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ガリ勉優等生・山本博士の霊障事件手帖  作者: 淡雪みさ
FILE 2 理科室の声

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闇 一


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 出口が見えない。左右も上下も分からない。黒い膜のような闇が、視界にまとわりついて離れない。俺はその中心にただ、ぽつんと立ち尽くしていた。


 ――動けない。


 足に何か重たいものが絡みついているような、空間そのものが俺の自由を許していないような感覚だ。呼吸すらままならない。肺に入る空気が重く、どこかぬめついていて気持ち悪い。


「……ふふ」


 耳の奥で、誰かの笑い声がした。

 そっちを見ようとしても首が動かない。代わりに、足元から這い上がるようにその気配が近づいてくる。


 ――いる。ここに、俺の他に何かが。


 ぬるりとした存在感が、闇の中でかたちをとる。


「ようやく話せるようになったね」


 声がした。まるで骨と骨をこすり合わせるような、乾いているのに湿っている、そんな声だった。

 ぼんやりと浮かび上がる白い輪郭。顔のような、顔じゃないような歪んだ笑みの形。

 瞳は真っ黒で、そこに俺が映っている。ニヤリと笑う唇の端が、ゆっくりと釣り上がっていく。嫌な笑み。胸の奥が冷たくなる。


「お前、誰だ……?」


 そう問う俺の声は、自分のものじゃないみたいに掠れていた。

 その存在はなにも答えず、まるで猫でも弄ぶように、首を傾げてこちらをじっと見つめてくる。


「いい目をしていたよ。君は悪意に取り憑かれて、闇の底に沈んでしまった。……そんな君が、愛おしいんだ」


 ぞくりと背筋が冷える。

 言葉にしがたい気味の悪さが、皮膚の上を這う。息をするたびに、身体の中に何か異物が入り込んでくる気がして、吐き気がした。


「ここから出せ! 俺はこんなところにいたくない! 博士に会わせろ!」


 ここは、どこだ。俺はどうして、こんな場所に。


 不気味な視線がずっと俺を縫い止めている。



「あの子に会おうとしていないのは君だろう?」




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