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【第二十七話】不殺のドニー・リー

「ごっごっごっ!ご主人様〜!!!………うっううわ〜ん!」

「「「「「ご主人様〜ぁ!!??」」」」」

「ピロちゃん!もしかして空にいるあのウズラさんがドニー・リーさんなの?」

「ううっヒックッ…うっウズラじゃないっす!誇り高きグリフォンっすよ!」

「グリフォン?まあいい…。それじゃあの空にいるグリフォンがお前のご主人ドニー・リーさんなんだな?」

「ズッズズ〜…そうっす!あの雄々しいお姿、それに何よりそこの地面に刺さっている『不殺の槍』は間違いなくご主人様の槍っす!おいらが見間違えるはずないっすよ!うっうううう…」

「グリフォンといえば、獅子の体に鷲の頭部と翼があるのよね?…でもドニー・リーさんは……どう見ても子グマの体にウズラの頭部と翼があるようにしか見えないのだけど……。で、でもいい!凄くいいわ!想像してたのと全く違うけど、あの愛くるしい姿!思ってたのより100倍いいわ!」

「ヒックッそっそうすか……でも美羽ちゃんがいいって言うなら、おいらも嬉しいっす!」

美羽ちゃんたちの問いに答えているうちに、ご主人様は不殺の槍のもとへ降り立ってくるっす。おいらは慌ててご主人様に駆け寄ったっす!。

『ご主人様!よくぞご無事で!』

『おおっ!ピロッシ!無事で何よりだ!怪我なぞしておらぬな?』

『はいっ!おいらは元気っす!そこにいる兄妹たちに助けられたっすから』

おいらとご主人様が再会を喜び合っていると、ヒロちゃんや雄ちゃんもこちらに駆け寄ってきて、異世界語で会話をするおいらたちの様子を伺っているっす。だけど言葉がわからないからか、怪訝な顔をしているっす。そんなみんなのために、おいらはご主人様にお願いごとをしてみたっす。

『ご主人様、そこにいる日本の若者たちに、おいらは匿われてて、ずっとよくしてもらってたっすよ。よかったら念話で話しかけてみてくれませんか?』

『念話?…それは構わんが、通じるのか?』

『はい、多分大丈夫っす!青鬼神様とも念話で会話してたっすから上手くいくと思うっす』

『なんとっ!あの若者たちは青鬼神様とも親交があるか。わかった試してみよう』

《《そこな若者たちよ、ピロッシが随分と世話になったようで深く感謝する!》》

大ちゃんたちは突然話しかけられてちょっとビックリしたっすけど、青鬼神様の念話で慣れていたのか、いつの間にか覚えていた念話ですぐにご主人様に返事を返したっす。

《《わっ!あっ初めまして!立花美羽と申します。こちらこそピロちゃん…いやっピロッシさんには大変お世話になっておりますです!》》

《《あははは…美羽なにしゃっちょこばってんだよ…初めましてドニー・リーさん俺はこいつの兄で立花大吾です。どうぞよろしく!》》

《《ああ、あんたが異世界の英雄『不殺のドニー・リー』か。俺は三島博っつうもんだ。ピロッシにはいつも助けられているよ。こちらこそありがとう!》》

《《どっどもっ…はっ初めまして…美波雄二と申します。どうぞよろしくお願いしますっ!…》》

《《わっはっはは…うむ!こちらこそよろしく頼む!…ピロッシよ、確かに通じているようだ。これは愉快だ!わっははは…しかしなんでこの者たちは魔術が使えぬのに念話ができるのだろうな?》》

《《さあ、それはわからないっすけど、ほとんど魔術が使えないおいらでも念話ぐらいは出来るからじゃないっすかね…。あっそうだ!ご主人様にお聞きしたいっす!あの時小屋で起きた爆発の時なにがあったんすか?…おいらご主人様が死んじゃったって思ってたんすよ…》》

