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第4章 2人の少女が恋したのは、昔の俺と今の俺だった件。

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第69話 陽菜 vs 木陰さん

「なに陽菜ちゃん? 言いたいことがあるなら言ってよ? 聞いてあげるよ?」


「――っ! 黙っていれば、言いたい放題言ってくれちゃって! じゃあなに? アタシがたくみんにアタックしていいって言うの? 奥手な美月が相手じゃ、アタシ100パー勝っちゃうよ? 相手になんかならないから」


「なっ──」


「だってそうじゃん! 黙ったままでずっと待ってるだけの美月の気持ちなんて、絶対にたくみんに伝わんないじゃん! 実質不戦敗じゃん! 戦いにすらならないじゃん! そしたら我慢するのは美月じゃん! アタシが我慢するのはダメで、美月が我慢するのはいいわけ? それこそアタシのこと馬鹿にしてるじゃんか! 美月の好きな人を奪って、平然と親友を続けられると思ってるの? アタシはそんなの絶対に耐えられない!」


 陽菜が心の中に渦巻くモヤモヤをそのままぶつけるかのように、怒涛の早口でまくし立てた。

 ものすごい剣幕で、ツツジの陰で覗き見している俺もビビるほどだ。


 しかし普段なら言い返すことはないであろう木陰さんが、今に限っては負けじと言葉で応戦する。


「馬鹿になんてしてないもん! 積極的な陽菜ちゃんはずっと私の憧れだったから! 私のどんくさいやり方で陽菜ちゃんに負けても、それなら仕方ないって思えるから! 拓海くんともお似合いだって納得できるから! だから!」


「なにが納得できるのよ! 美月に、大切な親友に我慢させるのがどれだけ辛いか、美月わかってないでしょ! だからこうするしかなかったんじゃんか! アタシが我慢するしかなかったじゃん! いい加減わかりなさいよ!」


「だから私はそんなこと頼んでないもん!」


「頼まれなくても、奥手な美月じゃ勝負にならないって言ってんの! ぬるま湯に浸って、どれだけお膳立てしてあげても、たくみんから告白してくれるの待ってるだけの美月じゃ!」


「――っ!」


「くっつくなら、さっさとくっついてよね! アタシに変な期待させ続けないでよね! 目の前に運命の王子さまがいるのに手が出せなくて、なのに美月がいつまでたってもアタックしないのが、どれだけ辛いかわかる!? 諦めさせてよ! ちゃんと告白してアタシに諦めさせてよ! でも美月はそうしてくれないじゃない! 諦めさせてくれないじゃない――!」


「陽菜ちゃんのバカぁ!」


 木陰さんが右手を勢いよく振り上げた。

 そして陽菜の顔に振り下ろす!


 親友が親友を()とうとしていた。


「それはダメだよ木陰さん!」


 それだけは絶対にダメだ!

 暴力はよくないとかそんなの抜きに、2人の仲が完全に修復不可能になってしまう。


 それだけは絶対にさせない――!

 うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――っっっっっ!!!!


 俺はクロトを抱きかかえながら、隠れていたツツジの裏から飛び出した!


 ガサガサガサガサッ!


 枝にあちこち盛大に引っかかってしまい、剥き出しの手の甲にひっかいたような痛みが走るが気にしない!


 俺は木陰さんを止めることに必死だった。


 けれど飛び出たはいいものの、手を振り下ろす前に割って入るなんて、どうやったって不可能だ。

 物理的に間に合うわけがない。

 100メートル世界記録保持者のウサイン・ボルトだって無理だ。


 飛び出た俺の目の前で、木陰さんの右手が振り下ろされて――振り下ろそうとした木陰さんの右手が、陽菜に触れるはるか手前で止まった。


 …………あれ?


 木陰さんの手は陽菜を打つことはなく、そのままゆっくりと陽菜の頬に優しく添えられていた。

 木陰さんの目には、うっすらと涙のようなものが浮かんでいる。


 その光景を見て、俺は呆気にとられてしまっていた。

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