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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

逆行転生したら性別も逆転して、嫌われ者の冷遇悪役令嬢から一転みんなに望まれるヒーロー役になったんだけど…なにこの、なに?

作者: 下菊みこと

私は所謂、悪役令嬢という存在だった。


乙女ゲームの世界の悪役令嬢。


前世で親の虐待で死んだ私は、異世界転生したのだ。


まさか自分がそんな経験をするとは思わなかった。


だが転生後も境遇は変わらなかった。


家では父と継母に冷遇され、暴力を振るわれ、そのストレスを貴族学院に特待生として入ってきた平民のヒロインを虐めることで解消していた。


しかしそのせいで、婚約者の王太子殿下に婚約破棄され、虐めていた平民が王太子殿下の新たな婚約者になった。


そして私は王太子の婚約者を虐めた罪で投獄、処刑。


世界はなんて理不尽なのかと思った。


でも、まあ。


悪役令嬢としての役目は真っ当にこなせたから良かった。


ヒロインもこれでハッピーエンドだ。


まあそのヒロインには、悪いことをしてしまったけれど。


出来ればもう一度、今度こそ違う自分になってやり直したいと思った。


火炙りの刑に処され、最後に望んだのはただそれだけ。


















「うぁー…」


だからってなんでこうなるの…。


私は乙女ゲームの世界にて、逆行転生というものを経験した。


物語の中で見たことがあるが、まさか自分が体験するとは思わなかった。


しかも、絶対過去の私なのに…両親は変わっていないから、私自身のはずなのに…男の子になってしまっている。


それはもう一度、違う自分になってやり直したいとは思った。


だからといってこれはないだろう。


しかも赤ちゃんの頃からのスタートだし。


まあいいや、やれることをやるだけだ。














私は逆行転生のおかげで転生チート…所謂知識チートを持っている。


これを駆使して五歳の時に教養は十分身についてますよと学力テストをしてもらって証明した。


「これは…この子は天才か!?」


「あなた、わたくしたちの息子はもしや英雄レベルに育つかも知れません」


「ああ…期待しているぞ、シエル」


「はい、父上、母上」


五歳までが長かったが、五歳になると順調になった。


学力テストで教養は身についていると証明できたので、家を継ぐための教育を受けるだけで済み大抵は自由時間になった。


「母上、今からは自由時間ですので、一緒にお散歩致しましょう」


「ふふ、わんぱくさんで仕方のない子」


「母上と楽しい時間を分かち合いたいのです」


「あらあら」


その自由時間で病弱な実の母を看病して、散歩に連れ出し陽の光を浴びせたり身体を動かせたりして、母の食べ物にも気を遣うようにした結果。


母は身体が丈夫になり、あの意地悪な継母は登場しなくなった。


父があの継母に溺れたのは、愛する妻を失った悲しみを埋めるためだったから…こうなると、継母の付け入る隙はない。


「あなた、本当にわたくしはあなたに嫁いで幸せですわ」


「私もだ。君と結婚して、良い後継にも恵まれて…過分すぎる幸せだ」


「父上と母上は仲良しさんですねぇ」


「もちろんだとも」


「ええ、そうよ。仲良しさんなの。シエルも、婚約者が出来たら仲良しさんになるのよ」


父と母はラブラブ夫婦だ。


そして時が経つと私はいつしか、厳しい父に家を継ぐのに申し分ないと太鼓判を押されるほど有能になった。


何故か婚約者を親に勝手に決められることもなく、好きな人と結ばれなさいと応援される。


「シエルがどんなお嬢さんを選ぶか、楽しみだな」


「ええ、可愛い義娘が今から楽しみだわ」


「あんまりプレッシャーをかけないでくださいませ、父上、母上」


「うふふ、ごめんなさい。でも本当に楽しみで」


「きっと幸せになるんだぞ」


逆行転生なのに、性別が違って知識チートがあるだけでこんなに変わるのか。


そしてさらに時が経つと、私は貴族学院に行く年齢になった。


この頃には私の有能振りはみんなに知れ渡っていて、箔をつけるためだけの入学であった。


そこで私は、王太子殿下と友達になった。


初めて知った。


王太子殿下は、心を許した人にはこんなふうに笑うんだ。


「シエル、お前は本当に頼りになるな!生徒会もお前がいれば安泰だ」


「いや、王太子殿下こそ生徒会の要なんですから頑張ってくださいよ」


「まあそう固いことを言うな、お前を本気で信頼してるんだ」


「それは光栄ですけどねぇ」


「それよりこの間な、リリーが俺にプレゼントをくれたんだ!見てくれこのピアス!」


王太子殿下は今の婚約者とは上手くいっているようで、毎日惚気ている。


相手は有能な令嬢なので、妃としても相応しいだろう。


…過去の、わたしより、ずっと。


「シエルー、この資料のここわかんなーい」


「ここはここと照らし合わせてください」


「シエル様、この資料の確認をお願いします」


「はいはい、ちゃちゃっと終わらせよう」


「シエル、もうお前一人でいいんじゃね?」


他の攻略対象とも仲良くなった。


ちなみにこの頃王太子殿下以外の攻略対象たちは婚約者との仲に悩んでいたため、アドバイスをした。


「レオン、貴方はもうちょっと男らしくご令嬢をリードして差し上げた方がよろしいですよ。マリア嬢は控えめな方です故」


「ランス、貴方はもっとご令嬢と接する時肩の力を抜きなさい。レティシア嬢は堅苦しいのが苦手だそうですよ」


「リチャード、貴方はもっとご令嬢に対して責任感を持ちなさい。なんとかなるだろ、ではご令嬢の心は冷める一方です」


このアドバイスを彼らなりに実行したところ、みんな婚約者とラブラブになった。


アドバイスが的確だったと言うより、仲良くしたいと努力してくれたのが嬉しかったそうだ。


今更あのヒロインを邪魔したいとか言う気はないが、友達の悩みは放っておけない。


他にも両親に親孝行したり、挫折を経験した攻略対象たちを元気付けたり、攻略対象者の婚約者たちに攻略対象たちとの付き合い方をアドバイスしたりして、前回の人生で困らせてばかりいたみんなに罪滅ぼしをした。