《《ああっそれはすまないことをしたな。あの時はワシも大怪我を負ってしまって、すぐにお前を迎えに行けなかったのでなぁ……》》

そうしてご主人様はあの時の小屋で起きた爆発でなにがあったのかを話してくれたっす。

《《あの時、使者の忘れ物を取りに戻ったワシは、小屋に入ってすぐに足元に落ちている小袋に気がつき拾い上げたんじゃ。その小袋は兵士たちが常備している「戦いの丸薬」が入っている袋だとすぐに気がついた。ワシもピロッシもこんなもの所持していなかったのでな、使者のうちの誰かの落とし物だと思ったが、ただの話し合いに「戦いの丸薬」を所持してくるとは、いささか尋常ではないと嫌な予感が走ってな、ワシは警戒を強めた。すると使者が忘れた荷物の中からピッピッピッと音が出始め、なにやらピカピカ光り出したんじゃ。ワシは咄嗟に小袋の中の「戦いの丸薬」を口にして、すぐさま屋根に向かって飛翔した。そのすぐ後じゃ、ものすごい爆音と共に使者の荷物が爆発したのは。ワシはその爆発に巻き込まれてしまったが、すんでのところで飛翔したのがよかったのか、命までは落とすことはなかった。それに「戦いの丸薬」の効果もあったのであろう。爆発に巻き込まれたワシは飛翔と爆風との勢いのまま屋根を突き破り、そのままかなり遠くまで飛ばされたようでな、その衝撃で意識を失ってしまった。意識を取り戻したのはおそらくその翌日か翌々日。そしてかなりの大怪我を負うことになったワシはすぐに行動に移せず、今に至ると言うわけじゃ》》

《《そんなことが…でも、ご主人様が生きててよかったす!本当よかったっす!》》

《《ありがとう、ピロッシよ。これも青鬼神様のお導きじゃな!》》

《《はぁ…ドニーのおっちゃんも大変な目に遭ってたんだな…。あっ、そういえば青鬼神のおっちゃん、大吾たちが大ピンチだったてえのに、一度も声を聞いていないなぁ…》》

《《ああ、青鬼神様なら今異世界に戻っておられるよ》》

《《えっ、そうなの?なんでまた?》》

《《青鬼神様は自衛隊と魔物軍との決戦が近いと仰られていてな、日本に侵攻するために集結した異世界の魔物軍たちの足止めをしておいでなのだよ。ワシもその足止めに参加しておったのだが、突然目の前に巨大なゲートが出現したので、青鬼神様から命じられて急遽、先陣を切ってこちらに援軍に来たというわけだ。青鬼神様からの命がなかったら、今頃ピロッシと美羽殿の命はなかったかも知れぬ…これも青鬼神様のお導きじゃな!》》

《《そうだったんですか!?ありがとうドニー・リーさん!それと青鬼のおじちゃんにも感謝しなくちゃね!それじゃおじちゃんが頑張ってくれてるから、日本に来ているの魔物軍を全て制圧すれば、異世界からの魔物軍の侵攻はもう終わるかもしれないのね?》》

《《いや、それはそうも上手くはいかないかも知れぬな。青鬼神様のお力は全盛期の頃から随分落ちている。時間稼ぎが精一杯だと青鬼神様も仰っておったからの…》》

「「「「「敵襲!敵襲!ゲート前におよそ一万集結!!」」」」」

突然ゲート前を半円を描くように陣取っていた自衛隊員から声が上がったっす!

《《やはり、もう来たか…日本全国いる他の自衛隊員がここに集結する前に打って出てくるだろうと思っていたが、こんなにも早く………》》

ゴーーーッゴーーーッゴーーーッゴーーーッ

ドーーーンッ!ドーーーンッ!ドーーーンッ!ドーーーンッ!

《《どうやら戦闘機の爆撃が始まったすね!》》

《《ああ、だが油断してはならぬ……っ来るぞ!》》

ご主人様の声と同時に、爆撃で起こった噴煙の中から何者かが飛び出し、こちらに向かって一直線に飛んできたっす!

バチッンンンッ!

「「「「東郷!?」」」」

またもや勇者様…いやっ東郷夏彦が襲ってきたっす!

ご主人様が東郷の攻撃を間一髪で弾く。どうやら美羽ちゃんを執拗に狙っているみたいで、右目に開いた大きな穴も無くなって元に戻ってるっす!完全な不意打ちでご主人様がいなければ間違いなくおいらたちは全滅だったっす!

《《おおぉ、これはこれは、ヒヨッコの似非勇者殿。初めましてかな?》》

《《誰だい君は?鳥の雛からヒヨッコ呼ばわりされる覚えはないんだけどね…》》

《《これは失礼…其れがしは名をドニー・リーと申す。別に覚えてもらわなくとも良いぞ》》

《《っ!ドニー・リー……。生きていたんだね、なるほどそれでピロッシが僕を裏切ったんだ……。全てに絶望していた君とは分かり合えると思っていたのに……》》

《《おいらはアンタなんかと分かり合いたくないっす!》》

《《ふふふっ、まあいいよ。どうせ君たちは全員死ぬんだからねっ!》》

バチッンンンッ!!

またしても美羽ちゃんへの攻撃!しつこいっす!ご主人様がまたもや東郷の攻撃を防いだっす!

《《甘い甘い!似非勇者殿。其方の相手は私が勤めよう…》》

《《そうだね…。君から死んでもらわないとやり難いから…不本意だけど相手をしてあげるよ》》

そう言った東郷の禍々しい殺気が増していき、目にも止まらない剣戟でご主人様に襲いかかっていく!

バチッ!バチッバチッバチッバチッバチッバチッ!バチッン!

