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幻想の始まり

 森奥深くにある寂れた洋館。古びてはいるが立派な洋館だ。しかし全ての窓が内側から何かに遮られており内側を伺うことは出来ず、全体的に暗い雰囲気が漂っている。

 普段は静けさが支配するその場は今だけは騒がしい音がこだましている。



 屋敷の中では必死に少年少女が廊下を駆けていた。

 少年は背に気絶した少女背負い、ヘッドライトが照らす光を頼りに前進し続けている。

 少女は手に持ったライトを後ろに向け、しきりに背後を警戒しながら走っている。


「まさか!!本当に吸血鬼がいるなんて驚いたわ!」


「言ってる場合か!なるだけ早く距離取らねぇとまたアレが「ジャンプして!」ぁっぶねぇ!!」


 少女の掛け声と同時に少年は跳ね背後から飛んできた‘それ’を避けた。足元スレスレを飛んできた‘それ’はまるで血が固まってできた剣のように見えた。


「しかも!!バトルファンタジーよろしく血の剣まで使ってくるなんてね!!」


「それが現実なんだからほんとに笑えねぇ!!」


 廊下を勢いよく曲がると背後を通り過ぎ、空を切った剣が壁に突き刺さる。少しでも遅ければ直撃していたタイミング。剣は深々と突き刺さっており、直撃すればひとたまりもないだろう。

 一息つくまもなく今度は正面から剣が飛んでくる。


「しゃがめ!」


 少年が叫ぶと2人は咄嗟に背を低くした。剣は2人の頭上スレスレを通り過ぎ、間に合わずに切り落とされた髪がヒラヒラと舞う。


「このままじゃジリ貧だ!どっかの部屋に入るか!?」


「袋小路よ!理想はそのまま外に出ることだけど…っ!」


 しかし状況はその理想を許してはくれない。前方、後方、どちらにも剣が現れる。ご丁寧に高さがズレていて上下に避けても直撃する挟み撃ち。

 少年は咄嗟に近くの扉を開き、少女が少年を押し込むようにぶつかって無理やり部屋に転がり込む。間一髪、剣は背後を通り過ぎ、鋭い風切り音を響かせた。


「扉が内開きで助かっ……っ!」


 安心したのもつかの間、ふと前方を見上げると無数の剣が取り囲むようにこちらに狙いを定めていた。


「あーーもう!どーすんのさぁ!これぇ!!」


 少年の顔が絶望に染まり、悲鳴がこだました。

 なぜこのような状況になっているのか。それを説明するには今朝まで時間を遡る必要がある。

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