でも、それではヒロインが困るのも知っていた。


だって、攻略対象たちが軒並み婚約者とラブラブなんだもの。


だから。


『私』が、攻略対象になってあげよう。
















私が三年生になった時、ヒロインが入学してきた。


ヒロインは入学式の日に、私に虐められて泣いていたものだが…今回はそれは必要ない。


優しく声をかける。


「やあ、特待生さん」


「え、あ、えっと!は、初めまして!ミシェルです!」


「知っているよ。僕はシエル。シエル・アレキサンドライトだ」


「え、もしかしてアレキサンドライト公爵家の!?」


「うん、跡継ぎさんだね」


ギョッとするヒロイン、ミシェル。


ミシェルは平民なので、苗字はない。


「そ、そそ、そんな偉い方が私になんのご用事で…」


「君、学業成績トップで入学してきたんだろう?相当優秀だよね」


「え、い、いえそんな!」


「だからさ。スカウトしようと思って」


「え?」


スカウトってなにに?と首を傾げるミシェルに告げた。


「僕の婚約者にだよ。僕と婚約して、いずれは結婚して一緒に公爵家を盛り立てて欲しいんだ」


「はぇ!?」


「僕と婚約していただけませんか?」


「い、いきなりそんなこと言われても無理ですー!」


「あ、逃げられちゃった」


まあいいや。


いずれ捕まえて見せる。


そして誰よりも幸せにしてあげよう。


前世で虐めた罪滅ぼしだ。














「ミシェル、勉強頑張ってるね」


「あ、し、シエル様っ」


「でもちょっと惜しいかな。ここ、ケアレスミスしてるよ」


「え…あ、本当だ!ありがとうございます」


「いやいや、ところで婚約の件は考えてくれた?」


顔を真っ赤にするミシェル。


「む、無理ですー!」


また逃げられちゃったな。














「やあミシェル、そんなに荷物を持ってどうしたの?」


「先生に、運ぶのを手伝って欲しいと言われて」


「じゃあ僕も手伝っちゃおうかな」


「は、はぇ!?」


「貸してごらん」


ミシェルが荷物を運ぶのを手伝う。


「ミシェル、なにか困ったことがあったらいつでも頼って良いんだからね」


「シエル様…」


だって私は、貴女をあんなにも痛めつけたんだから。














「あ、シエル様」


「やあ、ミシェル。君から話しかけてくれるなんて珍しいね、どうしたの?」


「あ、えっと、あの、見かけたのでつい…」


「そんなに僕を意識してくれてるの?嬉しいね」


「そ、そんなんじゃありませーん!!!」


また逃げられた。


…なんか、可愛いな。


いいな、と思ってしまった。


罪滅ぼしとかじゃなくて、純粋に彼女を知ってみたい。












ある日、虐めの現場を見てしまった。


「貴女生意気なのよ!」


「この学院から消えなさいよ!」


「ひ、ひどい…!」


「はい、そこまで」


「「「シエル様!?」」」


まあ、ヒロインは悪役令嬢にいじめられるものだ。


悪役令嬢が彼女たちに置き換わっただけのこと。


とはいえ放置はできない。


「これ以上彼女をいびるなら、僕が相手になろう」


「そ、そんな、シエル様、どうしてそこまで平民女に…」


「…あんまりそう言うこと言わない方がいいよ、可愛くないから」


「なっ…」


私もそうだったからね。


