第76話
「陽菜、ちょっと、当たってるって」
俺は陽菜の柔らかい感触に強く意識を引っ張られながらも、木陰さんの、
「むー!」
という拗ねたような、怒ったような視線に気圧されて、陽菜にそれとなく指摘をした。
しかし、
「当たってる~? ねー、たくみん。なにが当たってるのー?」
陽菜は露骨に知らんぷりを返してくる。
「だ、だからその、陽菜の、む、む……」
「アタシのなに? うりうり、アタシの何が当たってるのかな~?」
「だからそれは――」
くっ!
陽菜の奴、アピールっていうより俺のことをからかって遊んでないか?
ちょっとからかい癖っぽいのがあるもんな、陽菜って。
さっきの俺のアレを「王子様ムーブ」とか言って蒸し返したりさ。
などと、俺が陽菜の積極的すぎるボディコンタクトにあたふたしていると、
「陽菜ちゃん……ズルい! だったら……わ、私だって!」
陽菜とは反対側。
俺の左腕を抱きかかえるようにして、木陰さんが抱き着いてきた。
決して小さくない陽菜のソレを、はるかに凌駕する木陰マウンテンが、むにゅむにゅっと俺の左腕に押し付けられる。
「こ、木陰さんまで――!?」
まさかの木陰さんの参戦で、いつしか俺は両腕をキラキラ美少女マウンテンでサンドイッチされてしまっていた。
「……違うもん」
「え? 違うって、なにが?」
「ミツキだもん」
「え――」
「陽菜ちゃんだけ名前で呼ぶのはズルいもん。だから――美月だもん」
そう言うと木陰さんは、さらにしっかと身を寄せてくる。
むぎゅり、むぎゅり。
むぎゅ、むぎゅり。
壮大な木陰マウンテンが、その存在感を否応なく俺の腕へと伝えてくる。
「え、えっと、木陰さん――」
「美月だもん」
むぎゅり、むぎゅり。
「木陰さ――えっと、美月」
「えへへ、うん♪」
木陰さんの顔が――美月の顔が、秋の夜の満月のように華やいだ。
そんな木陰さんを見て陽菜が感心したように呟いた。
「へぇ。自分から名前で呼んで欲しいだなんて、やるじゃん美月」
「私だって、陽菜ちゃんに負けるつもりはないんだからねっ」
「じゃあたくみんに知ってもらうためにも、どっちがいいか選んでもらうためにも、しばらくは2人でたくみんにアピール合戦だね。さっきも言ったけど手加減はしないから。アタシ、本気だから」
「うん、知ってるよ。でも私だって本気だから」
「アタシも知ってる」
小学校からの親友であるキラキラ女子2人が、俺を挟んで宣戦布告をぶつけ合った。
「えーと、俺は少し手加減して欲しいかなって……」
でないと俺のアオハルが大変なことになってしまうんです。
「そんなの無理に決まってるじゃん」
「ごめんね拓海くん、それは無理かも」
「だよねー♪」
「うん♪」
2人は今度はにっこりと頷き合う。
「ってわけだから、またしばらくは放課後はたくみんの家ってことで」
「クロトのお世話もしないといけないもんね」
その言葉に釣られるように俺が足下へと視線を向けると、クロトのエメラルドグリーンの瞳が無言で俺を見上げていた。
どうやら助けてはくれないらしい。
こうして、子猫を助けたら俺んちが1年生キラキラ美少女ツートップの溜まり場になってしまったのだった。
「ねこたま」をお読みいただきありがとうございます!
この物語は一旦ここで一区切りとなります。
というのも!
書籍化にあたって担当編集様と打ち合わせをした際に、書籍1巻の売り上げが良ければ2巻が出せるというお話をいただいたからです(*'▽')!
そしてそのために、この先のプロット(物語展開を簡潔に記した物語の行程表)を作って、担当編集様に提出する必要があるからです。
もちろん1巻が売れることが大前提なのですが、チャンスがあるなら続きの準備もしておきたいんです!
というわけでまずは1巻の書籍化作業に取り掛かりつつ、2巻のプロットを作ります。
続きは必ず書きますので、再開する日をお待ちいただけると嬉しいです!
また新作ラブコメがスタートしました(*'ω'*)
僕の大切な義妹ちゃん。~貧乏神と呼ばれた女の子を助けたら、女神な義妹にクラスチェンジした~
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アオハル高校生活と、可愛い義妹との甘々ラブコメを両立させた野心作です!
こちらもお読みいただけると嬉しいです(*'▽')パアッ




