4話 紅蓮の髪
宮村がリングを出ようとしたその時、周りがざわついているのが分かった
振り返るとさっきまで倒れていた少女が立ち上がっている
しかもさっきまでと様子が違う
茶色がかった黒髪は血液のように真っ赤に染まり、目は赤く光りこちらをまっすぐに見つめている
「コスプレか?そんな変化したところで怖くはないぞ?」
実際にそうだった。これまでも瀕死になってから変わるやつはたまにいた
少女はぐしゃぐしゃになった自分の腕を見つめ、ぐっと力を籠めると腕はギュルンと元通りに再生した
グーパーと腕の感覚を確かめるとこちらに向かって真っすぐ飛んできた
宮村はさっきと同じく反射で少女を弾き飛ばした
さっきと同じでまたすぐ立ち直って怪我をした腕を見ている
そしてまたすぐにギュルンと再生した
少女の瞳はまたまっすぐこちらを向いている
「何回来ようと同じことださっさと諦めな」
そう言ったはいいものの心臓が少しざわめいている
少女がまたこちらに飛んできた
反射ではじき返すが、さっきと違い吹き飛ばない
宮村は衝撃ではじけ飛んだ
頬に激しい痛みを感じる
少女を見ると左手がボロボロになっている
「左腕を犠牲に殴ってきやがった…!」
宮村は口の中に異物の気配を感じた
吐き出すと白い石のようなものが床に転がった
「奥歯が折れたか」
新人に不覚をとる、それは現役隊員にとってこの上ない屈辱を与えた
大きく息を吸いフゥーと吐き出す
口の中は血の匂いと味が広がっている
「こいよ、本気でやってやる」
とっくに腕が治っている少女は俺が立ち上がるのを待っていた
宮村がさっき少女にそうしたように
彼女はまた向かってくる
左腕、右足、右腕、左足
攻撃が途切れないよう的確につぶれてもいい四肢を選んで飛んでくる攻撃は
当たればそのどれもが致命傷になるだろう
その威力は攻撃を弾く度に潰れ、捻じれ、曲がる彼女の体が物語っている
痛みは感じているはず…
それなのに彼女の口角は少しずつ上がっていた
「チッ、俺の嫌いなタイプだ!」
開いた瞳は瞬きもせずまっすぐこちらに向き
攻撃は止まず彼女の張り裂けた皮膚からは攻撃のたびに鮮血が飛び散り
彼女の髪をより一層赤く染め上げた
1分?10分?長く続いた攻撃は突然ピタリと止まり彼女は距離をとった
‐「やめだやめやめ。これ以上傷つくのは見たくない」
気付くと髪と瞳の色は元に戻っていた
「…なかなかやるな、侮ったことは謝る。この部隊に歓迎しよう」
宮村がそう言って手を差し出してきた
「え、なに言ってんの?まだ試合は終わってないでしょ」
そう言って手を払いのける
「は?何を言って…」
「いいから、今度はそっちの番でしょ?
よけないからさっさと攻撃して来きなよ」
俺はそう言って顎で挑発をした
「俺は君の実力を把握したし最初の行動に対する謝罪もした
これ以上何をするっていうんだ!」
宮村はそう言ってきたが関係ない
「え、だって散々手足壊してくれたじゃん。それに対する報復がまだだよ?
それともなんですか?攻撃を仕掛けて負けたなんて言えないから私から来いってこと?
なんでも女性に求めるなんてモテないと思うよ?」
「…今更撤回は無しだからな」
どうやらクリティカルだったようだ
「今はゆっくり休みな、マリ。後で特訓だ」
「何をボソボソ言っている、まだ試合中だぞ!」
そう言って宮村が飛んできた
「なるほど、反射を足から床に使って飛んできたのか
よく考えられてるけど足りないな」
宮村の勢いはマリから1mほど前でピタリと止まりそのまま空中に静止した
「何をした!?」
「敵に情報を教える馬鹿がいるか。それを考え、予想し、対策する事が戦闘の基本だ。
それにその位置、すっごい殴りやすそうだけど」
宮村がハッとして慌て始める
「ま、まて、やめろ!」
マリはニコッと笑う が、すぐに鋭い顔に変わった
まるで温度が無い目、しかし惹かれるその顔に一瞬見入ってしまった
「絶殺 天打」
そう言って大きく踏み込むと宮村の溝うちに拳が撃ち込まれる
宮村はとっさに反射で身を守るが
「…なぜ!?押し返せない!」
拳は宮村を天井まで打ち上げ、床に叩きつけた
宮村もギャラリーも動かない。動けなかった
静寂がその場を支配する
「あー、疲れた。俺も限界」
そう言ってマリは床に崩れ落ち、そのまま眠ってしまった
まるで遊びつかれた子供のように穏やかに