「せっかく顔は可愛いんだから、虐めなんてしないで女磨きしてごらん?絶対モテるよ」


「え?え?シエル様?」


「君の可愛い顔、僕も結構嫌いじゃないしね」


「な、な」


「隣の君も、せっかく美人なんだから怖い顔しないで笑っていてごらん。二人とももういじめなんてして、自らの魅力を落としちゃダメだよ」


二人は顔を真っ赤にして逃げ去った。


これで虐めをやめてくれたらいいけど。


「あの、シエル様」


「うん?」


「なんで、助けてくれたんですか?」


「君が可愛いからだよ。あと、僕が家を継いだら嫁に欲しい。有能な子は好きなんだ」


「それだけですか?」


…さすがヒロイン、鋭い。


「…じゃあ、僕の話に少し付き合ってよ」


「は、はい?」


「長くなるから覚悟して」














「…というわけで、罪滅ぼしのために君に近づいたのさ」


「………」


「だけど今は違う」


「え?」


「君が心底可愛いよ、頑張り屋さんで、一途で、愛らしい君がとても可愛い」


真っ赤な顔でこちらを見つめるミシェル。


「元女だからさ、女の子を好きになるってことなかったんだけど…今更男にもときめかないし。君のことは本当に、今では結構好きなんだよね。前回の人生でしたことを後悔するくらいには」


「シエル様…」


「冗談とか、からかいとか、打算とか、罪滅ぼしじゃなくて。真面目に僕と婚約してみない?」


「………」


ダメか。


振られちゃった。


そう思ったけど。


「いいですよ」


「え」


「こ、婚約、しましょう」


「…おっけー。じゃあ、面倒なあれこれは全部僕に任せて。君は僕に守られていてよ」


「はい!」


ということで、みんなから嫌われ冷遇される悪役令嬢は一転、みんなから愛される上ヒロインを手に入れた最強ヒーローとなったのでした。


…いや、どんなオチだよ。


でもまあ、私もミシェルも幸せだしいいよね!

ということで如何でしたでしょうか。


主人公はやたらと属性モリモリでしたね。


今回の人生では、主人公の父親に取り入ることができなかった継母は勝手に破滅しています。


主に贅沢しすぎの借金問題で。


なので今更主人公の周りをうろつく元気もないのでご安心ください。


主人公の両親は今回の人生で、主人公を溺愛しています。


攻略対象たちも、主人公を友達として大切に思っていますね。


ヒロインは転生者ではありません。


そして二人が婚約するにあたっての様々な障害から自分を守ってくれる主人公に、心底惚れ直すことになります。


少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。


ここからは宣伝になりますが、


『悪役令嬢として捨てられる予定ですが、それまで人生楽しみます!』


というお話が電子書籍として発売されています。


よろしければご覧ください!

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ヒロイン側からだと、「ヒロインになったら悪役令嬢がいなくて、代わりの公爵令息から溺愛されてます」あるいは「貴族の学園に入学したら公爵令息に溺愛されました。なんで?」みたいな話になりそうですね。
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