在なのだろうから、そういう扱いになってしまうのかもしれないけれども。

ただの人間でしかなかった、しかもかつての災厄のある意味で遠因となっていた私にそういう態度をとられても……困る、非常に。

これだったら、子ども扱いされる神殿や、時々拝まれることもあるけど気さくに接してくれる町の人たちの方がずっと良い。


(マレビト)でこれなのだから、アカシェ(神の裔)はさぞや大変だろう。

ほんのわずかな時間いるだけでもそう思うに余りある場所だった。

離宮(ここ)はとても居心地が悪い。

アカシェはだから時々ここを抜け出してくるのかもしれない……。




恐らく、離宮の中でも執務を行ったりするのとは異なる、公よりは私寄りだろう応接室へと通されて、監視なのだか護衛なのだかよく分からないけれど警護の人と二人で残された。

……気まずい。

この部屋まで来る途中、たいていの人には慇懃に対応されたけれど、通りがかりに睨み付けてくる文官らしき人も居たりで、漸く部屋で落ち着けるのかと思いきや何も言わない人と々部屋に閉じ込められるとか……。

これ、実は嫌がらせだったりするのだろうか。

向こうは仕事だから当然なのだろうけれど、私にだけお茶が出されているのも気まずさに拍車をかける。

フィクションではそれなりに読んだり見たことのある光景だけれど、その中に自分がいるとなると違和感は半端ない。

結局、出されたお茶に手をつけることもせず、微妙な緊張感を孕んだ空気の中で、動くに動けず、自分で呼んだんだから早く来やがれアカシェ、と念じ続けた。


果たして願いは通じたのか、否か。

硬直した体が凝りを訴え始めそうになった頃、閉ざされていた扉は開かれた。

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