ふたりの動きに全く目が追いつかず、剣と槍がぶつかり合う音だけがおいらの耳に届いてくるっす…。

「「すっ!凄い……」」

「あの東郷がまるで赤子扱いだ……」

「そうね…でもドニー・リーさんあれでもまだまだ本気を出していないみたい…」

「そうなのか?」

「私だって武術家の端くれよ、足捌きを見ればわかるわ。ドニー・リーさんまだまだ腰に力が入ってないんだもの…あれじゃまるで手踊りだわ…わたし本気になったドニー・リーさんが見たいな…」

どうやら大ちゃんと美羽ちゃんだけにはふたりの戦いが見えているようで、ご主人様の戦いぶりに見惚れているっす…。いいな!おいらも見たい!

「見えたっ!」

バッチィィィン!ドォォォン!!

美羽ちゃんの叫び声と同時にものすごい音がその場に轟いたかと思うと、遠くの崖の側面に深くめり込んだ状態で東郷夏彦の姿が現れた!

「なんだ!?いきなり東郷のヤツ壁にめり込んでんだが!」

「……しっ痺れた……。俺にも見えた。ドニー・リーさんが一瞬、少しだけ腰を落とした瞬間に放った突き技。その瞬間周りの空気が歪んで見えたよ…。でもあの技でもまだまだ本気じゃない気がするな…」

「そっそうね……」

崖の側面にめり込んだ東郷夏彦はピクリとも動かない。死んじゃったんだろうか?まあ別においらとしてはどちらでもいいんだけど…。

《《いやぁ全くもって見事の一言に尽きる!我も久々にヤツの戦いを見せてもらったが、まだまだ微塵の衰えも見えんようだな》》

《《青鬼のおじちゃん!?》》

《《おおっ大吾、美羽。ん?初めて会うが、そちらの生意気そうな小僧が三島ヒロシじゃな?それで白い小僧が美波雄二。そっちのゴブリンがピロッシか…皆無事で何よりだ》》

びっびっびっくりしたっす!!!

ふたりの戦いに夢中で青鬼神様がおそばに降臨されていたことに全く気づかなかったっす!それにおいらの名前も呼んでもらえたっす!カッ感激っす!

《《うぉ!でっけ〜なー。想像してた以上だ!アンタが青鬼のおっちゃんかい?そうだ俺が三島ヒロシだよ。よろしくな!》》

《《ひッ!美波雄二です……すみません……》》

《《はっははは、雄二よ何を謝っておる》》

《《あっ……あの〜おいらがピロッシです。この度はご主人様がお世話になっているです…はい…》》

《《まぁ、雄二とピロッシよ、そう緊張するでない。できれば大吾や美羽、ヒロシのように気軽に接してくれた方が、我としても嬉しいぞ》》

《《《《はっはい!》》》》

《《こっこれは青鬼神様、ご無事で。して異世界の方は如何に?》》

そこに戦いから戻ってきたご主人様が合流して、異世界の様子を聞いているっす。

《《すまぬ…我の力不足で軍を止めきれなんだ…なのでこちらで少しでも助力ができればと、ヤツらの隙を見てゲートを越えてきたのだ…》》

《《そうですか…ならばワシも青鬼神様と共に戦いますぞ!》》

《《ああ、よろしく頼む!》》

《《ふたりともありがとう!なんだか日本も大丈夫な気がしてきたよ!》》

《《ところで、ドニーさんの戦いに夢中で気づかなかったけど、ゲートの方も静かになったようね…》》

《《どうやら自衛隊も魔物軍の一陣目を凌いだようだな…。今回は自衛隊の一方的な展開になったが、なんせ異世界に存在するほぼ全ての軍が攻めてくる。その全てを殲滅する弾薬がもつかどうかが勝負の分かれ目だな…》》

「「「「「「……………………」」」」」」

青鬼神様のそのお言葉に、誰もが難しい顔をして口をつぐむ。そしてその時ゲートの方からまたもや自衛隊員たちの大声が聞こえてきた。

「「「「「敵襲!敵襲!」」」」」

また来たっす!おいらたちの目はその声に導かれるようにゲートに一斉に向けられる!

《《んっ?なんだあれは…人?女の人?》》

何やらひろちゃんが、自衛隊隊員たちがいる場所の遥か上空を見つめながら疑問の声を上げているっす。

《《《《んっ…?んんんっ?かっ母さん!?》》》》

《《んっ…?んんんっ?あっ姉上!?》》

「「「「はあああぁ〜?」」」」

はあぁ!?母さん?ええぇ!?姉上?ってどういうこと?今、大ちゃんたち兄妹と青鬼神様が同時にそう声をあげたっすよね?どういうこと???

おいらたちの目はゲートの向こうから大群で押し寄せてきた魔物軍たちよりも、上空にいるひとりの女の人に釘付けになったっす!!!

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