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【書籍化】黒猫を拾ったら俺んちが二大美少女の溜まり場になった。【Web版】~2人の少女が恋したのは、昔の俺と今の俺――。  作者: マナシロカナタ(かなたん)★ネコタマ★3巻発売決定!☆GCN文庫
第4章 2人の少女が恋したのは、昔の俺と今の俺だった件。

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第73話 拓海の想い

「むぅ! なんだなんだー? たくみんはアタシらじゃ不満かー?」

「だ、だよね……。私なんかじゃ不満だよね、はぅぅ……」


「あー、美月が目に見えてションボリしたしー。たくみんのせいだぞー?」


「えええぇぇ……」


 え、俺が悪いの?

 いや、俺が悪いな。


「よしよし、大丈夫だよー。美月には、アタシが付いてるからねー」

「だから今は陽菜ちゃんはライバルなんだってばぁ」


「親友と書いてライバルと読む、的な?」


「読まないかなぁ」

「読まないからな」


 木陰さんと俺のツッコミが綺麗にハモった。


「あはは、読まないよね♪ 知ってた♪」

「もぅ、陽菜ちゃんってば」


「ま、それはそれとして? 結局どっちなの、たくみん? いい加減、男らしくハッキリさせて欲しいなー?」


 木陰さんをなでなでしながら、しかし陽菜は横目で俺に視線を向けると、決断を迫ってくる。


 さっきからずっとおちゃらけた口調の陽菜だが、頬は赤くなっているし、目は真剣だし、ちょっと早口だしで、緊張しているのがもろわかりだ。


 ふぅ。

 これは俺もいつまでもグダグダ言ってないで、男らしく覚悟を決めて、今の自分の気持ちを正直に伝えないとだよな。


 俺は一度、頭の中で考えをまとめてから、それを言葉にしていった。


「2人に不満なんてないよ。そんなものあるはずないから」

「じゃあ選べるよね? 聞かせてよ、答え」


「不満はないんだ。2人とも不満なんて感じようのないくらいにキラキラしてて、眩しくて、本当に素敵な女の子だから。だけど――」


「じゃあ何が問題なの?」


 問いかけてくるのは陽菜だが、木陰さんも真剣な瞳で俺を見つめて答えを待っている。


「2人に問題はないんだ。だからあるのは俺の方なんだ。そもそも俺はそんなことを考えたこともなかったから」


「ふーん?」


「だってそうだろ? 俺みたいな何の取り柄もない平凡な男子が、陽菜や木陰さんみたいなキラキラ女子から告白されるなんて、そんなこと思うはずがないんだ。俺とは住んでる世界が違うって、ずっと思っていたから」


 とても情けない告白だった。

 さっき俺に男らしさを求めた陽菜は、この答えを聞いて一気に幻滅したかもしれない。

 100年の恋ならぬ、6年の恋も一時に冷めるかも。


 だけどこれが今の俺の素直な気持ちだった。

 どちらを選ぶ、選ばない以前に、俺は今の状況に大いに困惑していたから。


 さっき木陰さんが、心の準備ができていないと言ったが、俺だってそうだ。


「まぁ、たしかに? 同じクラスだけど、たくみんとはあの日まで一度も話したことはなかったっけ」

「言われてみれば、私も」


 木陰さんに関してはそもそも男子とほとんど話さないから、必ずしも俺だけがどうのこうのって話ではないんだけれども。

 なんにせよクロトを拾うまで、俺と2人の距離が極めて遠かったことには変わりはない。


「2人がお互いに憧れていたようにさ。俺も2人に憧れていたんだ。こんなキラキラした素敵な女の子がいるんだって。すごいなって。恋愛感情の前に、俺は一歩どころか二歩も三歩も引いて2人を見ていたと思う」


 そしてそれはきっと今でも変わらない。

 クロトを拾ってからこっち、仲良くなってもなお、俺は2人に気後れのようなものを感じていた。


 つまりそれは心の距離があるということだ。


「なるほどねー。つまりたくみんは自分の魅力がわかってないんだね。こんなにもアタシたちを好きにさせておいてさー。ね、美月」


「そうだよ。拓海くんは普段は物静かで優しいけど、やる時はすごくやる男の子だと思うな」


「いや、褒められれば褒められるほどに、ますます自己認識とのギャップが広がっていくんだが……」


「さっきだって隠れてやり過ごせばバレなかったかもしれないのに、美月を止めようとして後先考えずに出てきちゃったしね。ま、肝心の美月はぜんぜん見てなかったみたいだけど」


「だって、あの時は陽菜ちゃんのことばっかり考えてたんだもん」


「もうね、すっごくカッコよかったんだよ? 『それはダメだよ木陰さん!』って必死な顔して飛び出してきてさー」


「ふわぁ……!」

 頬を紅潮させながら、憧憬のこもった視線を俺へと向けてくる木陰さん。


「ちょ!? 蒸し返すのはやめて差し上げて!? 恥ずかしいだろ!?」

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